Daily Archives: 2016-10-04

第14回弘前・白神アップルマラソン ~初の伴走体験記~

毎度のことながら、今回も長文駄文になってしまいました。その量、原稿用紙換算で17枚以上。私はいったい何を目指しているのでしょうか…。

dsc_0003(スタート前、弘前公園RCのメンバーを中心に撮影。)

【いきなり総括】

走るも地獄、やめるも地獄。
大会当日の弘前市の10時の気温は22度近く。11時には22度を超え、日差しが強く照りつけていたほか、ほとんど風が感じられなかったため、気温以上に暑さを感じることとなりました。何せ、太陽を遮るものがほとんどないのであります。実際、数名の方が熱中症と思しき症状で倒れていたほか、ゴールに向かう選手の皆さんの顔や手足を見ると、老若男女問わず、汗が乾いて塩が浮き出ているような状況でした。10月なのになんか真夏の大会を彷彿させるというか、8月の北海道マラソンより過酷な大会になってしまったような気が…。
そんな過酷な状況の中、弘前公園ランニングクラブの中で自己ベストを更新した選手は、ほんの一握り。多くの選手は持ちタイムを大幅に下回ることとなり、ゴールした後にガックリとうなだれる姿をたくさん見かけることとなりました。そしてなぜか皆さん、謝るという…。別にいいんですよ、悪いことしていないんだから。
一方で、今回初めてフルマラソンに挑戦したメンバーが全員完走するなど、悔し涙にも嬉し涙にも暮れる、そんな大会となりました。

【初の伴走、いよいよスタート】

さて、私自身7度目となる弘前・白神アップルマラソン。既に先日のブログで投稿したとおり、今回はハーフマラソンで視覚障碍者の伴走を務めることとなりました。これまで練習は幾度か行っていましたが、大会での伴走は初めて。実は、スタート直前まで自分のレース出場以上に緊張していたことを、今だから明かしましょう。だって、怪我をさせてしまっては、元も子もないワケですから。

9時50分のスタート時刻に合わせ、Aさんとともにスタート地点へ。既にたくさんの選手が集まっていましたが、敢えて混雑を避けるため、後方でスタートを待つことにしました。2時間40分のプラカードよりも、さらに後ろ。この日、ご本人は「目標2時間」を掲げていましたが、私個人としては、少しでもそれに近づけるようにアシストすること、そして、周囲に目を配りながらの危険回避と、ご本人の発汗や息づかいといった様子を確認しながらまずは安全第一で走ることしか考えていませんでした。
そのために、事前に渡された「伴走」のゼッケンの上下に赤いマジックで「接近注意」「追抜注意」の文字を書き加えました。あとは、実際走りながら周りに注意しなければならない、それだけでした。

スタート前から既に暑さを感じる天気。晴れてくれるよりも、曇りの方が良かったのに。
67歳という年齢でハーフマラソン2時間切りを狙う。それだけでも十分凄いことだと思いますが、それを伴走するこちらとしては、そのことがプレッシャーになっていたのも事実でした。ふとAさんの顔を見ると、既に発汗の兆しが。それを見て決めました。今日は無理はしないでおこう。ただし、最初の下りで潰れるぐらいなら、慎重に入って後半追い込む。ネガティヴスプリットとは行かなくとも、イーブンに持ち込めれば…そんな感じでした。ただし、タイムに関しては皆目見当がつかなかったので、大体2時間15分ぐらいでいいかな、と考えていました。
程なく号砲が鳴り、ゆっくりとスタート。当然のごとく人、人、人の波に揉まれることとなるため、逆に最初の下りを慎重に入ることができました。ただし、Aさんは我慢できず明らかに先に行きたがっている気配が感じられたため、「ここは我慢しましょう」と諭しながら、最初の1キロは約9分も要して通過。まあ、スタートの混雑を考えるとやむを得ない。
あとは、選手の間を縫うように「11時。1時。」と時計の文字盤になぞらえて進む方向を指示します。

【紐一本で繋がれた信頼関係】

「まだしばらく混雑が続いていますけど、前を走る人を避けるのにちょっと蛇行することになるかも知れません。」
「了解。今日はマカちゃんに任せた。」
…ん?私はふと、Aさんが口にした「任せた。」の意味を噛み締めていました。
Aさんと私を繋ぐのは、Aさんの左手と私の右手に握られた一本の紐の輪だけ。私が手を放してしまったら、Aさんは走り続けることができません。この私に全幅の信頼を寄せ、しかもペース設定まで任せるとは…。
嬉しい半面、これは絶対ゴールまでたどり着かないと…。
Aさんの右側を追い越そうとする人を避ける(Aさん曰く「右側を通る人が気になって仕方がない」)ため、なるべくセンターライン寄りに位置取りします。
岩木川に架かる岩木茜橋を渡りきった2キロ過ぎからキロ6分台前半までペースを上げますが、給水ポイントのある4キロまでは我慢しましょうと、なおも抑え気味。反対側の車線は、10キロを折り返してきたランナーの姿が続々と。
この間、路面の状態がどうだとか、マンホールの蓋があるとか、緩い上りだとか、進むべき方向がどちらだとか、間断なく情報をAさんに伝えていきます。そんな中、3キロ過ぎでは対向車線の歩道にどうやら熱中症で倒れてしまったらしい10キロの選手の姿が。今日のこの暑さはやっぱり辛いよなあ…と走っていると、対面からやってくる救急車両の通過のために道を開けなければならなくなったのですが、ちょうどタイミング良く交差点内を走っていたため、さほど気を遣うこともなく救急車両が脇を通り過ぎていきました。ホッ…

【給水ポイントも難なく…】

4キロの給水地点は、既に先を走るランナーによってたくさんの水と紙コップが路上に捨てられ、路面が水たまり状態に。(苦笑)
ひとまずスピードを緩めながらAさんの希望を聞き、スポーツ飲料、水の順番に手渡しします。Aさんがそれらを口にするその間に、私もサッとスポーツ飲料を一口含み、空になった紙コップをAさんから受け取り、ゴミ箱へ。ここでは、ほぼ脚が止まっていました。
「よし、行こう!」
Aさんの一言で再び走り始めた我々。この辺りは左折、右折が連続する他、道幅が若干狭くなります。9時、3時、9時、10時、緩く1時…と曲がる方向を的確に伝えながら、路面の状況やランナーの混雑具合などを伝えていきます。6キロを過ぎてから9時の方向へ進み橋を渡ると、更に道幅が狭くなります。緩い上りに差し掛かったことを伝えると、Aさん、何かのスイッチが入ったようにペースアップ。

【実は結構凄い走りっぷりだった】

…というかここまで、ほとんど我々を抜いていった人がいないのです。前を走るランナーを、ずっとゴボウ抜き。
本当に、何人の人たちを追い抜いたかわからないぐらい。そしてこの上りでもペースを上げると、前を走っていた若いランナーが「すげぇ…マジかよ。」とポツリ。
それを二人で耳にしながら、「Aさん、いいですね。凄いいい走りしてますよ。その調子で行きましょう。」と、Aさんを奮い立たせるように声を掛けます。この間沿道はもちろん、10キロにエントリーし、中間を折り返したたくさんのランナーから、Aさんに声援を送ってくださいました。…実はAさん、その数を数えていたらしいです。
やがて長く緩い下り坂へ。下りに入るとペースアップするランナーがたくさん現れ、我々の横をすり抜けようとします。経験上、ここでペースアップする人は、後半で大概潰れています。ここは抑えて、抑えてと声を掛けながら、颯爽と追い越していくランナーをさほど気にせず、ただしなるべくAさんの右側をランナーが駆け抜けないように、中央寄りに車道を走り続けます。長い下り、いよいよAさんも飽きてきたらしく、この辺りから「直線?下り?」と頻繁に聞いてきます。
下りを終えた8キロ過ぎ、ようやく2度目の給水。ここでもしっかりと給水を取り、いよいよ折り返し地点を目指します。この辺りでは既に折り返してきたランナーが現れ、反対車線を駆け抜けて行きます。
平坦で単調、更に反対側を駆け抜けるランナーが続々と現れ、道幅が狭くなる区間ではありますが、Aさんになるべく状況を伝えながら走り続けます。合間には他愛のない会話もしながら。やがて9キロ地点の交差点に現れたのは、何とうちの母と甥っ子。
声援に軽く手を振り、Aさんにその旨を伝えると、「折り返した後、絶対教えて。お母さんに挨拶しなければならない。」と、妙に張り切るAさん。

【折り返し地点へ快走】

「折り返しまであと何メートル?」「あと500メートル。」
実際500メートルあるのかはわかりません。ただ、目測でそれぐらいだろうということを言えるのは、これまで何度もこのコースを走っていたからのことでした。
「折り返しが見えてきたら教えて。」「了解。」
折り返しが見えそうで見えてこないのが、このコースのイヤらしいところ。
「あと何メートル?」と、しきりに折り返しを気にするAさん。
「あと200。」といいましたが、実は200メートル以上あったという…。
ようやく折り返しの赤いコーンが見えてきました。
「折り返しまであと10、5、3、折り返します。3時、もう一回3時…。」
転倒することなく着実に折り返すため、的確に指示を伝えます。時計を見るとここまで1時間ちょっと。1キロ平均6分15秒のペース。予定ではここからペースアップ!のはずだったのですが…。

【家族への挨拶、そして失速】

11キロを過ぎ、ここで、フルマラソンのトップを走る選手が我々の横を駆け抜けて行きました。そして再び、先ほどの交差点が近づいてきました。よく見ると、母と甥っ子の他、妹の姿も見えます。
「Aさん、左側におふくろいますよ。…あれ、妹もいた。」
「おお、そうかそうか!嫁さんは?」
「いません。多分、ゴール地点にいるはずです。」
母と妹を前に、Aさんがおもむろに立ち止まります。
「あなたのご主人をお世話し、今は息子さんにお世話になっているAです!ありがとうございます。」
それを聞いた母と妹、苦笑い。
「ささ、行きましょう。」
…ところが、ここで脚を止めてしまったのが影響したのか、少しペースが落ちた感じ。
更に、次の給水は先ほど下ってきた長い上りの手前にあるのですが、Aさん、その給水は必要ない、と言い始めたのです。
ええぇ?マジですか…。

【暑さとの戦い、遠い給水ポイント】

12キロ過ぎにある給水ポイント、結局Aさんは本当に何も摂らず通過しました。(私は念のためスポドリを一口。)
ここから長くダラダラと上り坂が続きます。上りに入るといつもペースアップするAさんですが、上げる気配がありません。表情を見ると、汗を流しながらかなり苦しそうな感じ。
「ペース速いですか。大丈夫ですか。」
「…大丈夫。」
上り坂ですので、多くの会話は求めません。
「しばらく上りです。少し我慢して、ここ踏ん張りどころですから。」
しかし、ボディブローのように続く緩い上り坂。
「…頂上が見えたら、教えて。」
「わかりました。」
Aさんはそのあとも、まだまだ続く上り坂に辟易しながら何度も同じことを聞いてきます。本当に辛そうな感じ。というのも、徐々に左側、つまり私の側に上半身が倒れ始めてきたのです。大丈夫か?
やがて上りの頂点、それは右折してようやく下り基調になるポイントでもあるのですが、それが見えてきました。
「Aさんお疲れさま!上り、あと150メートルで終わりますよ。」
上りの頂点を通過し、3時の方へ。
「ここで少し呼吸を整えましょう。」
「…給水まであとどれぐらいだ。」
「え…いや、2キロぐらいです。」
「何回曲がる。大通りまであと何メートルある。」
どうやら喉が渇いてきたようで、若干苛立っている感じで矢継ぎ早に質問してきます。
それでも、Aさんから次々と発せられる問い掛けに必死に答えながら先へ先へと進みます。
大通りに入るとすぐ、「交差点まであと何メートルだ。」と尋ねてきました。
「500メートルはあります。そこを左に…」
「あぁ?左?」大きな声で間違いを指摘するAさん。
「すいません、右でした。右折です。」
…ううむ。揚げ足を取られるのは本意ではありませんが、こちらが我慢我慢…。
その後も何度も「あと何メートル」を聞いてくるAさん。いよいよ限界も近づいていたらしく…。
にもかかわらず、私設エイドがあると伝えても、それには手を出そうとしないのです。…なぜだ!

【ようやく給水、そしてサブ3のペースメーカーが…】

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再びくねくねと右折左折を繰り返し、Aさんはもはや倒れる寸前、といった感じではありませんでしたが、疲労困憊は明らか。そしてようやく給水ポイントへ。Aさんはバナナを貪り、スポーツドリンクを2杯飲み、更にレモンを口にし、水をもう1杯。いや、暑いんですよ実際。

どうやらこれでかなり気分的にホッとしたらしく、息を吹き返した感じ。
「よし、ゴー!」の一言で再びゴールを目指します。
このあとも、目的の建物、そして残り2キロの手前にある橋を目指して走って行きますが、ペースはほとんど上がりません。3時間切りを目指すフルマラソンのランナーが続々と横を通り過ぎて行きます。さらには、余力を残していたハーフマラソンのランナーにも抜かれ始めますが、それでもなお、多少ペースが落ちたとはいえ、相変わらず前を走るランナーを次から次へと追い抜くという構図に変わりはありませんでした。
ただし表情は苦しく、汗をかいている様子にも変わりがありませんでした。

やがて岩木川に架かる岩木茜橋を走り終えると、突然背後から声を掛けられました。
そこには、我々の50分前にスタートしたフルマラソンで、今回3時間のペースランナーを務めるMさんの姿が…。
ハッと時計を目視し、この時点で2時間切りが叶わないことを確認。そして、その背後からもう一人、同じペースランナーを務めるNさんも我々に声を掛けて颯爽と走り抜けていきました。
しかし敢えて時間のことは告げず、その後も淡々と走り続けていました。

【最後の給水、そしてゴールへ】

「最後、もう一か所給水ないか。もう少し水が欲しい。ゲップが、出ないんだ…。」
Aさんがポツリと呟きました。ちょうど目の前に私設エイドがありましたので、そこで給水を取ります。1杯目は口に含み、2杯目は自ら頭にぶっかけて。かなり暑いんですよ、やっぱり。黒のNo Apple…のTシャツも、ある意味選択ミスだったかも知れません。事前に黒のTシャツを着用することを聞いていたんだから、シャツの色を変えるよう連絡すれば良かった。
それでもあと約2,000メートル(個人的に「あと○キロ」というのがとてつもなく長い距離に感じられるため、残り10キロ未満は○千メートルと表現するようにしています)を切り、しかもAさんへの沿道の声援もどんどん増えてきました。「ありがとう!」と全ての声援に大声で応え続けるAさん。相変わらずゲップは出てこないようですが、力になるんですよね、こういうのが。
「最後の坂まであと何メートル?」
同じような問答が続きますが、ここは正確に。
「あと200。上りは300。上り切れば残り800。ここ最後踏ん張りましょう!」
そして最後の上り坂の途中で、畏友I先生一家の声援を受けます。ありがとう!

いよいよ弘前市役所裏の最後の直線へと歩を進めました。
「ゴールまであと500メートル。もう少しで終わりますよ!…いや、終わっちゃうのか…。」
終わります、という自ら発した言葉に、一抹の寂しさを覚えました。
そうなんだよな、2時間超に及んだ伴走、もうすぐ終わっちゃうんだよな。

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「あと200で左折、50進んで左折、50でゴールです!」
ハーフで先着していた弘前公園RCのメンバー数名が、我々に声援を送ってくれます。その前を颯爽と…とまでは行かないものの、笑顔を浮かべながら通過。そして、いよいよゴールの追手門広場へ。
たくさんの観衆から声が上がります。
「Aさん、ラスト!」「凄い凄い!」
そんな声援が、Aさんの耳にも私の耳にも届いていました。
「あと10、あと5…ゴール!お疲れ様でした!」
最後はほとんど無言になってしまったAさん、「ありがとう!」と言い放ったあと、無言で握手、そしてハグを求めてきました。
Aさんの肩を叩き、「いやぁ、お疲れ様でした…。」と声を掛けながら思わずウルッとしそうになりましたが、これで私の役目はおしまいではありません。ちゃんとご家族の元へ送り届けるまでが、私の役目なのです。

【記録は…】

「ところで、何分だった?」
「ええと…手元の時計で2時間14分台です。」
「そうか…2時間切れなかったか…。」
今日、2時間を切ったら来年フルマラソンへの再挑戦を宣言する!Aさんはスタート前にそう意気込んでいただけに、14分及ばなかったことに対する悔しさを滲ませているようでした。少しガッカリするその姿を見ながら、もっと時間をちゃんと伝えながらペースコントロールをすれば良かったんだろうか…と私自身も反省。
しかし、今日の暑さではこれがギリギリだったのではないかと思います。しかも御年67歳ですよ。凄いと思いませんか!?

「ペースが速かったり、辛かったらおっしゃってください。」
…この呼びかけに対してAさんは、19キロ手前の岩木茜橋を過ぎるまで、一度も弱音を吐きませんでした。文句は一切なし。もしも我慢を強いていたのであれば伴走失格ですが、どうやらそういうことではなかったようです。
「…あ、ゲップ今出た。笑」
Aさんの完走証を受け取り、Aさんのランニング仲間が待っているはずの場所へ。あれ?誰もいない…。ふと見ると、うちの妻の姿。
「…えっ!もう帰ってきたの?」
何と、ゴール付近で撮影していたと思っていた妻は、今回大会に参加した職場の仲間と談笑し、我々のゴールシーンを撮り損ねるという失態…。(苦笑)
まあ、結果的にAさんにご挨拶できたので、それはそれで良かったんですけどね。
そして、我々の後ろをついてきたAさんのご家族と、サポートをされていた方にあとのお願いをします。
「ありがとうね。」「いえいえ、お疲れ様でした。」
もう一度握手を交わし、今日の私の役割は終わったのでした。

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【最後に】

走るということに、定年はありません。いつでもどこでも気軽に楽しむことができます。しかしそれは、健常者であるが故に言えること。障碍者をはじめ、なかなか気軽に走ることを楽しめない状況にある方々がいるのも事実です。
限られた練習の中で自らを磨き上げ、そして目標に向かって進む。そして、それをサポートすることの重要性。
うまく表現できないんですが、Aさんとともに、時にAさんの目となり時に水先案内人となりながらハーフマラソンを走り終えてみて、私自身の達成感もじわじわと沸いています。
今回、私への完走証はありません。しかし、それ以上のものを頂きました。走っている間の緊張感と走り終えたあとの疲労感、これは、一人で大会に出場して走る時と全く別物でした。これはなかなか経験できることではないと思います。

ただ、別に特別なことをしたという思いは一切ありません。裏を返せば、伴走には何か特別な技術は必要ないということです。強いて言えば一番大事なのは、一緒に走る方との信頼関係をいかに築くか、これに尽きるのではないかと思います。(まあ、これが一番難しいのかもしれないけれど。)

でも、こんな僕でも伴走することができたわけですから、その気があれば皆さんだってできるはず。これを機に、視覚障碍者との距離感というか垣根というか、そういうのがどんどん取り払われていくのであれば、僕にとっては本望です。

それともう一つ。これ、結構大事なことなんですが、伴走を行うと点字ブロックや段差といったものがやたらと気になるようになります。実は当日、会場内でも点字ブロックの上に堂々と敷物を敷いているチームを見かけました(それも、1チームではなく複数)。苦言を呈しかけたところでAさんに「いいからいいから」と諭されましたが、かなりムカッと来たことだけはお伝えしておきたいと思います。あと、普段でも目にするのが点字ブロック上に停められた自転車。これはホント、全部ぶっ倒してしまいたい心境に駆られます。そんな感じで、それまで無意識だったことを意識するきっかけになるのは事実です。

正直今は、来年のことへの考えは及んでいませんが、Aさんからは「11月まで練習に付き合って欲しい」というリクエストがありましたので、そのリクエストになるべく応えていきたいと思います。

最後になりますが今回、皆さんから本当にたくさんの声援を頂きました。
Aさんの分も含め、心から御礼申し上げます。
本当に、本当にありがとうございました!