2010年2月 8日

温泉

弘前市周辺には、多数の温泉が湧いている。弘前市内だけ見ても、岩木山の周りにはいろんな泉質の温泉がある。近隣市町村も同様で、単純泉から濃厚な硫黄泉まで、多岐にわたる。

土曜日の弘前は今まで見たことのないような猛吹雪と大雪に襲われ、朝から3度にわたって雪かきをした。日曜の朝も除雪車が残していった置き土産(道路の雪)と家の周りと合わせて、約1時間近く雪かきをした。
かなり身体が冷えた感じ。首と腰も何となく痛い。

妻からの提案もあり、久し振りに温泉に行くことにした(ただし妻は留守番)。
母も行きたいということで母を乗せ、20分程車を走らせる。徐々に雪が深くなり、道幅がどんどん狭くなっていく。集落の中の車のすれ違いも出来ないような生活道路を抜けたところに、その温泉はあった。初めてやって来た温泉だが、母がいなければ絶対に辿り着くことはなかっただろう。
駐車場には既に多くの車が停まっている。ちょうど夕方の時間帯ということもあり、混雑しているのかも知れない。

料金は、一人たった200円。受付に500円玉を置き、「母さん、大人2人分。500円置くからお釣り100円貰うよ」というと、奥に座る婆さんが「あいよ。」と一言だけ。婆さんの周囲には犬がまとわりついているが、犬の可愛さとは対照的に、お世辞にも愛想の良い婆さんではない。
廊下には、無造作に積まれた段ボール。中には野菜とリンゴが置かれている。どうやらこれも、売り物らしい。

建物は結構古く、しかも何だか寒々としている。廊下には待合用のソファがポツンと置かれているが、ここに暖房が入っている気配はない。
「男湯」と書かれた戸を開ける。いきなり目に飛び込んできたのは、目隠しの用を全く為していない番台。このあたりで着替えていれば、女湯の脱衣所が丸見えだ。ただ、農家集落の一角にある温泉は、このあたりの住民の為の温泉と言っても過言ではないのだろう、勿論そんなところで着替えている人はいないし、大体、地元の婆さん達の濁声しか聞こえてこないような脱衣所をわざわざ覗く気にもならない。
脱衣所のロッカーもかなり古く、鄙びている。ロッカーの上を見ると、多くの綿ゴミが散らばっている...(苦笑)。サウナなんて高尚な施設も、もちろんない。

浴場に行くと、これまた綺麗とは言い難い湯船がどーんと一つ鎮座。湯がこれでもかと言わんばかりに溢れている。Lの字に囲むように、10人ほどが座れる洗い場がある。ただし、シャワーがない(笑)。

あれほど車が停まっていたのに、入っていたのは2人だけ。しかもそのうち一人は、既に上がり湯の状態だった(母に聞いたら、女湯の人が結構多かったらしい)。
まずは身体を流し、湯船に浸ってみる。
湯船の前、透明なガラスの向こうには、雲を被った岩木山が日の暮れた中にうっすらと浮かび上がる。

...ちょっと待てよ。

この温泉の前には道路が通っているんじゃなかったっけ?と思った瞬間、スゥッと車が走り抜けていった。
何だよ。これじゃ外から丸見えじゃねえかよ(笑)。

しかも、ザ・ドリフターズの唄ではないが、湯気が天井からポタリと背中に...頭に...肩に...腕に...って、ちょっとポタポタし過ぎなんですけど。

熱めのお湯だと聞いていたのだが、思ったほどではない。僕にとってはちょうどいい湯加減だ。薄い茶褐色を帯びた湯が全身を包み込むと、徐々に肌がつるつるしてくるのがわかる。肩まで浸かったり、上げたりを繰り返すこと数度。徐々に身体の芯が暖まっていく。

男湯と女湯を遮るのは、厚めの磨りガラスのみ。天井は筒抜けだ。女湯からは、婆さん二人の陽気で他愛のない会話が響き渡る。

一方の男湯は寡黙なもので、入れ替わりで客が入ってくるのだが、僕以外はみんな、既に還暦を迎えてから結構経っていそうな人ばかりだ。

シャワーのない洗い場で苦戦しながら、全身を洗い流す。

最後に入ってきたオッサンは、どうやら先客と近所の知り合いらしい。土日は作業(仕事)を休んで雪かきに追われたこと、屋根雪は危険だったので下ろさなかったことなどを、もう一人のオッサンとともにああだこうだと談笑している。湯船から上がると、僕の隣に座っていたオッサンから突然話しかけられる。
「あのデッタダトヨタの車、オメのダガ?(あの大きいトヨタの車、お前のか?)」
「いや、さっき上がった父さんのヤツでネガ?」
「あ、んだが...。」

その後オッサンたちは車の会話から外れ、政治の話やらいろんな話に花を咲かせている。
僕はニヤニヤしながら、その会話に聞き耳を立てる。
何の脈絡のない会話。でも、こういうところにある温泉は、見ず知らずの人たちとのコミュニケーションを当たり前のように成立させてしまう不思議な作用をもたらす。

湯浴みを終え、脱衣所へ。身体が熱を帯びてポカポカしている。湯冷めに注意しなければならない。しかし、思った以上に早く汗が引いていった。かといって身体が冷えているわけではない。

ソファには、母が腰掛けていた。
「あ、ゴメン。待った?」
「いや。2、3分かな。」
手にはジャガイモの袋が2つ。
「これ?一つ100円だって。」
嬉々としながら車に乗り込む母。

弘前市内にはこんな隠れた名湯がたくさんある。

新岡温泉

施設の概要
住所:青森県弘前市大字新岡字萩流161-12
電話:0172-82-4521
FAX:0172-82-2999
営業時間:日帰入浴6:00〜21:00
駐車場:15 台
入浴料金:大人200円

温泉の効能
リウマチ性疾患、運動器障害、卵巣機能不全症、更年期障害、月経障害、やけど、切り傷、慢性消化器病、疲労回復

源泉名
新岡温泉

主泉質/成分
ナトリウム塩化物・炭酸水素塩泉

泉温
源泉47.3℃  温度43〜44℃

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