20021122 Prince @Sendai

sendaipass

2002年11月22日(金)。
よく寝付けぬまま、8時に目が覚める。降り続いた雪は止んだようだ。再び札幌駅から移動し、新千歳空港11時45分発の全日空722便仙台行きに乗り込むわけだが、前日の興奮冷めやらぬ僕、何を血迷ったか9時過ぎにチェックアウト、9時25分発の新千歳空港行き快速に乗り込んでしまった。

「あ、携帯電話の充電器を忘れた!」昨日朝から晩まで酷使した携帯電話の充電器をホテルに忘れたことに気づく。その気になれば取りに戻っても時間的には充分余裕があったのだが、心の余裕がなかったようだ。

前の機種のヤツだからいいか。どうせ同じヤツあるし。と早々に充電器のことを諦め、10時に空港に到着。逆算しても、あと1時間30分を空港で過ごさなければならない。とりあえず、チケットを受け取り、1階到着ロビーの脇にあるファーストフードにて朝食を兼ねて時間を潰す。しかし、結局30分しか持たなかった。もっと観るところはたくさんあるのだが、体力を消耗したくないという思いばかりが先に働いた。
「しょうがないか…」と搭乗ゲートに向かう。探知機で「キンコ~ン」とお約束の反応。はいはい全裸にするなり身体検査するなり好きにしてくださいな。

外を見るとほとんど雪もなく、雲の切れ間から青空が見える。札幌とは別風景だ。6番搭乗口に向かい、椅子に腰掛けると同時に睡魔が襲う。普段の平均睡眠時間7時間の僕としては、この睡眠時間は結構辛いものがある。うとうとしながら時計を見ると、11時だった。「あと30分か…」
とその時、一人の外人がペロペロとソフトクリームを舐めながら僕の側を通った。「ん?」…慌てて後ろを振り返ると、そこには…。

ソフトクリームおじさんは、何とEric Leeds!そして、僕のすぐ後ろにはPrinceを除くバンドメンバー全員が座っていたのだ!一発勝負が見事的中した。当初、朝一番の便で仙台に向かい、早い時間からZepp SENDAIに並ぶことも考えたのだが、Princeと一緒の空の旅を楽しむのも面白いかも…ということで、札幌から仙台への移動時間を予測し、この便に照準を合わせておいたのだ。更に、恐らくこのような大物アーティストは最後に搭乗し、最初に飛行機から出るに違いないから、前の方に座るはずと予想し、事前になるべく前の座席を指定していたのである。「こ、これは何とかせにゃいかん!」すっかり舞い上がっている自分。

ふと、出発前にどういうつもりかマジックを忍ばせておいたことを思い出した。あとは、何に書いてもらうか…あ!CD!前日2,000円で購入したCDを取り出す。これだぁ~!!と自分の豊かな発想力に感謝する。これで2,000円以上の価値になるぞ!…しかし、貧困なボキャブラリが災いして、英語が全く出てこない。ええと…「ク、クッジューギヴミーユアサインプリーズ?(Could you give me your sign,please?)」合ってるのか間違いなのかは定かではないが、とりあえず意味は伝わるはずだ。何度も口の中で反復し、Ericに近づく。「エ、エクスキューズミー、ミスターエリック?」「Ya.」「ク、クッジューサインプリーズ?(練習の成果全くなし)」とマジックとCDを差し出す。するとEricは「Oh!Ya!」といって僕からマジックとCDを受け取り、すらすらとサインしてくれたのだ。う、うおぉぉぉぉぉぉ!!!
緊張と興奮で手が震え、「サ、サンキューベリーマッチ」というのが精一杯。Ericはニコニコしながら荷物のある方へ向かった。よぉし。ここまで来たら、貰える分もらってやるぅ。野望が生まれ、あとはタイミングを待つ。ところがご一行様、ガードの堅さもさることながら、なかなか近寄りがたい雰囲気を醸し出している。何も知らずに口を半開きにして彼らの隣で寝ているサラリーマンが心底羨ましかった。

とその時、Maceoが立ち上がった!チャンス!再びマジックとCDを持ってアタック。「ク、クッジューサインプリーズ?」

また間違えた!しかしMaceoは何も言わずに僕からマジックとCDを受け取り、どこに書こうかなぁ、という表情を浮かべながら、「Maceo」と記してくれたのだ!嗚呼、もう一生モノの家宝!ありがとう、EricそしてMaceo!

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11時35分。飛行機への搭乗案内が始まる。き、きっとPrinceも現れるに違いない…。しかしメンバーの様子を窺うが、そんな素振りすらない。こりゃ彼だけ別便なのかなぁ。ふと見るとメンバー始め大半の客が既に搭乗しようとしている。客室添乗員とのやりとりか、トランシーバーからは「あと6人です」と聞こえてくる。「ダメか」と思いチケットを通し、飛行機へ向かう。

ふと後ろを見ると…デカイ黒人ボディガードの後ろから、紛れもなくPrinceが歩いて来る!白いニットキャップに白の衣装を身に纏っている。思わずガッツポーズ。

「や、やった!!!」

歩く歩調を緩めるが、向こうもこちら(=一般客)の動向を窺っているような感じだった。結局僕とPrinceの距離は約5mほど離れたまま、飛行機に搭乗することになった。(ただ、チラチラ後ろを振り返る奇妙な僕の姿は、ボディガードも彼も気づいていたはずだ。)

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僕の座席は「8E」である。機内は通路が2本あり、左の窓側からA,B列、通路を挟んでC,D,E列、そしてまた通路を挟んでF,G列となっている(すいません、座席表があればわかりやすかったんですが、ちょっと見つけられなくて…)。とにかく、僕の予想は大当たりだった。昨日嫌な予感ばかり的中したことなんぞ全て吹っ飛んだ。そして自分の強運に感謝した。と同時に、ここで全ての運を使い果たさないよう祈った。既に座っているメンバーの席は予想通り「8」列より前であるが、全日空には「6」列がないため、実質僕の席から最前列までは6列(1~5,7)しかないことになる。

Maceoは2列目、Ericは3列目、Rhondaは4列目に座っており、僕のすぐ前には今回のツアーを主催するJEC関係者と思しき4名が座っていた。

Princeはどこに…と思ったら、奥さん(注:2人目の奥さん。後に離婚。)が1Fに、そしてPrinceは1Gに座った。

同じ通路側で、ちょうど僕の席から、白いニットキャップを被った彼の頭がちょこんと見える。すっかり眠気が覚めた。これから1時間10分、Princeはじめバンドメンバーとともに、仙台を目指すのだ。「こっち向いてくれないかなぁ」と思ったが、一向にこちらを向く気配はない。

機内では、ちょっとしたハプニングが発生した。ご一行の荷物が多かったため、Rhondaと一緒に座っている女性(マネージャーなのかよくわかりませんが、以下「マネージャー」と呼びます。)の荷物は通路を挟んだ僕の隣の女性の真上にあった。程なく、女性がしきりに頭や服を拭いている。「どうしたんだろう…」と思いきや、スチュワーデスを呼び一言「上から何か水みたいなものが落ちてくる」。

スチュワーデスがバケットを開けて確認すると、女性マネージャーのものらしい荷物から何か垂れていた。JEC(日本の招聘元)の担当がスチュワーデスに呼ばれ、何やら話しをしている。耳をダンボにして聞いていると、液体の正体はシャンプーらしい。結局被服の濡れた女性は空いている席へ移動し、マネージャーの荷物からシャンプーの瓶が取り出された。心配そうな表情を浮かべるRhondaの顔が印象的だった。前の座席では、明らかにホテルの部屋割りと思われるファックス用紙を見ながら、JECの担当者がああでもないこうでもないとやっていた。視力2.0の僕、必死に目を凝らすと、仙台市の中心部にある「ホテルS」の文字が。「やっぱり…。」

ライブの後仙台市郊外の秋保(あきう)温泉に湯治に向かったクラプトンは別として、ホテルSといえば多くのアーティストが宿泊する御用達の宿である。ちなみに僕もこのホテルに今日の宿泊予約を入れていた。更に目を凝らす。「10・11・12・14」の部屋が見える(ホテルSには13階がないのです)。そして、「14階」の部屋すべてに○やら△が書き込まれていた。「14階に泊まるのか…」。ふと、もう一人のJEC関係者が、「ホテルN」と書かれた領収書らしきものを取り出した。どうやら、在京の際はホテルNに宿泊していることが明らかになった。

…とその時、Rhondaとマネージャーが突然大声を上げて笑い出し、メンバーも手を口で塞いで笑いをこらえているのがわかった。スクリーンを見ると、世界の芸人たちを集めたVTRが流れており、その時登場していたのが、黄色い巨大風船をふくらまし、更に自分の身体をその中にすっぽり入れ、ピョンピョン飛び回るおじさんの姿だった。

その動きがあまりに滑稽で、僕も笑いをこらえるのに必死だったのだが、その時Princeがニヤニヤしながら後ろを振り返った。「おぉ~!Princeも笑ってる笑ってるぅ!」みたいな。結局、彼が後ろを振り向いたのはこの一度だけだったが、僕にとってはなんとも言えぬ至福の時間を味わったのである。ほんの少しだけストーカーの気持ちがわかったような気がした(笑)。

その後、5Aに座っていたジダンに少し似たカメラマンが、Apple社のPower Bookを取り出しなにやらカタカタやりだした。どうやら写真を選定しているらしい。そしておもむろに立ち上がり、Power Bookを手にPrinceの元へ近づいていった。Princeに画面を見せ、何やら話すカメラマン。すると、PrinceはそのPower Bookをカメラマンから預かり、何やら作業を始めた。結局、着陸態勢に入るまで彼はPCとにらめっこを続けていた。

仙台空港に着陸すると、予想通りPrinceはそそくさと出て行ってしまった。代わりにメンバーは、一般の人たち同様ゆっくりとしたペースで出口に向かっていた。「なりきりスタッフ」の僕もその後ろをゆっくりと歩いていった。

Maceoからサインを貰う女性がいたが、ボールペンでメモ用紙に書いてもらっていた。マジックでCDにサインを貰った僕は、ちょっとだけ勝ち誇ったような気分になった。そんなことで勝ち誇った気分になるんだから、僕も小っぽけな男である。出口を抜けると、カメラを持ったカップルが一組だけ。仙台空港の便の悪さもあって、あまり待っていた人はいないみたいだ。「あとでまた会おう」と心でつぶやき、「にわかストーカー」の御役御免、と思いきや、空港から仙台駅へバスで向かい、そこからホテルまでタクシーを飛ばすと、ホテルロビーに再びメンバーの姿が…これじゃ完全にストーカーじゃねえか。

再びタクシーを飛ばしてZeppSENDAIに向かうと、既に50名ほどが並んでいた。「先に並んでいる」はずのSさん(DIRTYMINDさん)がいない。「おかしいなぁ」と思いながら列の最後尾に座り込む。薄手のフリースとTシャツ一枚でやってきたが、前に並んでいる皆さんはかなり重装備だった。ロッカーに荷物を押し込めれば済む話なのだ。西口にあるホテルの陰に太陽が隠れる。寒い。洒落にならないくらい寒い。
約30分ほども待っただろうか。首に色違いのバンダナを巻いた怪しい3人組が登場。DIRTYさんご一行だった。周囲が好奇の目で彼らを見ているのがわかる。ここまで来たら、別にどんな格好してようが関係ないのだ。実はDIRTYさんご一行のうち、2人は一般での入場となる。その後やってきた「赤パン」ことT君とK君に至っては2nd入場なのだ。昨日の反省を生かし、なるべく右寄りに立ち位置をキープすることや、万が一Princeから指名されても、僕ではなくDIRTYさんがステージに上がること等などを打ち合わせる。(注:前日、札幌でステージに上がったことを知るDIRTYさんは、ステージに上がる気満々だった。)

今回の来日に際し、ネットを通じて知り合った(といっても初対面の方ばかりなのですが)ラヴさんeccoさんに、声を掛けていただく。更に、相当寒そうに見えたのか、カイロまで頂戴する始末。どうやら僕たち、ちょっと場違いで浮いたグループだったみたいで。それにしても本当に寒い。寒さのあまり、ワンカップに手を出す。17時近くなり、ようやく入場が始まる。500円を払いコインとチケットを受け取ると、「1st入場51」番目だった。やっぱり前に並んでいたのは50人くらいだったらしい。持て余した人たちが既にビールやドリンク類を飲み出しているが、ここはグッと我慢…。

会場に入ると、その狭さに驚く。今だからカミングアウトすると、実はZeppSENDAIはもちろんオールスタンディング形式のライブも今回が初めてだった。この会場でPrinceがライブをやるなんて、ちょっと信じられない。でもステージを見ると、スクリーンがない以外は全て昨日のセットがそのまま配置されている。17時30分。2列目に並んだ僕たちは、何の動きもないステージに目をやりながら、僕の前列でJohnと気さくに話すカップルと女性二人の話に耳を傾けていた。でも…僕ほとんど英語わかんないんだよね。

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結局僕たちは、そのカップル(のちに御夫婦と知る。大変失礼しました。)と女性二人と談笑しながらサウンドチェックが始まるのを待った。しかし、待てど暮らせど今日も動きはなく…結局今日もサウンドチェックを見ることなく一般入場が始まった。小腹が空いてきたので「カロリーメイト」一本を口にする。ところが、水分の抜け出した身体には酷だったらしく、固形が僕の口の中の水分を吸収し、一気に喉が詰まりそうになる。このまま倒れるんじゃないか、と頭の隅をよぎる。

お香が焚かれ、緊張の度合いが高まる。そして19時過ぎ、ステージにメンバーが登場。PrinceではなくJohnの素晴らしいドラムからライブは幕を開け、昨日とは全く趣の異なるステージが始まった。とてもシックで、「大人のステージ」みたいな感じ。メンバーも普段着に近い姿で、登場したPrinceは機内で見た時の白い姿のまんまだった。ある程度予想はしていたものの、ほとんど無法地帯状態の1Fオールスタンディング、肘で押し合うわ蹴られるわ、ちょっとした隙間に入り込まれるわ、正直かなりムカついていた。が、時間が経つにつれスペースができ、あとはどうでもよくなった。それにしても背のデカいあの二人、気持ちはわかるけど、隙間を見つけて前に割り込んでくるのは少し遠慮してほしかったよなぁ。後ろの女性、あれじゃ全然ステージ見えないっつうの。

20021122 SENDAI Zepp SENDAI Set List

Jazzy Jam
Xenophobia
Push and Pull
Bambi
Hole Lotta Love
Family Name
Take Me With U
The Everlasting Now
Purple Rain
1+1+1=3
Love Rollercoaster ~ Housequake
The Other Side Of The Pillow
Strange Relationship
Pass The Peas
When U Where Mine
Sign O’ The Times
Gotta Broken Heart Again
The Work pt.1

Encore 1 (We want Prince!)
Pop Life
Anna Stesia-Rise Up
Days Of Wild

Encore 2 (oo wee oh! oo oh!)
Last December (only Prince plays acoustic guitar)

=Member=
John Blackwell on drums
Rhonda Smith on bass
Renato Neto on keyaoards
Maceo Parker and Eric Leeds on saxophone
Greg Boyer on trumpet
DJ Cool
and Prince

今までのツアーと全く異なるのが、日本国内のどの公演を観ても「The Rainbow Chirdren」を演奏しないということはなかったが、今回初めてリストから外れており、ライブハウスを意識したセットリストになっているということ。観客のレベルも(恐らく)全国各地のコアなファンが集まったこともあったせいか、札幌とはまた異なる、一種異様とも言うべき盛り上がりだった。12,000円(2階指定席は13,000円)という高額チケットにもかかわらず、1,500人入場すればよしとする会場に、1,600人集まったというのも驚きだし、それに相応するだけの価値あるライブの内容だったと言えよう。
本編ラストとなった恒例「The Work Pt.1」でのダンス大会では、予言どおりホントにDIRTYMINDさんが指名されちゃうわ(ダイソーにて105円で購入した日の丸扇子が絶大なる効果を現した)、開演前に僕らと談笑していたお二人もステージでクールなダンスを決めるわ、一方で志村けん張りのダンスを披露される方もいてPrinceをビックリさせるわで、とにかく時間が経つのが惜しくて仕方がなかった。終わってみると賞味2時間30分。十分すぎるほど十分である。

今回僕がこのツアーで期待していたことが3つあって、一つはPrinceのPianoで「Sometimes it snows in April」を聴く事。もう一つは、「Raspberry Beret」で「あの」ダンスをやる事。そしてもう一つは、ラストを「Last December」で締めくくる事。前者2つは残念ながら叶わなかったが、まさか最後の最後に「Last December」が聴けるとは思ってもいなかった。

前日札幌と似たような状況(客電が付いた状況)で、ステージを下りたときの左側ではなく右側の袖からアコギを抱えてきた殿下は、おもむろにその曲を奏で出した。ワンコーラスを歌い上げると、「もう行かなきゃ」といってステージを本当に名残惜しそうに後にした。昨日はウルウルして終わったライブであったが、気がついたらグワーッと涙が出てきた。

話によると、Princeはアンコールの「Days Of Wild」でステージの左側から下りたのだが、その後会場の外をグルリと回って(ドリンクコーナーの前を通って)反対側に回ったらしい。だから、左の袖に消えたはずのPrinceが右から登場した、ということらしい。
今回のライブの中でも相当質の高いものであると思われるし、初来日からPrinceを追いかけてきたファンの間でも、「かなり貴重なライブだった」との呼び声が高いようだ。ライブハウス特有のステージとの接近、毛穴も見えそうなPrinceとの距離がファンのボルテージを上げたし、それに見合うだけのファンのレベルだったと思う。超一流のミュージシャンによる超一流の演奏を、あのような会場で堪能することができた僕たちはかなり「幸せ者」だと思う。

この後、一般入場直後に発表され、当初会員限定で行われるとアナウンスされたアフターショーが「中止」になったとアナウンスされる。会場ではJohnがスティックを配布し始め、争奪戦が始まった。結局僕たちはその言葉を鵜呑みにしてZeppを後にしたのだが、実はしっかりアフターは行われていた。「ゲットー」という小さなクラブで行われたらしいのだが、キャパが小さく、VIP Roomもなかったため、DJブースに一瞬陣取ったPrinceはすぐ帰ったそうだ。あとで聞いた話では、「狭いし危ないから行かない方がいい」と言ったのに「俺は行くんだ!」とPrinceが聞かなかったため来店、ということになったそうだ。この辺り、ファンを思いやるPrinceの気持ちは脱帽するほかない。

ちなみに僕たち(青森チーム7名。後に「青森日の丸扇子隊」と命名。)は、同じ国分町の某居酒屋にて「アフターショーと反省会」を行い、3時近くまで大騒ぎしていたワケで…。

翌朝ホテルをチェックアウトしようとロビーに向かうと、John、Rhonda、Gregの姿が。サイン貰おうかなぁと思ったけど、かなり疲れていてとても機嫌がよさそうには見えなかったので、「グンモーニング」とだけ声を掛けてホテルを後にした(ちなみにこの時、JohnがGood Morning!と反応してくれた。ホントいい人だ)。その後外資系CDショップへ足を運ぶと、再びJohnと遭遇。おいおい(苦笑)。

今回初めて同一ツアーで2公演を観る機会に恵まれたのだが、僕が前回観た10年前と比べ、明らかにPrinceは変わっていたと思われる。観客との一体感を心底楽しんでいる雰囲気を感じたのだ。Princeが、我々の下に「降りて」きてくれたと言ってもいいだろう。もちろん、観客の皆さんのレベルも凄いと思った。札幌での一体感、仙台でのうねり、これまでさまざまなライブを見てきたが、どのライブでも体感することのない「感動」を分け与えてもらったような気がする。ある人は、今回のツアーはPrinceによる「実験」だと言う。今までにないチケットの販売システム、これまで考えられなかった中規模会場でのライブ、ジャズの雰囲気すら醸し出しているステージ構成、そして観客とのコミュニケーション、どれを取っても以前のPrinceでは考えられなかったことである。

主催者側も観客側も明らかに混乱していた。しかし時が経つにつれ、我々はその壮大な「実験装置」の上で素晴らしいライブを堪能し、そして素晴らしい「実験結果」を生み出したといってもいいだろう。恐らく、これまでのPrinceファンは更に彼のことが好きになっただろうし、初めて彼のライブを観た観客の中でも彼の虜になった人は多いはずだ。来年ミネアポリスに飛ぶファンは相当増えることでしょう。Princeの「日本好き」はファンのみならず知られたところである(事実、Emancipationのワールドプレミアは日本で行われているし)。今回は6年ぶりの来日となったわけであるが、これに気をよくして是非毎年でも来日して欲しいものである。
本当に素晴らしいライブだった。Prince、ありがとう!

そして2016年4月21日、彼は誰にも別れを告げることなく、独りで旅立ってしまいました。
願わくばもう一度彼のライブを日本で観たい、という念願は叶わないことになりました。
結局僕が彼を生で観たのは、このライブが最後でした。そして、このツアーが日本で行われた最後の公演となりました。

それを差し引いても、今まで国内外のたくさんのアーティストのライブ・コンサートを観てきた中で、この2002年のライブは、これから先も間違いなく僕の中でベスト1位と2位に君臨し続けることでしょう。あなたと同じ時代を共に過ごせて良かった。でも、失ってみて改めてわかったあなたの偉大さに、ただ圧倒されています。本当にありがとうございました。どうか安らかにお眠りください。
R.I.P.