2005年12月 6日

職場で着用しているカーディガンの袖口に、綻びがあるのを発見した。1円玉が入るくらいの大きさだろうか。気づかぬうちに開いていた、小さな穴だった。

...僕は思い切って、その穴に身を投じてみることにした。

ヒュウ〜ッ...ゴォーッ...キーン...

鼓膜に圧力が掛かり、冷たい風が顔を覆う。
周囲はあっという間に闇に包まれ、やがて地面のような場所に全身が叩きつけられた。

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2005年11月 9日

初雪

今朝の最低気温は3度。

最高気温も10度に届かないらしい。

うっすらと白く覆われた山肌。

冷たい風が、鋭利な刃物のように頬を撫でる。

霙交じりの雨は、散弾銃のように身体を打ちつける。

鉛色の空を見上げ、ハーッと息を吐く。

真っ白な息が、冷たい空気と同化した。

身を剥がされ、骨だけになった傘が転がる路上。

朽ちた枯れ葉は雨に打たれ、歩道の上にへばり付く。

コートに身を纏い、いつもより先を急ぐ人々。

路上に横たわる初雪の残骸を踏みしめる。

この街が白く覆われる日も、遠くなさそうだ。

2005年10月27日

僕は小さい頃、満月がとても苦手でした。なぜだかわからないけれど、あのまん丸でヌボーッと現れる満月が苦手でした。トイレの窓から月が見えるのが嫌で、トイレに行くのも躊躇するくらい、苦手でした(満月の日の「おねしょ率」は、かなり高率だったはずです)。多分、前世で月にまつわる何かがあったのでしょう。

月は満ち欠けをします。新月になると、細い月が現れます。

でも、月は元々まん丸。月がホントに細くなったのではなく、大半が陰になっているんですよね。分かりきった話だけど。

そんな月の陰の部分が表舞台に上がるのは、皆既月食の時だけ。

みんなが陰を見ようと、空を見上げます。

でもホントは毎日毎日、明るい月の隣に寄り添っているのに。

丸くなければ月じゃありません。月が満ち欠けをするのも、月が丸いからこそ。

そして陰があるから、月の明るさは際だつのです。

そんな月の陰の部分のような存在でありたいと、ふと思いました。

2005年9月 1日

いくら涙を流しても

涙が枯れることはない

どれだけ涙を流しても

思いが晴れることもない

流した涙は川となり

やがて川は大河となる

大河はいつか海にたどり着く

塩辛い塩辛い海にたどり着く

僕らは涙に流されていく

涙の川に流されていく

やがて大河に飲み込まれ

いつか海にたどり着く

いくら泣いても気づかれず

泣いて泣いて泣き疲れ

そして僕らは果てていく

海の真ん中で果てていく

2005年8月31日

(無題)

このままでは、壊れてしまう。

みんなも俺も、壊れてしまう。

誰にも言えぬこの苦しみ。

誰にも語れぬこの痛み。

このまま日は昇らないのか。

闇の世界に葬られてしまうのか。

いっそ全てをリセットしたい。

非情な現実。

全てが真実。

見えぬ敵の前に無力な俺。

突き進む勇気と引き下がる勇気。

天秤は大きく揺れている。

闇の中に光は、まだ見つからない。