2012年8月20日

社会実験を斜に構えて眺める。

7月15日に引き続き、8月19日、弘前市の「中心市街地」である土手町においてトランジットモールを活用した社会実験が行われた。具体的な内容は、以下のとおり。

【実験内容】
■トランジットモール
トランジットモールとは、バスなどの公共交通以外の一般車両の通行を制限することによって、歩行者や自転車のための空間として開放する街路のことで、安全で快適に街歩きを楽しんでもらおうとする試みです。
今回は中土手町交差点から下土手町交差点までの土手町通りで実施します。
トランジットモールにより車道の一部は歩行者に開放するとともに、広くなった歩道では商店街によるオープンカフェや均一セールの他、はしご車体験やミニSL試乗会などの場に利用され、魅力的で賑わいのある沿道空間となります。

■臨時路上駐車場【無料】
また、土手町に来街しやすいように、隣接する都市計画道路3・3・2号の「弘前郵便局」から「まちなか情報センター」までの片側2車線のうち、各1車線を活用して臨時の無料駐車場を設けます。なお、市役所土手町分庁舎駐車場も併せて開放しますのでぜひご利用ください。

(出典:弘前市都市計画課HPより。下線部は投稿者による。)

この日、午前10時から中土手町~下土手町の一方通行は1車線のみに狭められ、路線バス専用レーンとなった。

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事前に立て看板などで周知はしていたものの、松森町方面から上土手町に向かう通りは断続的に渋滞が続いていた。しかもこの日は、弘前駅前でも交通規制が敷かれていたため、この界隈は結構渋滞が酷かったようだ。

さて、1車線になった中土手町~下土手町の車道には、歩行者や自転車が通行するレーンが設けられ、往来がしやすいようにされたのだが、実際歩いてみると、やはり歩道を意識して歩かざるを得ないというのが正直なところで、車道に設けられたレーンを歩いている人の姿はあまり見られないように思えた。

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ちなみにこの日の弘前市は午前中から気温が33度を超え、午後には今年初めてとなる35度まで気温が上昇、5年ぶりの猛暑日となってしまった。正直、歩行者にとっては安全で快適に街歩きを楽しむというよりは、熱中症にならないよう日陰を求めつつ、一刻も早く涼しい建物の中に入ってしまいたい、という心境だったのではなかろうか。

少なくとも、歩道が広がったことで弘前市の言うような「魅力的で賑わいのある沿道空間」が創出されたかと言えば...。うーん...どうなんだろう。
見た感じでは、店舗によって取組にムラがあるような気がしてならなかった、手厳しい言い方をするならば、賑わい創出という折角の機会にもかかわらず、我関せずの店舗も少なからずあったのではないか、ということだ。

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そしてもう一つ。この社会実験でふと疑問に思ったことが、都市計画道の一部を無料駐車場として開放していることだった。
はて...この道路は、こういう活用を実験するために作られた道路だったのだろうか...。

この道路を含め、土手町を巡る街づくり・活性化に関しては、今から3年前、生意気にもこんなことを書いていたので参考まで。

休憩所(2009年1月20日付け「kacolog from nonvey」より)

この記事の終わりで、今回の実験みたいなことを恒常的にやればよい(砂利道か土の道にして交通量を減らす)、みたいなことも書いてまして...ハイ。

さて。ちょっと斜に構えて。
アクセスを良くするために新しい道路を開通させます、という方便と、賑わいを創出するための社会実験として、一部交通規制して無料駐車場として開放します、という方便。

何だろう、何かが矛盾していないだろうか?

この都市計画道が開通してから8年が経過し、「土手町へのアクセスが良くなった」という声はどれぐらい上がっただろうか。土手町へのアクセスというよりは、単なる「抜け道」になっていないだろうか。少なくとも、車輌にとっては。

昨日も、弘前市の職員なのか、暑い中歩行者からアンケートを集めていたが、本人が目の前で見ている中でのアンケートはなかなか書きづらいものがあり、結局のところ意に反した内容を回答してしまったような気がする。それはともかく、アンケート結果を踏まえ、市としては、そこからどういった賑わいを創出することができる、と導くのか...。

二兎を追う者は一兎をも得ず。

中心市街地の活性化と街づくりは、一見すると分離不可分のようにも思えるが、方法を間違えると、当初の思惑と全く相反する事態を招きかねない。
双方が共倒れになることだって、あり得るだろう。

どの地域にも共通して言えることだが、ハッキリ言って、かつての中心市街地(商店街)に以前のような賑わいを取り戻すことは出来ないと思う。理由は3つ。

(1)そもそも人口が減少していること。
(2)その中にあって商店主が高齢で後継者もなく、事業の継続が困難となっていること。
(3)郊外への商圏の広がりやインターネットの普及により、よほど個性や特色のあるものでない限り、従来型の商売(来るもの拒まず的な殿様商売)では太刀打ちできないこと。

手段や方法さえ間違わなければ、一時の賑わいを創出することができることは、今回の社会実験でも明らかになったはずだ。あとは、それを持続させる方策としてどのような手を打てばよいか。ただ、間違えても、昔のような活況を取り戻すんだ!なんていう意気込みは捨てた方がいいと思う。

10月にもこの社会実験が行われるようだが、この実験から何が明らかにされるのかを、楽しみにして待ちたい。

まさか、「土手町の歩行者の数が増えました。」なんていう実験結果が明らかにされるようでは、この実験は最初から体を為していなかった、とバッサリ斬り捨てたいと思う。



...と、今回はかなり穿った見方をしましたが、個人的には、商圏が郊外に薄く広まってしまった現状に危機感を抱いており、色んな思い出の詰まった土手町の賑わいが損なわれていくこと自体とても悲しく寂しく、何とかならんものか、と切に願っておりますので念のため。

2012年8月10日

新公益法人制度への移行を目指すにあたっての注意点


平成20年12月に公益法人制度改革が行われ、新公益法人制度への移行がスタートしました。これまで、旧民法の規定により設立されていた社団法人・財団法人は、新公益法人三法の施行により「特例民法法人」と位置づけられ、平成25年11月末までに「公益社団・財団法人」又は「一般社団・財団法人」への移行を選択することが迫られ、所管行政庁に対して移行認定又は移行認可の申請を行わなければなりません(移行期間内に申請しなかった場合、「みなし解散」という扱いになる)。

既に制度施行後3年以上が経過し、残すところ1年4か月弱。全国における申請件数が7月末でようやく11,000件近くまで伸びてきたものの、まだ全体の5割にも達していない状況で、今後駆け込みでの申請が大幅に増加することは、火を見るより明らかであると言われています。

青森県に目を転じますと、今年7月末現在で移行認定・移行認可合わせて150件の申請がありました(うち処分済は118件)。これでも、申請を予定している法人全体の4割強と考えられ、今年度だけで150件程度の申請があるのではないかと予想しています。申請のピークは9月から11月頃、これまでの説明会などで「申請から認定・認可までは概ね4か月」というお話をしてきていますので、そこに照準を合わせてくる可能性が高いと考えています。

私事になりますが、これまで2年4か月間にわたりこの制度に携わり、各法人から提出された申請書類の審査を行ってきました。

この間、法人からの申請書類や既に移行した法人の運営状況を拝見して、気づいた点や注意して欲しい点がありますので、今日はそのことについてお話しようと思います。
長くなりそうですが、参考になれば幸いです。

1.申請して、認定・認可を受けることが全てではない。移行後の法人の体制を見据えることが重要。

公益・一般ともに既に移行した法人もじわりじわりと増えつつある中、こちらにも事業報告や公益目的支出計画実施報告等の定期書類が提出されるようになりました。
そのいくつかの内容を見て、ビックリしたことがあります。

というのも、申請時に記載している事業内容や予算と、まるっきり異なる報告がされることがあったからです。
法人に事情を聞くと、「これまでもこういう運営をしていた。」「途中で事業の内容が変わった。」と、これまたビックリするような回答。
では、「これまでこういう運営をして」きた内容をなぜ申請書類に記載しなかったのでしょう。「事業の内容が変わ」る前に変更認定を経なければならないことに、なぜ気づかないのでしょう。
このことから垣間見えるのは、「取りあえず申請さえ通ればいい」という法人側の安易な考え。そして、法令遵守(コンプライアンス)という観点が決定的に欠落しています。
結局これらの案件に関しては、計画の変更に当たるということで、変更の認定申請や認可申請を求めることとなりました。
申請時に適切な事業整理と区分経理を行っていれば、こんな面倒な手間を図る必要がなかったはずなのに...。もっとちゃんと相談してくれればなぁ...と思った事例でした。

2.あっちもこっちも参考にしない。

公益・一般いずれに移行する場合も、「定款変更案」を作成し、機関決議しなければなりません。本県では、内閣府が作成した定款変更案雛形を独自に改訂し、本県版の「定款の変更の案」作成例を示しています。
ところが、こういったことがありました。

「定款変更案を見て欲しい」ということで内容を見てみると、第32条の次に第25条があったり、同じような条文が複数記載されていたり、体裁もさることながら、内容もメチャクチャ。
「すいません、これ、何を参考して作成されましたか。」と伺ったところ、「内閣府の雛形と市販の書籍を2冊。」という回答がありました。
移行手続を勉強する、という思いに駆られ、書籍を購入したところ、それに記載されていた定款変更案を参考に作成してみたが、どうも腑に落ちないところがあり、他の書籍を購入、更には内閣府の雛形があることを知り、それを参考にしてみた...とのこと。
残念ながら、これでは法律等に適合する内容以前のお話し、ということになってしまいます。

定款変更案は、なるべく一つの例を参考にして作成すること。もう一つは、作成した後の案を、複数の人たちで確認すること。
一人で作成し、その人だけが確認した、という変更案には、必ずといっていいほど誤字脱字や漏れが散見されます。

3.最後は行政が何とかしてくれるという考えは捨てる。

法人との打合せの中でたまに耳にするのが、「移行後も面倒を見ていただけるんですよね?」という言葉。正直、この法人に主体性はないのか?と耳を疑ってしまいます。
そもそも新公益法人制度は、「主務官庁の裁量権を排除し、できる限り準則主義に則った認定等を実現することを目的と」したものです。

特に、一般社団・財団法人に移行した場合、公益目的支出計画が終了した時点で行政庁の監督なしで自立的な法人運営をすることが可能となります。また、公益社団・財団法人に移行した場合は、関係法律の厳しい規定はあるものの、基本的にはこちらも自主的に法人運営することが求められます。

移行を審査する側としては、「移行のお手伝いをする」というスタンスで臨んでいますが、法人のガバナンスや説明責任が求められる中にあって、「移行後の法人運営に口を挟む」ことは全く考慮していません。ですから、「民による公益の増進」が最大の目的の一つであるこの制度改革、質問や相談には出来る限り適切に対処していきますが、行政側が面倒を見るということはハッキリ言ってありません。
この点を履き違えないようにしてください。

4.他都道府県が公益法人に移行したから、うちも公益?

「他都道府県で類似の事業を行う法人が公益法人に移行したのだから、貴法人も公益法人に移行できます。」

残念ながら、この新公益法人制度を支援するはずのコンサルタントの方で、こういったことを平気で口にする人がいることを耳にしました。
公益法人に移行するためには、事業の公益性(公益事業を行うという趣旨ではなく、その事業を行うことでどういった公益を生み出すかという趣旨)、会計基準(収支相償、事業比率、遊休財産保有制限等)など、全部で18個の基準を全てクリアすることが求められます。

類似の事業を行う法人と、法人の体系も事業も会計も全く同じだというのであれば、移行も可能でしょう。しかし、理事会や評議員会の構成はもとより、事業規模、事業範囲など、他県と全く同じ法人はないはずです。これをおしなべて横並びにして「他県も移行したからうちも大丈夫」という判断をするのは、あまりに危険すぎます。

5.僕たちは、意地悪をしているのではない。

どこからともなく聞こえてきたのが、「東北6県は審査が厳しい」という声。もう、残念というかガッカリというか、そういう風に見られているんだと思うと、何だか情けなくなってしまいます。
全国的に公益法人への移行の比率が高まる中、青森県は依然として一般法人への移行比率が高く、「行政側が法人に対して公益ではなく一般への移行を誘導しているのでは」と、とある関係誌にも掲載されているのを拝見しました。

木を見て森を見ず、とはこういうことを言うのでしょうね。
本県では、他県と異なり、財団法人化された県立高等学校の後援会が非常に多く(40校以上)、これらの法人は、全て一般法人への移行を進めています。このため、一般への移行比率が高い、というわけです。

確かにこれまで、法人側において不特定多数性や事業の公益性について説明できず、公益から一般法人への移行にシフトしたケースがあるのも事実。しかしそれは、こちらからそうしろ、と言ったワケではありません。数の中には「県がそう言った」と捉える法人もあるのかも知れませんが、公益・一般いずれに移行するのかを最終決定するのはあくまで法人の機関決議によります。

我々としては、できる限り法人の意向に沿うように審査を進めています。その間、明らかに疑義のある点、明らかではないものの不透明な点については、法人側への説明を求めています。もしこれを「意地悪」と捉えられるのであれば、それは本意でありません。
前述の通り、我々は移行後の法人運営を見据えて審査を行っています。裏を返せば、移行後の法人運営が危ういのであれば、当然何らかの対応策を検討することを求めざるを得ません。そしてそれは、決して「意地悪」をしようと思ってしているわけではありませんので、ご理解を。

6.バカ正直で構わない。

先日とある法人と申請に向けた打合せをしていた際、一般正味財産と指定正味財産について質問を受けました。支出計画の実施期間に影響を及ぼすことから、こちらとしても慎重に回答させていただきました。結果、20年と試算していた支出計画の期間は60年に。

適正な経理処理をしていたにもかかわらず、苦虫をかみつぶすような表情で「バカ正直になりすぎたな...」と呟いたご担当者。
私も思わず苦笑いしながら、「バカ正直で構わないんですよ。」とやんわりと制しました。

やましいことを隠そうとしたり、ウソをつくことは、必ず後で綻びが出てくるものです。
むしろ適正な経理処理を行っているんだと、胸を張っていただきたいものです。

7.終わりに

申請の期限まで残すところあと1年4か月。本県ではこの後、200件前後の法人が移行申請してくることが見込まれます。
今後の申請に当たっては、申請の集中する時期にも当たるため、申請から答申決定、認定・認可までの「4か月」という目安の期間ですら怪しいのではないかと考えています。

自分たちではわかりきっていることを活字にして説明することは、簡単なようで意外と難しいものです。意外と先入観が働いて、きちんと説明できないんですね。
私たちも各法人の事業全てを知り尽くしているのであれば多くの説明を求める必要はないのですが、残念ながら全てを知り得ているワケではありません。

今日ご紹介したのは、ほんの一例に過ぎず、法人によって個々の事情はそれぞれ異なります。
ですから、わからないことがあったり疑義が生じた場合は、できる限りゆとりを持って、早めに相談されることを、強くお勧めします。
残すところ1年と4か月。一見するとまだ1年以上もあるように思われますが、その間に理事会や総会、評議員会を何度開催するかを考えると、それほど時間は残されていないはず...。

最後になりますが、くれぐれも、「認定認可を受けるための申請書」づくりを心がけるのではなく、「認定認可を受けた後の法人運営を見据えた申請書」づくりを心がけていただくよう、切にお願いします。

2012年8月 3日

今年はハーフに挑戦します。


健康診断の結果の数値が軒並み異常値を示したのを契機に、5年ほど前からジョギングをはじめ、一昨年前からは10月に弘前市で行われる「弘前・白神アップルマラソン」の10キロにエントリーするようになりました。
レースの結果、39歳で44分台、40歳になると43分台まで記録を縮めることができました...。
自己記録を更新することは、まだこの年齢でも進化することができるんだ、と嬉しい反面、でも何かちょっと違うような気が、とか思ったり...。

この違和感。
元々は人間ドックの数値を改善する、ということを契機にしてジョギングを始めたはず。確かに昨年の人間ドックの結果は、遂に全て「異常なし」でした。
だから、今後もそれを維持できるようにという意識を持ってジョギングを楽しめばいいのに、気づいたら自分との戦いというか一人で勝手にスピードレースに臨んでいる、という状況に。どこかのタイミングで、当初の目的というか目標がどんどん違う方向に向き始めてしまったわけです。

いかんいかん。これではいかん。
まずは、人間ドックではじき出した「オールA」を保つこと。これを目標に、楽しく走ることを目指さないと...。

ということで今年は、既に一部で宣言はしましたが、ついついタイムばかりを気にしてしまう10キロレースを卒業し、ハーフに初めて挑戦してみることにしました。

普段のジョギングでは、概ね週1回、約10~16キロを目安に走っていますが、実走で20キロを超えたことはこれまで3回しかありません。それも、ずっと走り続けているわけではなく、途中で歩いたり休んだりしながら、の話。
ただ、これまでそういう実績は一応あるので、ハーフであっても最後歩いてでも完走だけは出来るのではないかと、甘い考えを持っています。しかし、実は最近履いている靴と相性が悪いらしく、16キロを超える距離を走ると、足裏がどうしようもないぐらいに痛むという...。

まぁ、多分フォームが間違っているか筋肉が落ちているかいずれかなのでしょうけれど、大会まであと約2か月となり、かなり不安があるのも事実です。

とはいうもののこうやって記事にするぐらいなので、一応何らかの宣言はしておかないと。

ということで今回の大会は未知なる領域に足を踏み入れるわけですが、途中休んだり歩くことなく、最後まで走り続けながら、笑ってゴールすることを目標にしたいと思います。できれば、お昼頃までにはゴールしたいかな。心の底から大会を楽しめれば、本望です。