日別アーカイブ: 2018-08-02

「東北OM親子企画 マタギ体験合宿」に参加してきました

【途中で鶏を捌くというグロッキーな画像が現れますので、閲覧にはくれぐれもご注意ください。】

原稿用紙換算で約11枚ちょっと。今回も長いよ。

7月28日・29日の両日、北秋田市で開催された「東北OM(東北まちづくりオフサイトミーティング)親子企画 マタギ体験合宿」の初日に、5歳の甥っ子と二人で参加してきました。

29日に男鹿市で行われる「日本海メロンマラソン」に出場するため、前日から母の実家である北秋田市(合川)への宿泊を決めていたのですが、この合宿が同日に同市(阿仁前田)で開催されることを知り、「ちょっと顔を出そうかな」と申し出たのがきっかけ。

母に何気なくその話を伝えたところ、甥っ子も一緒に連れて行ってもらえるものだと認識されたようで、急遽先方へ連絡、2名で参加することに。(母か妹も同行する予定でしたが、諸般の事情で僕と甥っ子の2名だけで参加することに。的確な情報を伝えられず、企画・運営の皆さまには本当にご迷惑をお掛けしました。)

マラソンの前日なので、本当に顔を出すぐらいの気持ちでしか考えていなかったのですが、甥っ子が行くとなると事情が少し変わると思い、行程を再検討。
1案は、弘前から阿仁前田の会場まで自家用車で。
2案は、母の実家に車を置いて、秋田内陸線で阿仁前田まで移動。

当日、午前11時頃に甥っ子をお迎え。
助手席に乗り込んだ甥っ子と二人で長時間に渡ってドライブするのは初めてのこと。そして、何時間も親元を離れる甥っ子の監視は、僕が一切の責任を負わなければなりません。
甥っ子の機嫌を損ねぬよう、車中はDVD鑑賞に付き合いますが、これがまたいい感じで睡魔を呼び込むという…。

北秋田市に入った後もなお、ギリギリまで行程に悩んだ結果、甥っ子のリクエストもあり、母の実家へ向かうことに。
母の実家へ到着すると、僕の伯父と従姉が出迎え、甥っ子は喜色満面。よしよし。
しかし、昼ご飯を食べる算段をしていませんでした。というのも、合川駅から阿仁前田駅までは秋田内陸線を利用して移動するのですが、阿仁前田駅周辺の飲食店情報をリサーチしていなかったのです。

ちなみに阿仁前田駅は、温泉施設が併設された珍しい駅。飲食施設もあるはずだとネットで確認、ひとまず合川駅へと徒歩で向かいます。(その距離200mちょっと。)
昭和の頃から変わらない駅舎の待合室で列車の到着を待ちながら、切符を購入。

ホームに向かうと、何とも言えぬ懐かしさがこみ上げてきます。

が、日よけも何もないホーム上、列車到着の3分前とはいえ夏らしい暑さがジワジワと身体を突き刺し、甥っ子が「暑い」とぼやき始めます。駅舎に戻るには時間がないし、どうしよう…と思ったところへ列車到着。なんだかかわいらしい車両だな、おい!ナイス内陸線!

合川駅から阿仁前田駅まで25分ほど、わずか1両のみの気動車には、結構大勢のお客さんが乗車しており、ボックス席ではなくベンチシートに二人で腰掛けました。

どんどん秘境めいた山地へと進む内陸線。

やがて、突如開けたところで阿仁前田駅に到着。
改札を抜けたすぐ左手には、温泉宿泊施設「クウィンス森吉」があります。

既に13時を過ぎていましたが、これから食にありつくまではまだまだ時間がありそう。ということでこの施設の中の食堂で、一杯のかけそば(古っ!)ならぬ一杯のラーメンを甥っ子と分け合います。軽めにしたのは、この後絶対に美味しい物が食べられるはずという確信があったから。

さて、目的地の前田公民館、Googleマップではすぐ近隣とのことでしたが、完全に騙されました。
確か、駅の近くではなくて阿仁川の向こうだって聞いていたんだけど…。
駅前で右往左往の迷子状態になったため、目の前の商店へ飛び込んで場所を聞くと、店の人ではなくお客さんとして来ていた近所のおじさんが懇切丁寧に教えてくれました。
甥っ子の手を引いて外に出ると、そのおじさんが背後から叫んできます。

「川沿い、右手に進んでおっきい橋渡ればすぐだがら~!」

皆さん、本当に優しいです。

目的地の前田公民館に到着したのは、集合時間の14時ちょうど。既に皆さんが集合していました。
初めてお目にかかる方、お久し振りの方が半々といった感じでしょうか。

講堂に集まり、秋田OMの松田さんの進行でセレモニーが行われたあと、いよいよ体験がスタート。

講師(主宰)は、北秋田市根森田地区にある「リバーサイト民宿丸慶」のオーナー、佐藤さん。

(1)やまと豚の燻製焼き体験
外に出てステーキサイズのやまと豚を串刺しにし、塩こしょうを振ったあと、近所を流れる阿仁川の河原へ持参します。

(串刺しにした生肉を手に河原へ向かう我々の姿は、さぞかし奇妙だったことでしょう。)

火の焚かれた薪の中へと肉を立てかけ、しばらく放置。桜の木などを薪として利用しており、いわゆるベーコンのような香りと味わいが出るらしく。

…しかし、立てかけた棒が熱くなるばかりで、一向に火が通る気配がありません。

大丈夫なのかこれ?

(2)一から作るきりたんぽ体験
ある意味この日のメインイベント。
まずは鶏を自らの手で捌くというもので、大人も子供も戦々恐々としながら鶏を見守ります。

我々が到着した頃にはまだ生きていたようなのですが、この暑さでやられたらしく、鶏は既に息絶えた状態となっていました。合掌

マタギの一二三さんがおもむろに鶏の羽毛を毟りはじめ、みんなに手伝えと声を掛けます。

ちなみに甥っ子、まだ生暖かい鶏に恐る恐る手を触れたと思ったら、何を思ったのかそのまま撫で始めるという…。やはり経験させるにはまだちょっと早かったか、と思いきや、周囲の人たちの見様見真似で毛を毟り始めました。

実は僕も未経験。甥っ子に先を越されてしまった、と苦笑いしながら、命を頂くことへのありがたみを噛み締めつつ、無心で一緒に毛を毟り続けました。まさに「いただきます」。

やがて丸裸にされた鶏は、佐藤さんと一二三さんによって手際よく捌かれていきます。その光景を見ながら、昔のことを思い出していました。


うちの亡父もかつて猟銃片手に山へ向かい、ヤマドリを捕まえてきました。(父は下手すぎて捕まえることはなかったようですが。)
その時も裏庭に段ボール箱を置き、ヤマドリを捌いていたことを思い出しましたが、僕はその光景を一度として見たことはありませんでした。飼い猫が鼻の頭にヤマドリの羽根を付けて戻ってきた時は、ドン引きしたぐらい。

亡父の生家(=いわゆる本家)ではその昔、熊やウサギの肉を食べさせられたこともありました。
が、肉の臭みや固さに顔をしかめ、ほとんど口にすることはありませんでした。

ちなみに父の生まれ故郷は秋田県と青森県に跨がる白神山地のある西目屋村。この村にも、マタギの風習があります。
そして、旧阿仁町にもマタギ文化が色濃く残っています。
そんな奇妙な関係というか繋がりというのを紐解いていくうちに、きっとこの場に僕と甥っ子がやってきたのも、不思議な御縁に導かれてなのだろうな、ということを考えていました。

ひととおり鶏を捌く作業が終わり、再び公民館へ。
いよいよ甥っ子が楽しみにしていた、きりたんぽの製作に取りかかります。
まずは白飯を潰す作業。

お友達となった仁希くんと二人ですりこぎを握り、共同作業とばかりにすり鉢の白飯を潰していきます。
更に大人も加わり、ひたすら白飯を潰し続けます。

潰した米を丸め、きりたんぽを焼く棒に伸ばして成形。

他方、姿の見えない男性陣は外で、鶏肉に串を刺す作業を黙々と続けていました。
鶏の脂で手が滑り、悪戦苦闘の模様。

先ほどこしらえたきりたんぽを焼く作業。炭の熱に四苦八苦しながら、表面を乾かし、焼き目を付けていきます。

そんな作業に明け暮れているところに、マタギの一二三さんが燻製の豚肉を手に登場。その風貌はまるで獲物を抱えて山から下りてきたよう!

(1)の燻製が完成です!

棒が熱いからと軍手を付け、肉を貪る皆さん。これがまた、想像以上に旨いのであります!

更に焼き目のついたきりたんぽには、味噌を付けて食します。

やがてひととおりの準備が終わり、再び講堂へ。そこにあったのは、きりたんぽ鍋の出汁を取り終えた「ガラ」。
これを貪りながら飲むビールがまた旨いのですが、貪ることに夢中で撮影を忘れました。

宴会の準備は着々と進み、ステージの上には見たことのない日本酒の瓶が並び、目の前には先ほど捌いた鶏が、何と刺身として置かれています。

程なく佐藤さんの音頭で乾杯となり、宴会がスタート。

甥っ子に「鶏の刺身、食べてみる?」と聞いたら、恐る恐る「うん」と。
後で聞いたら、甥っ子はほとんど刺身を食べたことがないのだそう。

「美味しい?」と尋ねると「ちょっと辛い」との感想。
刺身醤油の中に一味唐辛子がたくさん入っていたもんね。ごめんね。

そしていよいよ、甥っ子が一番楽しみにしていたきりたんぽ鍋が運ばれてきました。
早速きりたんぽ鍋にありつく甥っ子。
「美味しい?」と聞いたら今度は無言のまま「うん、うん。」と頷きました。
1杯では足りず2杯食べ、相当満足したようです。

一方、お目付役の僕は、秋田OMの奥山さんからの熱視線に真摯に反応、禁断の日本酒へと手を伸ばしていました。
これで勝負あり。明日の日本海メロンマラソンは、出場取りやめも選択肢にしよう。(結局出場したものの、結果は最悪でした。やむを得ない。)

最年少マタギの織山さんが、この地方のマタギ文化について動画を交えて説明してくれました。
・狩猟で得られた獲物は、マタギ全員で均等に分ける。獲物が得られなくても悔しいことはない。
・少数で複数の声を発し、たくさんいるように思わせる。山頂から1人、下から5人ぐらいで追い詰める。

他にも色んなお話をしていたのですが、かなり酔っ払っていたことと甥っ子の動向が気になって、あまりお話を聞けず。

18時40分には公民館を出発し、阿仁前田駅隣接の温泉に入ることを甥っ子と約束していたので、集合写真を撮影したあと、後ろ髪を引かれる思いで泣く泣く会場を後にしました。

考えてみると、弘前を出発してから8時間近くに渡って二人きりで過ごしていたわけですが、この間に甥っ子がお母さん(妹)やお婆ちゃん(母)のことを口にしたのは、公民館に到着した最初の頃まで。
その後はすっかり場の雰囲気に馴染んだようで、泣き言一ついわずに最後までオジちゃんと一緒にいてくれました。

温泉に石鹸などを置き忘れるというオチが付きましたが、20時過ぎに阿仁前田駅から鷹巣駅へ向かう列車に乗り込む直前、温泉施設のロビーで一部の参加者と再会するというおまけもあり、甥っ子も最後まで楽しめたようです。
ちなみに、列車に乗車してから合川駅で下車するまでは、乗客は我々二人きり。

ちょっぴり凜々しくなった甥っ子の表情を見ながら、胸が熱くなりました。

こういう機会に接することもなく、今回は僕自身がいい経験をさせて頂いたと思っているところです。
主催した東北OMの後藤さん、企画を運営された秋田OMの皆さんをはじめ、関係者の方々に心から御礼申し上げます。本当にありがとうございました。