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2019年に聴く「1999」 #Prince #1999

僕が敬愛してやまないアーティスト、Princeが旅立ってから来年4月で4年が経つ。
この間、恐らく本人が存命であれば、絶対に日の目を見ることはなかったであろう作品や過去に廃盤となった作品等が続々と世に輩出されることとなり、ファンを狂喜乱舞…というよりもどちらかといえば困惑に陥れている、という表現の方が適切なのだろうか。

もっとも彼の場合、発売予定の作品がアナウンスされてからお蔵入りになることはしょっちゅうだったし、むしろそういった作品群に改めて日の目が当てられた、というのであれば、素直に喜ぶべきことなのだろう。(この勢いで6枚組のサンプラーシリーズは…発売されるワケないか。)

同じようなことは過去から繰り返されていて、例えばブートレグ盤(正規のルートではなく、法律上の権利を無視して世に出回る、いわゆる海賊盤、ブート盤というヤツ)の中で最大の売上げがあったといわれる「Black Album」然りだし、逆にファンの間では知られていたが公式には未発表だった曲を集めた「Crystal Ball」という作品も、その一つだったと言えるかも知れない。
そして、インターネットを駆使したメンバー限定の音楽有料配信サービスだって、今でこそストリーミングの技術が確立してごく当たり前のことになっているが、当時はとても画期的なことだったし、その最大の恩恵が、彼にとって最後の日本公演となったツアーだった。
いずれにせよ、こういった1歩も2歩も先を行く彼の思考や構想にファンは翻弄され、魅了され、そして感動していた。

…回顧録はちょっと脇に置いて。
彼が旅立ったあと、既に廃盤となった過去の音源がデジタル化されて配信されたり、昨今のアナログ再評価をなぞらえるような再発売などが次から次へと繰り広げられることとなった。
今年だけでも一体どれだけの作品が発売されたのだろうか。
僕自身さすがに全てのアイテムに触手を伸ばすことができず、取捨選択しながら作品を購入するということになってしまったが、時代を彩った「Purple Rain」や今回紹介する「1999」といった、彼の全盛期を代表する作品、それもDeluxe Editionなんぞという触れ込みの豪華盤に対しては、惜しむことなく私財を投入してきたことは言うまでもない。

さて、今回発売されたPrinceの「1999」。発表は1982年なので、今から40年近くも前の作品ということになる。リマスター盤発売の噂は以前から囁かれていたが、世紀を跨いだ作品だと考えた時に、節目となった「1999」年から20年後にこの作品を改めて聴くための仕掛けだった、いわば作品の発表時期とは関係ない、20周年の儀式みたいなものかと思うと、ちょっと楽しくないですか。実際、関係者へのインタビューを含めてこれだけのボリュームそして作品に仕上がっているということは、実は相当綿密に準備されていたものなのだろう。

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Prince / ORIGINALS #prince

門外不出だとばかり思っていた、奇跡の作品集が発売された。Princeの好き嫌いは昔ほどではないにせよ顕著に現れるが、え?これもPrince作った作品なの?という新たな再評価に繋がる可能性も孕んでいるぞ。

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ということで、本日はそんなPrinceの新作に関するレビュー、いや、レビューはその筋の皆さんにお任せして、個人的な所感。

ちなみにこの作品、発売前から試聴会が行われていたし、噂では、リークされた音源が発売前にネット上で出回ったりしたらしい?が、蓋を開けるとMadonnaの新作「MADAME X」よりも売れている、とか。さらに、このタイミングでStingやBruce Springsteenといった、80年代のヒットチャートを賑わせたアーティストが相次いで新作を発表したことも、ちょっと嬉しいのだ。

振り返ってみると、正規のものではない未発表の作品が「海賊盤」として市場に出回っていることを知ったのも、「お蔵入り」という言葉を何となく使うようになったのも、昭和が幕を閉じようとしていた頃で、全てはPrinceがきっかけだった。
実際、ブート盤の聖地と言われた西新宿の小さなレコード店を巡ってみたり、実際に非正規のよろしくない作品を購入してみたり。そういえば、通信販売で購入した初めてかつ唯一の海賊盤は、雑誌「rockin’on」に広告が掲載されていた「Black Album」だった。

5000円前後で購入しただろうか。送られてきた商品を見て、息を呑んだ。

ペイズリーパークのエンボス模様か不規則に打刻された真っ黒なジャケット。
黒く塗られたディスクには、明朝体の文字をワープロで打ち込んだようなオレンジ色の文字が打たれていた。Made in GERMANY、そしてなぜかWarner Recordsの文字。確か、品番も書かれていた記憶がある。そして、For Promotional Use Onlyだったかは忘れたが、わざわざ油性マジックで見え消しされる手の込みようだった。
その後も、レコードでしか世に出ていない12インチの音源をCDにまとめたものや、スタジオで録音されたと思しきデモ音源をメインとした数種類の海賊盤を購入したが、作品によって当たり外れのムラが大きく、ほとんど興味が沸かなくなってしまった。

Prince自らがネット上で未発表曲の配信を開始したり、海賊盤そのものへの批判が高まるようになったのも、その要因だったかも知れない。本人が旅立ってから、数多あると言われる未発表曲の行方に注目が集まった。

考えてみると、その後に未発表曲がベスト盤に収録されたり、廃盤となった作品が再発されたりしてきたが、他者への提供曲がアルバムという形でまとめられて世に出されたのは、本作が初めてということになる。

既に海賊盤で出回っていた曲があったのかも知れないが、少なくとも僕は、ほぼ全ての楽曲を今回初めて耳にした。
多分本人が存命であれば、きっとこういった作品が日の目を見ることはなかっただろう。
THE TIME, SHEILA E., Mazaratiといったペイズリー・パークレーベルのアーティストをはじめ、もっともPrinceらしさが影を潜めていると個人的には思っている、THE BANGLESへの提供曲まで収録されている。
他アーティストへ提供した楽曲のセルフカバー、という位置付けとも取れるが、むしろデモ音源をマスタリングしたもの、と考えた方が良いのだろうか。


(ジャケットと同じデザインのポストカードが同梱されていた)

いずれにせよ、こういう未発表曲に光が当たることはファンとして嬉しいけれど、しつこいようだが本人が存命だったら、こんな作品を発表することはあっただろうか、いや、多分なかっただろうな…と考えると、ちょっと複雑な気持ちになる。

実のところ、他人へ提供した他の楽曲は、既に海賊盤で聴いたことがあるし、今回収録されたものとバージョン違い(ボーカルが違う、など)も聴いている。日本人で唯一プロデュースされた、青森県出身の女性ボーカリストへの提供曲のデモ音源も聴いたことがある。

だから、最初にこの作品を聴いたときに、何だかそんな海賊盤を聴いているような居心地の悪さ、申し訳なさみたいなものを感じてしまった。
もちろん、この作品自体はとても貴重な内容であり、Princeの歴史の一端を探ることのできるものだということは全く否定の余地がない。
しかし、こういう作品を聴いてしまったがために、申し訳なさと同時に次なる疑問と期待が渦巻いてしまったのだ。

つまり、こういうことだ。
彼が(変名で)プロデュースしたTHE TIMEの曲が2曲収録されているが、それって2曲にとどまらないよね。多分、全ての楽曲において、Princeバージョンが存在するのでは、ということだ。そしてそれは、他のアーティスト然り。

更に、前述のとおり他のアーティストへの提供曲が海賊盤で出回っていたということは…ねえ。
そう思ったら、ひょっとしたらこれから更に世に出てくるかも知れないPrinceの楽曲に、どんな期待をしたらいいのだろうか、と考えてしまった。

いっそのこと、「Crystal Ball」のような、コンセプトも何もない、雑多なんだけれど何だか凄い!という作品が出ることを期待すれば良いのだろうか。今回の「ORIGINALS」の続編、更にはデラックス盤なんていうことにはあまり期待しないようにしよう。

事実、廃盤となってしまった作品を再発するだけでも、我々ファンにとっては事件なのだから。

Prince / His Majesty’s Pop Life 入手顛末記 #prince

今年4月18日のレコードストア・デイ(奇しくも亡父の誕生日だった)で発売された作品のひとつが、Princeの幻のカセットテープと言われる「ヴェルサーチ・エクスペリエンス」だった。国内盤が発表されたこともあり、ファンの間ではにわかに話題となった。(その時の記事はこちら

他方、Princeのもう一つの作品が発売されることは知られていたが、あまり話題に上ることがなかったのが、2枚組の12インチレコード「His Majesty’s Pop Life」。

1985年に日本国内のみで発売されたという激レアアイテムで、中古市場では5万円を超える価格で取引されていたらしい。

内容に関しては今更説明するまでもないのかも知れないが、少しだけ。

Princeの名を全世界に知らしめることとなった「Purple Rain」の次作として発表された「Around The World In a Day」から、「Pop Life」や「Paisley Park」「Raspberry Beret」のリミックスバージョンをはじめ、過去の作品からの楽曲も収録されているという変則的な作品となっている。

2枚のレコードが45回転と33・1/3回転という異なる組み合わせになっているのも風変わりではあるが、ライナーノーツを担当した吉岡正晴氏によるプリンス年表が付いているというのも、国内盤っぽいところ。

そもそも1985年の時点ではようやく聞き齧りする程度だったし、そんな作品が発表されていたことも知らなかった。高額で取引されている時点で全く興味はなかったのだが、その貴重な作品が再発売される(全世界で14000セット?)となると、実際どんなものなのか手に取ってみたくなってきた。

僕は決してコレクターではないのだけれど、最近再発売された彼の他の作品よりも、僕が14才の時、つまりPrinceに対して単なる嫌悪感しか抱いていなかった頃、いや、正しくは嫌悪感から好感、もとい興味本位に変わってきた、まさに過渡期の頃の作品がどんなものだったのか、当時の飽くなき興味が呼び覚まされるかのごとく、日に日にそれを手にしたいという思いが強くなっていった。一つの作品、モノとしてのそれを。
しかし、国内盤も発売された幻のカセットテープとは異なり、輸入盤でしか手に入れることのできないそれに対する反応は今一つで、果たして簡単に手に入れることができるのか、正直よくわからなかった。

発売直後にネットの情報を読み漁ってみたが、店舗に置いてある数もそれほど多いものではないらしく、事実、レコードストア・デイが終わった1週間後には、「売り切れ」「取扱不可」が続々現れ、中には高値を付けて販売するような店舗も出始めていたし(それすらも「売り切れ」だった)、数は少ないが、オークションにも出品が見受けられるようになった。
やはり手に取ることは難しいのだろうか…。

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『THE BARN DELUXE EDITION / MOTOHARU SANO and THE HOBO KING BAND』を、レコードプレーヤーで聴いてみる #佐野元春 #ion

明日から新年度がスタートです。花粉症じゃないと言い張って数年経ちますが、今年もまた目がショボショボする季節、疲れもたまりがちですっかり疲弊しまくっています。こんな時は、いい音楽を聴いて心だけでも穏やかにしたいものです。

ところで、以前聴いたときにはあまりピンとこなかったアルバムが、何年も経ってから聴くと物凄く胸に沁みる、ということがありませんか。

今回入手した佐野元春 and THE HOBO KING BANDの「THE BARN DELUXE EDITION」(THE BARN)も、そんな一枚でした。

20年前の発売当時は心身ともにちょっと疲れていた頃で、前年に発表されたアルバム「フルーツ」のような、彼流に言うならば「最高に陽気でポップな」曲を期待していたのかも知れません。しかし、ジャケットからも見て取れるような、どちらかといえばアコースティックで、カントリーっぽい雰囲気が全体に流れており、初めて聴いたときは「ん?」といった感じ。そしてその後も「ん?」の後に続く疑問符がどんどん膨れ上がることとなり、結局最後は「…。」へと変化。数ある彼の作品の中でも、あまり聴くことのない1枚となってしまいました。

そんな中今回、「THE BARN DELUXE EDITION」と銘打った20周年記念盤が発売されました。完全限定生産盤で、15,120円(税込)。

パッケージはBDとDVDとアナログ盤と写真集の組み合わせという、かなり重厚な内容となっており、実際手にしてみると、相当重量があります。…というのも、写真集が150ページ以上に及ぶかなりしっかりした作りで、これ単体でも数千円で販売できるよね、という代物のため。

ちなみにこの写真集には、このアルバムのレコーディング当時のオフショットなどが収蔵されているほか、当時のこぼれ話や秘話がショートコメントのように掲載されており、見応えは相当なもの。

BDとDVDは色んな解説にもあるとおり、「THE BARN TOUR ’98 LIVE IN OSAKA」のデジタル・リマスター版と、ウッドストックでのドキュメント映像が収録されたものです。

さて、肝心のアナログ盤、こちらはもちろんリマスターが施されたものです(2016年)。
→ 特別サイトはこちらから。

さて、このレコード盤の再生に当たり、すっかりレポートを忘れていたレコードプレーヤーを紹介したいと思います。
はい、こちらです。

「ion Max LP」というもので、Amazonではレコードプレーヤーのカテゴリーでベストセラー1位となっている商品です。

昨年の夏に、この商品があるところでセール品として販売されており、何と3,000円で入手しまして、ええ。

とはいえレコードを何枚も持っているわけではないので(貴重盤やお宝盤も含めて以前はたくさん保有していたのを、何と雨ざらしにされた挙句に廃棄されるという悲劇があったのです!)、そんなに使用頻度が高いわけでもなく、再び丁寧に梱包しておいたのですが、今回の再生に伴い再出動。改めてレビューしたいと思います。

まず外観は、木目調。左右にスピーカーがついていますが、音はそれなりです。

ボリュームつまみはここについています。

7インチレコード、いわゆるドーナツ盤用のスリップマット。

切り替えのスイッチ類はこの辺りに。ちなみにオートストップの切り替えがありますが、オンにするとホントにストップするだけで、アームは手動で戻す必要があります。(オフにするとどうなるかは、怖くて試していません。)

イヤホン端子は前面に。

背面。電源やUSB端子のほか、イン/アウト用のケーブル差し込み穴も用意されています。紅白の端子がアナログ感を醸し出しています。専用ソフトのCD-ROMが同梱されていて、アナログ盤をPCに取り込むこと(曲毎に分割もしてくれる)ができるそうですが、まだインストールはしていません。

こちら、おまけでついてきた12インチレコード用のスリップマットは、なぜかLED ZEPPELIN。

ワーナー傘下のレーベルのロゴシールも付いてきました。…おっと、購入先がバレますね。

さて、これから正座して拝聴するデラックス・エディションの裏書。

中にはこれが。右がレコード盤と映像ディスク、左が写真集。

映像集はこんな感じで収まっていました。

さて、それでは実聴。前述のとおり内臓スピーカーの音はそれなりなので、イヤホン端子から異なるスピーカーを接続。これで音はバッチリです。というよりも、思った以上にいい音になりました。(撮影のため上に載せましたが、実際は下に置きました。)

しかし、こうやって改めて20年前に発表された「THE BARN」を聴くと、バンドのメンバーの「個」が際立っている作品なんだなあ、ということを感じさせられます。

楽しいこと、苦しいこと、悲しいこと、嬉しいこと、辛いこと…色々経験をすることで、僕自身の感受性がこの20年で変わったのでしょうね。冒頭でも書いたように、本当に胸に沁みる、いい作品なんだな、と。その伏線にあるのは、この作品がレコーディングされていた時、妹さんを不慮の事故で亡くするという悲劇に見舞われており、その時の心境がこちらに綴られています

血を分けた肉親を失うって、本当に辛いことです…。でも、20年前はまだ僕の父も健在だったし、肉親を失う辛さをほとんど感じていませんでした。そんな事情もよく知らないまま、「なんか影のある作品だな」と勝手に決めつけて、聴くことを避けていたのかも知れません。
決してそういう意図はないんでしょうけれど、この作品には、どこかに「鎮魂の思い」が込められている(現に収録されている2曲は妹さんに捧げる曲となったことを明らかにしている)からこそ、今改めて聴いたときに、心穏やかに、そして深く沁みる作品だという風に捉えられるのかも。

さて、「THE BARN」のレコーディングを行ったTHE HOBO KING BANDのメンバーは、佐橋佳幸(ギター)、小田原豊(ドラムス・元Rebecca)、井上富雄(ベース)、KYON(キーボードなど・元BO GUMBOS)、西本明(キーボード・元THE HEARTLAND)という、前作「フルーツ」のレコーディングで集まったメンバーが中心となって結成されたのですが、個人的には佐野元春を支えるバンドとしては、あのTHE HEARTLANDをも凌ぐ最強のメンバーだったのではないか、と。今のTHE COYOTE BANDも大好きですし、バンドそれぞれの「音」があって、それが全く違うのも面白いところ。

ただ残念なのは、THE HOBO KING BAND(ザ・ホーボーキング・バンド)名義のアルバムってあまりないんですよね。
そんな中、昨年発売されたアルバム「マニジュ」、そしてこの作品と立て続けに作品が発表される中、今回のアニバーサリー盤が発表される直前にアナウンスが。

何と、ザ・ホーボーキング・バンドとレコーディングに臨んだセルフカバーアルバム「自由の岸辺」が5月末に発表されるとのこと。

ちなみにザ・ホーボーキング・バンド名義となっていますが、参加したのは古田たかし(ドラムス)、井上富雄(ベース)、Dr.kyOn(キーボード)、長田 進(ギター)という、THE HEARTLANDとザ・ホーボーキング・バンドの混成メンバー!

4月1日でマニジュのツアーが終了するので、夏から秋、「自由の岸辺」を引っ提げたツアーに勝手に期待を寄せているのですが、さて、どうなるかな?

今年の一枚

昨日一昨日は、ずっと家に籠もっていた。
少しずつ我が家の掃除を始めながら、年賀状を制作していた。
要件を簡単に済ますことを例えて「こんなのまだ朝飯前」だとか「まだまだ序の口」なんていう言いぶりがあるが、そういう意味では我が家の冷蔵庫は「夜明けを知らない夜」であり「横綱級」と評すればいいのだろうか。恥ずかしながら、ハッキリ言ってブラックホールである。

例年のことながら、一体いつから姿を隠していたのか、化石級のアイテムが登場する冷蔵庫に辟易し、若干具合悪くなりながら、かなり丁寧に磨き上げた。恐らく、我が家の大掃除はこれで佳境を迎えることになるのだろう。

家族が一人減ってから、2度目の正月を迎える。
「派手に、賑やかにしたくない。質素な正月でいい。」という母。
といいつつ何やら妻と勝手に仕出し屋にも負けないオードブルを作ると張り切っている。どうやら年末は包丁を握る機会が多くなりそうだ。

年賀状の図案は、毎年暮れになるといろいろひねり出しながら作成していたのだが、昨年の暮れは喪に服していたということもあり、その作業がなかった。
どうやら一年のブランクが、年賀状を作成する意欲も削いでしまったようで、あまり見栄えのしない年賀状に仕上がってしまった。更に困ったことに、昨年のうちに引っ越しで住所の変わってしまった人たちの新しい住所を整理していないことに気づいた。
嗚呼、どうやら大晦日ギリギリまで年賀状作りに勤しまなければならないらしい。

閑話休題。
年末だというので、今年見聞きした音楽の中で、勝手に寸評をつけてみようと思う。
しかし今年は洋楽邦楽問わず明るい話題に乏しかった、というのが率直な感想。何かと失うものが多かった年だった。何といってもマイケル・ジャクソンの急逝。これに尽きる。

国内に目を転じても、忌野清志郎や加藤和彦、川村カオリに三木たかしなど、本当に惜しい人ばかりが亡くなってしまった。

ヒットチャートを席巻していたのは「嵐」ばかり。彼らを観ない日はない、というぐらい毎日テレビに登場していたようだ。

さて、今年一番聴いた一枚(気に入った一枚)を挙げようと思うのだが、今年はあまりパッとした作品がなかった、かも知れない。というより、最近新しい作品(アーティスト)に耳を傾けるということをせず、過去の栄光(といっては語弊があるが…)ばかりを追いかけているため、大した作品がチョイスできないのが正直なところ。

マイケル関連だと「THIS IS IT」ということになるのかも知れないが、サントラ盤は特に面白いものではなかった。いっそのこと、発売予定だったという「7even」を発表してくれた方がよかったのに。

恐らく来年であればDVD部門は文句なしで『THIS IS IT』ということになるのだろうか。今年はつい先日紹介したジョージ・マイケルの『LIVE IN LONDON』で決定。久し振りに見る動くジョージ・マイケル、それも初のライブDVDというだけでも十分なのだが、内容も素晴らしかった。

しかしこの人幾つになるのかなぁ、と思いながら観ていたのだが、63年生まれということで今年46歳ということになる。確かに年を食った感は否めない。相変わらず踊りは今ひとつだったが(笑)、圧倒的なその声量というか歌声にはすっかり魅了されてしまった。

CD 部門。というか最近はiTunesやMORAでの音楽ダウンロードが主流となっていて、CDを購入する機会そのものがめっきり減ってきている。昨今、アナログ盤が珍重されるように、近い将来CDも珍重されるようになるのかも知れない。そして、MDはカセットテープ並みに消耗品化が進むことだろう(実際この間部屋の整理をして、5年以上聴いていない大量のMDを廃棄した)。

で、いろいろ考えてみるのだが今年の一枚。
全く浮かんでこないのはなぜだ!?
まぁ、順番に挙げていくか。



まずプリンス。米国のスーパーマーケットでのみ購入可能という変則販売での3枚組。に本国内での入手を危惧する声も聞かれたが、杞憂に終わった。
3枚組のうち、2枚がプリンスの作品(それもタイトル上独立した別個の作品)、もう1枚がプリンスのプロデュースによるBria Valenteという女性シンガーのアルバム。
何となくプリンスの毒が薄れてきているような気がしなくもない作品で、評価も二分されているようだ。この作品の発売前に$77の会員制サイトを立ち上げたのだが、アルバムの発売前にサイトを経由して事前に音源を入手することができたことも、良くも悪くもこの作品の評価に作用しているような気がする。
嫌いじゃない。嫌いじゃないんだけど、一押しとまでは、うーん…。

続いて、Jesse JohnsonのVerbal Penetration。プリンスのファンには注釈不要なんだけど、この方、THE TIMEというかつてプリンスがプロデュースしていたバンドのギタリストで、プリンスとはいろいろと因縁めいたものがあるらしい。
まずこの作品が彼名義の13年ぶりの作品であること、しかも2枚組であること、更に非常に統一感の取れた作品だということで、正直言ってかなり衝撃的だった。丁寧に奏でられるギターのサウンドも心地よく、個人的にはかなり聴く機会の多かった作品。



エレファントカシマシ「俺の太陽」。久し振りにエレカシ節炸裂を感じさせる作品。歌詞に横文字、カタカナが氾濫する作品が多い中、日本語を大事に扱っているよなぁ、と感じさせる(といいつつ一曲目は「Sky is blue」というタイトルだが)。
しかし今年のエレカシは何か、発売ラッシュでしたな。ベスト盤は出すわ廃盤は再発するわDVDもボンボン発表しちゃうわで。来年どうなるんだろう?



吉川晃司「Double-edged sword」。
初回限定盤は、直近のライブ盤と初期の頃に発表されたライブ盤(「ZERO」)が同梱されていて、何がメインなのかよくわからない作品。ちなみに、今年7月に亡くなった元thee michelle gun elephantのギタリスト、アベフトシが数曲参加している。アルバム発売に合わせてメディアへの露出が増えたけれど、結局個人的な念願だった紅白歌合戦への再出場は叶わなかったか…。

しかしこうやってみてみても、今年はこれだ!という作品に未だ遭遇していない。
ということで、今年は「該当なし」ということでよろしいでしょうか…(苦笑)