2010年3月 2日

今日の名盤

尾崎豊『17歳の地図』『回帰線』

僕が本格的に音楽を聴くようになったのは、中学2年生の頃からだ。当時、同級生に一人だけ洋楽好きなヤツがいて、僕は彼からいろんな影響を受けることになった。そのこともあって、洋楽邦楽問わず、貪るように音楽を聴くようになった。

とはいえ耳にするのはメジャーな音楽ばかりであり、マドンナにマイケル・ジャクソン、スティービー・ワンダーにa-ha、ワム!にヒューイ・ルイス&ザ・ニュース等々...。「パープル・レイン」が大ヒットしていたにも関わらず、見た目の気持ち悪さも相まって、プリンスだけは全く聴く気にならなかったが...。

一方の邦楽はといえば、取りあえずチャートに出てくるような音楽は、一通り友人からカセットやレコードを借り、自宅でダビングして聴くようになっていた。

その中で、今でも忘れられない出来事がある。
中学3年の秋のこと。僕の机の中には、友人に貸していた一本のカセットテープがひっそりと隠されていた。90分テープのそのカセットテープのタイトルには「尾崎豊/17歳の地図・回帰線」と書かれていた。
ところがその日の放課後、ホームルームの最中に事件は起きた。担任教師が突然持ち物検査を始めると言い出したのだ。哀れカセットテープは、どこかに隠す直前に担任に発見されてしまった。

「何だこれは?何で受験前の大事な時期にこんなものがお前の机に入っているんだ?」
机の中からカセットテープを取り上げられた途端、頭の中が真っ白になった。タイトルを見るなり、顔色がどんどん紅潮していく担任教師。

「お前、ちょっと廊下に出ろ!」
何が起きたのかわからず、ざわめき立つ教室内。

僕を廊下に連れ出した担任教師は、静かに、しかし明らかに怒りの籠もった口調で切り出した。
「これは誰のものだ。」

紛れもなく、僕のものだった。
「僕のものです。」

「お前...。本当にお前のものなのか。」
担任の声は、落胆にも近い声色に変わった。

「はい。」
キッパリと答える僕。
「いいか。これは、お前が聴くような音楽ではないんだ。わかるか?受験が終わるまで預かっておく!教室に入れ。」
何故教師が怒りに満ちあふれているのか、その理由が僕にはわからなかった。

中学校時代、それなりに成績上位にいた僕は、担任を始め学年の先生から「優等生扱い」されていた。実際自分が優等生だったのかどうかはわからない。ただ、先生からの受けは良く、親の顔も潰したくないという思いから、その「受け」や「期待」に応えようとしていたのは紛れもない事実だ。

当時僕は、別に尾崎豊の音楽に深い思い入れがあるわけでもなく、憧れを抱いていたわけでもなかった。ただ単に「声が格好いい」「耳になじむ音楽だ」とだけ思って聴いていただけのことだった。
例えば「卒業」に出てくるように、夜の校舎の窓ガラスを壊して回ろうなんて微塵も思わなかったし、「15の夜」に出てくるように、行く先もわからぬままバイクを盗んで走り出すようなこともなかった。

いわば「興味本位」で聴いていた音楽。ただ、担任教師の逆鱗に軽く触れたらしい。
ただ、僕には解せなかった。「お前が聴くような音楽ではない...?」

その2日後、再び担任から職員室に呼ばれた僕は、理由も聞かされぬままカセットテープを返却して貰った。その日、返却されたカセットテープを延々と聴きながら、担任の発した言葉の意味を探した。
「お前が聴くような音楽ではない...。」

どうしても、腑に落ちなかった。そして、勝手に一つの結論に達した。
「お前に言われる筋合いもない。」

結局僕は何事もなく無事に中学を卒業し、志望していた地元の高校に入学。
その後の遍歴については、知っている人も多いので割愛(笑)。

明後日、青森県内は県立高校の受験を迎える。僕の親戚にも今年受験生がいるのだが、これまで蓄積した力を全て出し切ることが出来るよう願うだけだ。
受験生諸君、頑張れ!

さて、尾崎豊が亡くなって、もうすぐ18年目の春がやってくる。
彼の命日を迎える頃、弘前の桜がほころび始める。
僕は一体、どんな春を迎えるのだろう。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://nonvey.oops.jp/cgi/mt/mt-tb.cgi/1108

コメントする