2012年11月23日

10年前、2002年11月22日、仙台での出来事。

昨日の続き。
こちらも古いサーバーに残っていた内容。改めて読み返すと、いかに自分が興奮していたかがわかります。では、10年前にタイムスリップ...

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11月22日(金)。8時に目が覚める。降り続いた雪は止んだようだ。再び札幌駅から移動し、新千歳空港11時45分発の全日空722便仙台行きに乗り込むわけだが、前日の興奮冷めやらぬ僕、何を血迷ったか9時過ぎにチェックアウト、9時25分発の新千歳空港行き快速に乗り込んでしまった。

「あ、充電器忘れた...」
昨日朝から晩まで酷使した携帯電話の充電器をホテルに忘れたことに気づく。まぁ、前の機種のヤツだからいいか...どうせ同じヤツあるし...と諦め、10時に空港に到着。逆算しても、あと1時間30分を空港で過ごさなければならない。とりあえず、チケットを受け取り、1階到着ロビーの脇にあるファーストフードにて朝食を兼ねて時間を潰す。しかし、結局30分しか持たなかった。「しょうがないか...」と搭乗ゲートに向かう。

「キンコ~ン」

お約束の反応...。はいはい好きにしてくださいな。外を見るとほとんど雪もなく、雲の切れ間から青空が見える。札幌とは別風景だ。6番搭乗口に向かい、椅子に腰掛けると同時に睡魔が襲う。普段の平均睡眠時間7時間の僕としては、この睡眠時間は結構辛いものがある。うとうとしながら時計を見ると、11時だった。「あと30分か...」

とその時、一人の外人がペロペロとソフトクリームを舐めながら僕の側を通った。

「...ん?」

慌てて後ろを振り返ると、そこには...。

ソフトクリームおじさんは、何とEric Leeds!そして、僕のすぐ後ろにはPrinceを除くバンドメンバー全員が座っていたのだ!一発勝負が見事的中した。当初、朝一番の便で仙台に向かい、早い時間からZepp SENDAIに並ぶことも考えたのだが、Princeと一緒の空の旅を楽しめるかも...ということで移動時間を予測し、この便に照準を合わせておいたのだ。更に、恐らくこのような大物アーティストは最後に搭乗し、最初に飛行機から降りるに違いないから、前の方に座るはずと予想し、事前になるべく前の座席を指定していたのである。

「こ、これは何とかせにゃいかん!」

ふと、出発前にどういうつもりかカバンにマジックを忍ばせておいたことを思い出した。あとは、何に書いてもらうか...あ!CD!昨日購入したDays Of WildのCDを取り出す。これだぁ~!!と自分の豊かな発想力に感謝する。
しかし、貧困なボキャブラリが災いして、英語が出てこない。ええと...「ク、クッジューギヴミーユアサインプリーズ?(Could you give me your sign,please?)」
合ってるのか間違いなのかは定かではないが、とりあえず意味は伝わるはずだ。
何度も口の中で反復し、Ericに近づく。
「エ、エクスキューズミー、ミスターエリック?」
「Ya.」
「ク、クッジューサインプリーズ?(練習の成果全くなし)」

...とマジックとCDを差し出す。するとEricは「Oh!Ya!」といって僕からマジックとCDを受け取り、すらすらとサインしてくれたのだ。う、うおぉぉぉぉぉぉ!!!

緊張と興奮で手が震え、「サ、サンキューベリーマッチ」というのが精一杯。Ericはニコニコしながら荷物のある方へ向かった。よぉし。ここまで来たら、貰える分もらってやるぅ。
野望が生まれ、あとはタイミングを待つ。ところがご一行様、ガードの堅さもさることながら、なかなか近寄りがたい雰囲気を醸し出している。何も知らずに口を半開きにして彼らの隣で寝ているサラリーマンが羨ましかった。Maceoが立った!チャンス!再びマジックとCDを持ってアタック。「ク、クッジューサインプリーズ?」するとMaceoは何も言わずに僕からマジックとCDを受け取り、どこに書こうかなぁ、という表情を浮かべながら、「Maceo」と記してくれたのだ!嗚呼、もう一生モノの家宝!ありがとう、EricそしてMaceo!

11時35分。飛行機への搭乗案内が始まる。き、きっとPrinceも現れるに違いない...。メンバーの様子を窺うが、そんな素振りすらない。こりゃ別便かなぁ。ふと見るとメンバー始め大半の客が既に搭乗しようとしている。客室添乗員とのやりとりか、トランシーバーからは「あと6人です」と聞こえてくる。「ダメか」と思いチケットを通し、飛行機へ向かう。
ふと後ろを見ると...デカイ黒人ボディガードの後ろから、紛れもなくPrinceが歩いて来る!白いニットキャップに白の衣装を身に纏っている。思わずガッツポーズ。
「や、やった!!!」

歩く歩調を緩めるが、向こうもこちら(=一般客)の動向を窺っているような感じだった。結局僕とPrinceの距離は約5mほど離れたまま、飛行機に搭乗することになった。

僕の座席は「8E」である。機内は通路が2本あり、左の窓側からA,B列、通路を挟んでC,D,E列、そしてまた通路を挟んでF,G列となっている(すいません、座席表があればわかりやすかったんですが、ちょっと見つけられなくて...)。とにかく、僕の予想は大当たりだった。昨日嫌な予感ばかり的中したことなんぞ全て吹っ飛んだ。そして自分の強運に感謝した。
と同時に、ここで全ての運を使い果たさないよう祈った。既に座っているメンバーの席は予想通り「8」列より前であるが、全日空には「6」列がないため、実質僕の席から最前列までは6列(1~5,7)しかないことになる。Maceoは2列目、Ericは3列目、Rhondaは4列目に座っており、僕のすぐ前には興行の関係者と思しき4名が座っていた。Princeはどこに...と思ったら、奥さんが1Fに、そしてPrinceは1Gに座った。同じ通路側で、ちょうど僕の席から、白いニットキャップを被った彼の頭がちょこんと見える。すっかり眠気が覚めた。これから1時間10分、Princeはじめバンドメンバーとともに、仙台を目指すのだ。「こっち向いてくれないかなぁ」と思ったが、一向にこちらを向く気配はない。

機内では、ちょっとしたハプニングが発生した。荷物が多かったため、Rhondaと一緒に座っている女性(マネージャーなのかよくわかりませんが、以下「マネージャー」と呼びます。)の荷物は通路を挟んだ僕の隣の女性の真上にあった。程なく、女性がしきりに頭や服を拭いている。「どうしたんだろう...」と思いきや、スチュワーデスを呼び一言「上から何か水みたいなものが落ちてくる」。
スチュワーデスがバケットを開けて確認すると、女性マネージャーのものらしい荷物から何か垂れていた。日本人関係者がスチュワーデスに呼ばれ、何やら話をしている。耳をダンボにして聞いていると、液体の正体はシャンプーらしい。結局被服の濡れた女性は空いている席へ移動し、マネージャーの荷物からシャンプーの瓶が取り出された。心配そうな表情を浮かべるRhondaの顔が印象的だった。前の座席では、明らかにホテルの部屋割りと思われるファックス用紙を見ながら、担当者がああでもないこうでもないとやっていた。視力2.0の僕、必死に目を凝らすと、「ホテルS」の文字が。
「やっぱり...。」

ライブの後仙台市郊外の秋保(あきう)温泉に湯治に向かったクラプトンは別として、ホテルSといえば多くのアーティストが宿泊する御用達の宿である。ちなみに僕もこのホテルに今日の宿泊予約を入れていた。更に目を凝らす。「10・11・12・14」の部屋が見える(ホテルSには13階がないのです)。そして、「14階」の部屋すべてに○やら△が書き込まれていた。「14階に泊まるのか...」。ふと、もう一人の関係者が、「ホテルN」と書かれた領収書らしきものを取り出した。どうやら、在京の際はホテルNに宿泊していることが明らかになった。とその時、Rhondaとマネージャーが大声を上げて笑い出し、メンバーも手を口で塞いで笑いをこらえているのがわかった。スクリーンを見ると、世界の芸人たちを集めたVTRが流れており、その時登場していたのが、黄色い巨大風船をふくらまし、更に自分の身体をその中にすっぽり入れ、ピョンピョン飛び回るおじさんの姿だった。その動きがあまりに滑稽で、僕も笑いをこらえるのに必死だったのだが、その時Princeがニヤニヤしながら後ろを振り返った。「おぉ~!Princeも笑ってる笑ってるぅ!」みたいな。

結局、彼が後ろを振り向いたのはこの一度だけだったが、僕にとってはなんとも言えぬ至福の時間を味わったのである。ほんの少しだけストーカーの気持ちがわかったような気がした(笑)。

その後、5Aに座っていたジダンに少し似たカメラマンが、Apple社のPower Bookを取り出しなにやらカタカタやりだした。どうやら写真を選定しているらしい。そしておもむろに立ち上がり、Power Bookを手にPrinceの元へ近づいていった。Princeに画面を見せ、何やら話すカメラマン。すると、PrinceはそのPower Bookをカメラマンから預かり、何やら作業を始めた。「ふぅん...PrinceはMacユーザーなのか...」どちらかといえば日本ではマイノリティ扱いされるMacユーザーであるが、PrinceもMacユーザーなんだ...と感心しきり。結局、着陸態勢に入るまで彼はPCとにらめっこを続けていた。

仙台空港に着陸すると、予想通りPrinceはそそくさと出て行ってしまった。代わりにメンバーは、一般の人たち同様ゆっくりとしたペースで出口に向かっていた。「なりきりスタッフ」の僕もその後ろをゆっくりと歩いていった。
Maceoからサインを貰う女性がいたが、ボールペンでメモ用紙に書いてもらっていた。マジックでCDにサインを貰った僕は、ちょっとだけ勝ち誇ったような気分になった。そんなことで勝ち誇った気分になるんだから、僕も小っぽけな男である。
出口を抜けると、カメラを持ったカップルが一組だけ。仙台空港の便の悪さもあって、あまり待っていた人はいないみたいだ。「あとでまた会おう」と心でつぶやき、「にわかストーカー」の御役御免、と思いきや、空港から仙台駅へバスで向かい、そこからホテルまでタクシーを飛ばすと、ホテルロビーに再びメンバーの姿が...あはは(^^;;;;

再びタクシーを飛ばしてZepp SENDAIに向かうと、既に50名ほどが並んでいた。「先に並んでいる」はずのSさん(DIRTYMINDさん)がいない。「おかしいなぁ」と思いながら列の最後尾に座り込む。薄手のフリースとTシャツ一枚でやってきたが、前に並んでいる皆さんはかなり重装備だった。ロッカーに荷物を押し込めれば済む話なのだ。西口にあるホテルの陰に太陽が隠れる。寒い。洒落にならないくらい寒い。
約30分ほども待っただろうか。首に色違いのバンダナを巻いた怪しい3人組が登場。DIRTYさんご一行だった。周囲が好奇の目で彼らを見ているのがわかる。ここまで来たら、別にどんな格好してようが関係ないのだ。実はDIRTYさんご一行のうち、2人は一般での入場となる。さらに、その後遅れてやってきた「赤パン」ことT君とK君に至っては2nd入場なのだ。昨日の反省を生かし、なるべく右寄りに立ち位置をキープすることや、仮にPrinceから指名されても、僕ではなくDIRTYさんがステージに上がること等などを打ち合わせる。ネットを通じて知り合った(といっても初対面の方ばかりなのですが)ラヴさんeccoさんに、声を掛けていただく。更に、相当寒そうに見えたのか、カイロまで頂戴する始末。どうやら僕たち、ちょっと場違いで浮いたグループだったみたいで。

それにしても本当に寒い。寒さのあまり、ワンカップに手を出す。17時近くになり、ようやく入場が始まる。500円を払いコインとチケットを受け取ると、「1st入場51」番目だった。やっぱり前に並んでいたのは50人くらいだったらしい。持て余した人たちが既にビールやドリンク類を飲みだしているが、ここはグッと我慢...。
会場に入ると、その狭さに驚く。実はZeppSENDAIはもちろん、オールスタンディング形式のライブも今回が初めてだった。この会場でPrinceがライブをやるなんて、ちょっと信じられない。でもステージを見ると、スクリーンがない以外は全て昨日のセットがそのまま配置されている。

17時30分。2列目に並んだ僕たちは、何の動きもないステージに目をやりながら、僕の前列でJohnと気さくに話すカップルと女性二人の話に耳を傾けていた。でも...僕、ほとんど英語わかんないんだよね。

結局僕たちは、そのカップル(のちに御夫婦と知る。大変失礼しました。)と女性二人と談笑しながらSCが始まるのを待った。しかし、待てど暮らせど今日も動きはなく...結局今日もSCを見ることなく一般入場が始まった。小腹が空いてきたので「カロリーメイト」一本を口にする。ところが、水分の抜け出した身体には酷だったらしく、固形が僕の口の中の水分を吸収し、一気に喉が詰まりそうになる。このまま倒れるんじゃないか、と頭の隅をよぎる。

お香が焚かれ、緊張の度合いが高まる。そして19時過ぎ、ステージにメンバーが登場。PrinceではなくJohnの素晴らしいドラムからライブは幕を開け、昨日とは全く趣の異なるステージが始まった。とてもシックで、「大人のステージ」みたいな感じ。メンバーも普段着に近い姿で、登場したPrinceは機内で見た時の姿のまんまだった。ある程度予想はしていたものの、ほとんど無法地帯状態の1Fオールスタンディング、肘で押し合うわ蹴られるわ、ちょっとした隙間に入り込まれるわ、正直かなりムカついていた。が、時間が経つにつれスペースができ、あとはどうでもよくなった。それにしても背のデカいあの二人、気持ちはわかるけど、隙間を見つけて前に割り込んでくるのは少し遠慮してほしかったよなぁ。後ろの女性、あれじゃ全然ステージ見えないっつうの。

021122 SENDAI Zepp SENDAI Set List

Jazzy Jam
Xenophobia
Push and Pull
Bambi
Hole Lotta Love
Family Name
Take Me With U
The Everlasting Now
Purple Rain
1+1+1=3
Love Rollercoaster ~ Housequake
The Other Side Of The Pillow
Strange Relationship
Pass The Peas
When U Where Mine
Sign O' The Times
Gotta Broken Heart Again
The Work pt.1

Encore 1 (We want Prince!)
Pop Life
Anna Stesia-Rise Up
Days Of Wild

Encore 2 (oo wee oh! oo oh!)
Last December (only Prince plays acoustic guitar)

=Member=
John Blackwell on drums
Rhonda Smith on bass
Renato Neto on keyaoards
Maceo Parker and Eric Leeds on saxophone
Greg Boyer on trumpet
DJ Cool
and Prince

今までのツアーと全く異なるのが、2nd Stageを除いたどの公演を観ても「The Rainbow Chirdren」を演奏しないということはなかったが、今回初めてリストから外れており、明らかにライブハウスを意識したセットリストになっているということ。観客のレベルも全国各地のコアなファンが集まったこともあったせいか、これまで見たことのない異常とも言うべき盛り上がりだった。12,000円(2階指定席は13,000円)という高額チケットにもかかわらず、1,500人入場すればよしとする会場に、1,600人集まったというのも驚きだし、それに相応するだけの価値あるライブの内容だったと言えよう。
本編ラストとなった恒例「The Work Pt.1」でのダンス大会では、予言どおりホントにDIRTYMINDさんが指名されちゃうわ(ダイソーにて105円で購入した日の丸扇子が絶大なる効果をあらわした)、開演前に談笑していた二人(出美知る兄さんとけろりーぬさん)もステージでクールなダンスを決めるわ、一方で志村けん張りのダンスを披露される方もいてPrinceをビックリさせるわで、とにかく時間が経つのが惜しくて仕方がなかった。終わってみると賞味2時間30分。十分すぎるほど十分である。実は今回僕がこのツアーで期待していたことが3つあって、一つはPrinceのPianoで「Sometimes it snows in April」を聴く事。もう一つは、「Raspberry Beret」で「あの」ダンスをやる事。そしてもう一つは、ラストを「Last December」で締めくくる事。前者2つは残念ながら叶わなかったが、まさか最後の最後に「Last December」が聴けるとは思ってもいなかった。前日札幌と似たような状況(客電が付いた状況)で、突如アコギを抱えてきた殿下は、おもむろにその曲を奏で出した。ワンコーラスを歌い上げると、「もう行かなきゃ」といってステージを本当に名残惜しそうに後にした。昨日はウルウルして終わったライブであったが、気がついたらグワーッと涙が出てきた。
話によると、Princeはアンコールの「Days Of Wild」でステージを後にし、その後会場をグルリと回って(ドリンクコーナーを通って)反対側に回ったらしい。だから、左の袖に消えたはずのPrinceが右から登場した、ということらしい。
今回のライブの中でも、かなり質の高いものであると思われるし、初来日からPrinceを追いかけてきたファンの間でも、「かなり貴重なライブだった」との呼び声が高いようだ。ライブハウス特有のステージとの接近、毛穴も見えそうなPrinceとの距離がファンのボルテージを上げたし、それに見合うだけのファンのレベルだったと思う。超一流のミュージシャンによる超一流の演奏を、あのような会場で堪能することができた僕たちはかなり「幸せ者」だと思う。

この後、一般入場直後に発表され、当初会員限定で行われるとアナウンスされたアフターショーが「中止」になったとアナウンスされる。会場ではJohnがスティックを配布し始め、争奪戦が始まった。結局僕たちはその言葉を鵜呑みにしてZeppを後にしたのだが、実はしっかりアフターは行われていた。「ゲットー」という小さなクラブで行われたらしいのだが、キャパが小さく、VIP Roomもなかったため、DJブースに一瞬陣取ったPrinceはすぐ帰ったそうだ。あとで聞いた話では、「狭いし危ないから行かない方がいい」と言ったのに「俺は行くんだ!」とPrinceが聞かなかったため来店、ということになったそうだ。この辺り、ファンを思いやるPrinceの気持ちは脱帽するほかない。
ちなみに僕たち(青森チーム7名)は、同じ国分町の某居酒屋にて「アフターショーと反省会」を行い、3時近くまで大騒ぎしていたワケで...。

翌朝ホテルをチェックアウトしようとロビーに向かうと、John、Rhonda、Gregの姿が。サイン貰おうかなぁと思ったけど、かなり疲れていてとても機嫌がよさそうには見えなかったので、「グンモーニング」とだけ声を掛けてホテルを後にした(ちなみにこの時、JohnがGood Morning!と反応してくれた。ホントいい人だ)。その後外資系CDショップへ足を運ぶと、再びJohnと遭遇。おいおい(苦笑)。

今回初めて同一ツアーで2公演を観る機会に恵まれたのだが、僕が前回観た10年前と比べ、明らかにPrinceは変わっていたと思われる。つまり、観客を無理に引っ張るという強引さが薄れ、観客との一体感を楽しんでいる雰囲気を感じたのだ。Princeが、我々の下に「降りて」きてくれたと言ってもいいだろう。もちろん、観客の皆さんのレベルも凄いと思った。札幌での一体感、仙台でのうねり、これまでさまざまなライブを見てきたが、どのライブでも体感することのない「感動」を分け与えてもらったような気がする。ある人は、今回のツアーはPrinceによる「実験」だと言う。今までにないチケットの販売システム、これまで考えられなかった中規模会場でのライブ、ジャズの雰囲気すら醸し出しているステージ構成、そして観客とのコミュニケーション、どれを取っても以前のPrinceでは考えられなかったことである。主催者側も観客側も明らかに混乱していた。しかし時がたつにつれ、我々はその壮大な「実験装置」の上で素晴らしいライブを堪能し、そして素晴らしい「実験結果」を生み出したといってもいいだろう。恐らく、これまでのPrinceファンは更に彼のことが好きになっただろうし、初めて彼のライブを観た観客の中でも彼の虜になった人は多いはずだ。来年ミネアポリスに飛ぶファンは相当増えることでしょう。Princeの「日本好き」はファンのみならず知られたところである(事実、Emancipationのワールドプレミアは日本で行われているし)。今回は6年ぶりの来日となったわけであるが、これに気をよくして是非毎年でも来日して欲しいものである。
本当に素晴らしいライブだった。ありがとう。

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当時我々を熱狂させたZepp SENDAIのあった場所は、先月山形への出張から戻る際、乗換時間があったので立ち寄ってみたら、跡形もなく更地になっていました。時代の流れ、といえばそれまでですが、当時のことを色々思い出し、何か感慨に耽ってしまいました。

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2012年11月22日

10年前、2002年11月21日、札幌での出来事。

てっきりなくなっていたと思っていたデータが、以前利用していたサーバーにまだ残っていました。

今からちょうど10年前、札幌での出来事。一生忘れられない出来事。
当時書き上げていた修士論文より読み応えがあると思っています(笑)。

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11月21日(木)。緊張と興奮からよく眠れぬまま、その日の朝を迎えた。天気予報は「雨のち雪」。天気図の狭まった等圧線が西高東低の天気を示している。風が強いため、濃霧による欠航ということはなさそうだ。これから青森空港へ向かい、空路札幌入りする。外に出ると、やや強めの雨が降っていた。弘前から10時15分発の空港連絡バスに乗り、一路青森空港へ。空港へ近づくにつれ、雨は大粒の雪に変わっていた。

11時15分ごろ空港へ到着すると、出発ロビーには人が溢れ返っていた。この光景、東北新幹線が八戸まで延伸してもほとんど変わらないのではないだろうか。青森から新千歳へ向かう便は、新千歳からの折り返しとなる便なのだが、到着が遅れたため12時15分離陸の予定が、12時20分になるというアナウンスが流れる。「何てこった...」。はやる気持ちを抑えきれず、手荷物検査場へ急ぐ。

「キンコ~ン」。

お約束のように金属探知機が鳴る。僕が飛行機を利用する3度に1度はかならず反応が出るのだ。「恐れ入ります。時計、カギなどお持ちでありませんか?」思わず「金ならここに」と股間に指差ししそうになる。こんなところで冗談言ってる場合じゃない。とにかく急いでいるのだ。

結局ベルトが原因とわかり、無罪放免。搭乗待合室から外をみると、降り出した雪がどんどんあたりを白くしていくのがわかる。「やばいなぁ。離陸できるのかなぁ」一抹の不安が頭をよぎる。「お待たせしました。札幌便ご搭乗の方は2番ゲートへお進みください」ゲートをくぐり、機内へ向かう。ふと外を見ると、物凄い数の除雪車が出動中。

「いやな予感...」

やはり僕の嫌な予感は的中した。2500メートルの滑走路に一気に積もった雪を除雪する作業のため、離陸が12時45分頃になるという。機内は、7割方席が埋まっていた。気がつくと、僕の足は小刻みに貧乏ゆすりを続けていた。

そして12時45分、「時間どおりに」離陸―

新千歳空港までの所要時間は離陸から約30分少々である。この日、僕の悪い予感はことごとく的中。天気が悪いので揺れるだろうと思っていたら、着陸体制に入ったとたんガガガガァと激しい揺れに見舞われる。あとは無事着陸することを願うしかない...と思ったら、あっけなく滑走路に滑り込んだ。まさかバス移動では...と思ったら、予想通り飛行機は直接ターミナルに向かわず、バスで移動する羽目となった。「ま、しょうがないか...」

とりあえず到着した旨を札幌在住のD君に携帯電話で伝える。ここから札幌までは、JRを利用する。聞くと現在15分間隔の運行。時計を見ると、次の出発まで5分を切っている。ここでの15分はあまりに痛いと考えた僕は、なりふりかまわず新千歳空港駅へ向かうエスカレーターを駆け下りた。2分前に無事乗車、ラッキーなことに一人がけの座席を発見し座る。あとは、札幌に到着するのを待つばかりだ。

35分後札幌駅到着。出迎えてくれたのは一面の銀世界だった。路面は早くも凍結状態で、すっかり冬の装いである。僕が宿泊したのは札幌駅前にあるTホテル。12月14日で諸事情により閉館のこのホテル、インターネットで偶然5,000円であることを見つけ、即決したホテルである。とはいえ実は札幌のホテル事情はかなり良好で、ここより安くて新しいホテルがあるのを知ったのは、帰宅してからだった。

シングルなのにツインの部屋を用意してもらい、少しくつろぐ。前日、ちゃんと眠れなかったために睡魔に襲われるが、D君との待ち合わせ時間が迫っていたために部屋をあとにする。外気がキンキンに冷えることを「しばれる」というのだが、札幌はバッチリ「しばれ」ていた。

D君と合流し、北海道厚生年金へ向かう。ボジョレーヌーボー解禁日ということで、時間潰しのためにとD君がボジョレーを持ってきてくれたのだが、結局最後まで飲む機会はなかった。いや正確に言うと、2人とも約10年ぶりに彼のライブを堪能できるとあって、クールを装ってはいるものの内心バックバクで、それどころではなかったのかもしれない。

約20分近く歩いたのだろうか。まもなく厚生年金到着、と思ったその時、ふと目をやると、厚生年金の隣にあるホテルRの裏口に、「リムジン(もちろんキャデラック)」が停まっていた。ひょ、ひょっとして?と思わず二人とも足を止める。と、助手席に黒人(あとでPrinceのボディガードであることを知った)を乗せたそのリムジンはこちらに向かってゆっくり動き出し、ホテルの支配人や社員の方々が深々と頭を下げる。「こ、これってPrince乗ってるのか...?」と思ったその時、黒のスモークガラスの向こう側に、明らかに「彼」と思われる姿が。「お、おぉぉぉ!!」と思わず奇声を発する二人。意味もなく手など振ってみるが、全く反応はない。本当にすぐそこまでの距離なのに、なぜか信号で停止したりして、意外とゆっくりしたスピードで進んでいるため、すぐに追いつく。しかし、何もできない二人。結局そのまま、隣の厚生年金裏口にゆっくりとリムジンが消えていった。

15時30分頃厚生年金に到着すると、約30名ほどのNPGMC会員が既に列を作っていた。さすがに会場外では風邪をひいてしまうという配慮からか、既にロビーで待つ段取りが整えられていた。名前を告げ、封筒を貰う。ふと脇には、都はるみや角松敏生、さらにはワハハ本舗の公演ポスターが貼られていた。こういう会場でPrinceがライブを行うということに関しては、二つの考えが浮かぶ。一つは、観客動員が落ち込んだために、致し方なく会場を狭くしたこと。もう一つは、敢えて狭い会場にすることで、ファンとの距離を縮めること。実は来日前まで僕は、前者の考え方だったのであるが、東京での各公演、浜松での公演内容を知るうちに、Princeは明らかに後者の考えを持って公演に臨んでいることを確信していた。座席表に目をやり人数を数え、自分の座席がどのあたりになるのかを計算。これから起こる10年ぶりの再会に心躍らせながら、静かにその時を待つ。

スタッフの事前説明によると、ステージ上椅子が並べられてあるので、順番に座ってもらい、そこでサウンドチェックを楽しんでもらうということ、ステージ上からメンバーが下がるまで、椅子を立たないで欲しいということなど、いくつかの注意が与えられる。そして16時30分頃、突如ホールのドアが開く。順番に入場すると、紫色のステージに薄暗く煙が立ち込めていた(ように見えたのは気のせい?)。ところがステージ上に椅子はない。前に並んでいた人たちは、客席の右寄りに席をキープし、僕らはその理由もよくわからぬまま、とりあえず中央から左寄り最前列に座席を確保した。それにしても、この客席とステージの「間」はいったい何なのだろう。5メートル以上の間隔がある。座った座席のチケットが配布され、しばしの沈黙が続く。

しばらくするとDJショーが始まり、ステージ上ではRenatoの写真撮影が行われていた。会員は立ち上がることはなく、レコードに合わせて足だけでリズムを取るといった感じで、静かに「その時」を待った。

17時も過ぎ、「Princeが今会場に到着した」と伝言が回る。「さっき見たの、Princeだろ!絶対嘘!」と心の中で思ったが、ひょっとしたらホテルにシャワーでも浴びに行ったのかも知れない。まぁいいや。そして17時30分。Renatoもステージから去り、DJが「One Nite Alone」のレコードをテーブルに載せたまま姿を消した。レコードのノイズが静寂を埋めていく。

「そろそろだ...」

ところが、待てど暮らせど一向に誰も現れる気配がない。17時40分...50分...18時00分。刻々と時間だけが過ぎていく。「こりゃ今日のSCはないな」とあきらめたその時、背後からにぎやかな声が聞こえてきた。一般入場の開始。結局1時間30分待たされた挙句、DJショーとRenatoの撮影会を見て終わってしまった。「やられた!」と思い慌ててグッズ売り場に駆ける。予想通り、既に行列ができていた。1,200円から1,500円に値上がりしたと聞いていた「Days Of Wild」のCDは、なぜか2,000円に値上がりしていた。さらに、パンフが全く入荷していなかった。「パンフないの?」と聞くと、「売り切れちゃって」...売り切れって、テメェ最初から入荷してねぇじゃねえかよ!と売り子を罵倒したくなったが、これから始まる約10年ぶりの一大スペクタクルに備え、無駄なエネルギーを消化したくないので、グッと言葉を飲み込んだ。結局、「DOW」のCDとthe Rainbow Childrenのジャケットの描かれたTシャツを購入。

18時15分を過ぎたあたりで、レコードの音が徐々に高くなる。よく聞くと、Sadeのレコードが流れていたり、結構なじみのある曲が多い。
18時30分。ほぼ時間通りに客電が落ちる。
「うわぁぁぁ!!」と歓声が上がる。まだまだ...と思って後ろを見たら、ほぼ満席。既に立ち上がっている客が多かった。
バンドのメンバーが次々現れると、歓声が高まる。メンバーの顔を見て、思わず「エ、エリック~?」と奇声を上げる。だって、Eric Leedsが参戦していることなんて知らなかったんだもん(実際この日から参戦したとのこと)。更に観客のボルテージが高まったところで、ついに白のシャツに薄紫のスーツで決めたPrinceが登場。うわぁ、ホントに小っちぇえ!大体、こんな間近でPrinceを拝めるなんて、夢にも思わなかったし。薄っすらと笑みを浮かべながらドラムセットにに座る。何でドラムから「叫べー」「助けてー」などという声が聞こえるのかは全くの謎で、思わず大笑いしてしまった。途中スティックを落とすというアクシデントもあったが、いよいよ始まる!という期待にバクバク。すると、更にバクバクするようなことが。何と、Maceo Parkerが会場通路から入場し、僕の目の前を横切っていったのだ。通路を開ける振りをしながら、思わず背中に軽~くタッチする。「うぉぉぉ!手洗えねぇ!」とか思ったが、その後しっかりお手洗いで手を洗っていた僕は、所詮その程度の男である。Maceoがステージに上がると、The Rainbow Childrenがスタート...。

021121 SAPPORO Kouseinenkin Hall Set List

The Rainbow Children
Pop Life
Money Don't Matter 2 Night
Purple Rain
The Work pt.1
Power Fantastic
1+1+1=3~Housequake
Love Rollercoaster
The Question Of U
Santana Medley
When U Where Mine
Gotta Broken Heart Again
The Ride
Sign O' The Times
Take Me With U
The Everlasting Now

Encore(We Want Prince!)

Alphabet St.
Pass The Peas
All The Critics Love U In New York(Sapporo) - A Love Bizzare

=Member=
John Blackwell on drums
Rhonda Smith on bass
Renato Neto on keyaoards
Maceo Parker and Eric Leeds on saxophone
Greg Boyer on trumpet
DJ Cool
and Prince

なるほどみんなが右側に陣取りたがったのは、Princeの移動する位置がキーボードのある方ばかりで、ほとんど右寄りだったからなのか。僕が前回Princeを観たのは10年前、D&Pツアーの東京ドームだったが、確かに観客の年齢層は高めになっていたことは否めないだろう。ただ、そんなことを感じさせない観客の熱気というのは、いかに北海道の隠れPrinceファンが彼の来日を心待ちにしていたか(もちろん本州から渡った僕みたいな人たちも大勢いたが)ということをひしひしと感じることができたし、Princeの期待に沿うであろう観客レベルの域に達していたことも僕はうれしかった。Princeは終始笑みを絶やすことなく、メンバーやスタッフに的確な指示を与えていた。観客とPrince、まさにGive And Takeの関係だった。Princeも楽しみ、観客も楽しむ。

意外なほど(失礼!)に北海道の観客は盛り上がり、それに呼応するだけの素晴らしい演奏を繰り広げてくれたし、Princeも「サッポロゥ」を連呼したじゃないですか。だから我々観客も一体となり、アンコールの時にはあちこちから「We Want Prince!」の声が飛び交ったわけで。個人的に今回特に感動したのは、「Money Don't Matter...」が聞けたこと。思えばD&Pツアー東京ドーム、この曲にかなり期待を寄せていたにもかかわらず、結局演奏されなかった曲なのだ。つまり、僕にとっては10年越しの念願達成というわけだ。「Pop Life」「The Ride」もよかったけど、なんだかんだ言いながらやっぱり「Purple Rain」には参った。涙は出なかったが、ウルウル来たよ。変な話になるが、僕はすでにNPGMCでも配信されていた「1+1+1=3」で聞こえるドラムの「パンッ」というクラップ音が好きで、実は今回、それが聞けただけでも面白かったなぁと思っている。開演前、前に並んでいた人たちが、今日は演るかも...といっていた「Power Fantastic」も正直かなりビックリした。あと、些細なことだけど、一番初めに「My Name Is Prince」と言ってくれたこと。これはかなり感激した。本当に、札幌公演をご覧になった人たちには感謝したい。何せ、東京ドームでは絶対に味わうことのないだろうという一体感を全身で感じることができたのだから。

そして、不評と言われたアンコール最後のダンスステージ、15人ほどの集団の中に僕もD君も加えてもらい、ステージに上がる機会を得た。キーボードを叩くPrinceを目の前で見れたことが何よりも最高だったが、今思えば半記憶喪失状態になっていたかもしれない。冷静に観るつもりだったのに。ステージ上ではエフェクターの位置を気にしながら、一応観客に気を配り、なるべくステージの邪魔にならないように、と思っていたけど、渇望には勝てなかった(ゴメンナサイ)。Rhondaは、居場所がなくなったかのように窮屈そうにベースを弾いていた。結局Princeの座るキーボード前に陣取り踊っていたが、ドラムの乾いた音だけが聞こえ、正直何を演奏しているのかはしばらくわからなかった。それだけ客席とステージでは聴こえる音が違うということを、初めて知った。ステージ上から降りるよう促され席に戻ると、僕の席はなくなっていた。ったく、セキュリティはなにをやっているんだろうか。手で「どけ」と合図しても、一向に移動する気配のない客。どうせこれで終わりだろう、と思っていたので、構わず席に座ると、ようやく前から人が消えた。結局翌日の仙台に間に合わせなければならないという機材運搬の関係で、18時30分過ぎに始まったステージは、アンコール含めきっかり2時間で終わってしまい、しかもダンス大会で終わってしまったことで、消化不良かつブーイング寸前の観客を尻目に、淡々と撤収作業が始まる。終了と同時にアフターショーの案内が流れる。「本日、NPGMCオフィシャルアフターショーが行われます!場所は、南七条のKING XMHU!さぁ、パーティーはまだまだ続きます!」...観客がどよめく。僕はその台詞回しの胡散臭さに閉口。しかし、観客は一向に帰る気配がない。手拍子が続く。しばらく待っても出てくるわけないし、もはやこれまでと思ったら、なんと「One Nite Alone...Live! Box Set」を抱えたPrinceが登場。再び無法地帯と化す。BOXを会場に投げ入れる素振りを見せながらにやつくPrince。でも、結局すぐにステージ奥に引っ込んでしまった。もうこれ以上登場することはないと見越した僕たちは、アフターショーの会場である「KING XMHU」に向かう。

途中、仙台で合流する予定のSサン(DIRTYMINDさん)に連絡、コトの成り行きを話すと、え~マジで!!と羨ましがられる。翌日、何が起きるかも知らずに...。

身体の火照りを冷ますため、僕たちはアフターショーの会場まで徒歩で向かった。正直、結構疲れた。既に路面は凍結していて、道端には雪が積もっている。15分ほど歩くと、怪しげな店が増え始める。D君曰く「そういうところ(つまり風俗エリア)」なんだそうだ。そんな怪しい一角に、明らかに異質な、ライトアップされた建物が現れた。ここがアフターショーの会場となる「KING XMHU」である。店の前には既に行列ができていた。事情を知らない、店の常連っぽい若者が、「今日何あるんすか?」と聞いていた。「Princeのアフターパーティーだよ」というと、興味なさげな顔をして立ち去った。ふと脇を見ると、「Prince Secret Party」の看板が...。どうも北海道は「秘密」がお好きのようである。ライブの事前告知も、北海道新聞には堂々と「プリンス シークレットライブ」と書かれていたから。新聞に広告が掲載された時点で、シークレットでも何でもないと思うのだが。僕は入り口でパスを誇らしげに掲げると、「Member?」と黒人男性に尋ねられた。「Ya.」と応えると、「Come In」と合図された。D君が代金を払うのを待って、会場に入る。既に会場には多くの客が入場していた。

僕たちもフロアーの一角を陣取り、しばらく二人で黙々と飲んでいた(しかし、350ミリの缶ビールが600円とはかなり高額である。結局6本も飲んでしまったが...)。この先いったい何が起こるのかも予想がつかない状況の中、それまで流れていた音楽が一変、Prince一色に変わる。しばらくみんなが踊っている様子を眺めていたが、ついに我慢しきれなくなりフロアーに出る。DJの回すレコードにあわせ身体を揺すっていると「そろそろPrinceが来るらしい」という情報が。すると、それまで全く興味すら示さなかった客が、一斉にフロアーに出て踊りだす。実は僕、ディスコクラブ、ダンスホールの類は入ったことすらないため、どうなることかと思ったが、さすがはディスコ世代がひしめいているのか、場慣れした様子でダンスが始まった。Princeをはじめとするメンバーが現れたのは0時頃。赤いスーツに身を纏ったPrinceは、2階からフロアーに軽く手を振り、VIP Roomへ消えた。トイレが2階にあるため、そこに向かうたびにVIP Roomを覗こうと試みるが、ガードがきつく、更に明かりも暗めだったため中の様子を窺うことはできなかった。結局いつPrinceがいなくなったのかよくわからないまま、気づいたら踊っているのが僕ら含め数名しかいなくなっていることに気づき、翌日のことも考えてアフターの会場を後にした。時計は、2時30分を回っていた。路面にはすっかり雪が積もっていた。ホテルの部屋に戻るも、重低音でやられた耳がガンガンするのと同時に身体が興奮していて、結局3時間くらいしか眠れなかった。
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...明日は10年前の11月22日、仙台公演の模様をお届けします。

2012年6月 9日

プリンスと私(2)


5回シリーズでお届けする予定だった「プリンスと私」ですが、低視聴率のため今回での打ち切りが決定しました。ということで、ここから一気に駆け足で遍歴を辿って行きたいと思います。

さて、正座をして聴き終えた「パレード」を手に、何か言葉では上手く説明できないぐらいの昂揚感を覚えてしまった僕。
プリンスを見る目が変わった瞬間でもありました。
...ということで、プリンスファンのキャリアとしては全然薄っぺらいのですが、ここから基本的にプリンスを軸とした音楽遍歴がスタートしました。

...といいつつ、僕がプリンスのCDを初めて購入するのは、この後更に遅れてからの話になります。一番最初に購入したプリンスのCDは、何とあの「BATMAN」のサントラでした。それも、黒い缶に入った限定仕様のもの。当時、「パープル・レイン」すらもまだまともに聞いていなかったというぐらいまだまだ薄っぺらなファンでした。

結局大学に入学した後、大学生協の割引制度を活用して、デビューアルバムから「ラブセクシー」までのアルバムを段階的に購入したわけですが、大学2年になった1990年に、プリンスが来日することを知ります(89年の2月にも来日していますが、当時受験まっただ中の身分で行けるはずもなく...)。そして遂に、初めて生のプリンスを東京ドームで目の当たりにしたわけです。

この時同行したのは、大学進学のため札幌に引っ越していたY君。実はチケットを取ってくれたのも彼でした。
何せ大学生になり立ての身分でしたので、バイト代で稼いだ小銭を全てつぎ込んで意気揚々と上京、東京から出発したオレンジ色の電車に乗って水道橋を目指すという失態もありましたが、人生初の外国人アーティストのコンサートを生で体感し、ますますその虜になってしまいました。

ちなみにこれまで僕が生でプリンスのコンサートを体感したのはたった4回のみですが、とりわけ2002年の来日公演、札幌と仙台公演は感動的だったなあ...(遠い目)。

他のプリンスファンの方からは「もうその話はいいよ。」と言われそうですが、この札幌公演は、久しぶりに再会したY君に僕からのご恩返し。
インターネットを通じて登録したNPGMC枠を利用して、北海道厚生年金会館の最前列を確保、しまいには他のファンの方々とともにステージに上がり、至近距離からプリンス本人を拝むという経験をさせて頂きました。

更に翌日の仙台公演では、移動時の飛行機でプリンスご一行様と一緒になり、約1時間にわたって機内のプリンスはじめツアーメンバーの行動を監視(ほとんどストーカーですね、こうなると。苦笑)、仙台公演ではこれまた同行したSさんが、プリンス直々のご指名でステージに登壇するという快挙を果たすこともできました(青森県人をなめんなよ!みたいな。笑)。

この頃には全国各地のプリンスファンとも交流を深めるようになり、僕なんて足元にも及ばないようなディープでコアなファンが全国にたくさんいることを知りました。

皆さん、これからもよろしくお願いしますね。

そんな中で一番の驚きは、幼い頃に家族ぐるみのお付き合いしながら、20年以上も前にほぼそのご縁が途絶えてしまった方と、プリンスを通じて再会したことでした。この時ばかりは、あまりに劇的すぎる奇跡的な再会に、本当にプリンスファンを続けていて良かったな...と思いました。

さて、プリンスの話を始めると多分尽きないと思うのですが、そろそろまとめますか。

プリンスのアルバムに順番をつけるとすると、やはり聴き始めた前後のアルバムになるのかな。まぁ、これに関しては皆さんそれぞれ好みがあると思うのですが..。
まずは「パレード」。これは言うまでもなく僕が一番最初に聴き通したアルバムということで。
続いて「アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ」。アメリカが収録されているアルバムではありますが、プリンスの名を世界に知らしめることになった「パープル・レイン」の次のアルバムとして発表されたにもかかわらず、全く趣の異なるバラエティに富んだアルバム。僕はリアルタイムでは聴いていないのですが、「パープル・レイン」の続編に期待を寄せていた人たちからすると、ビックリするような内容だったんでしょうね。
そして「サイン・オブ・ザ・タイムス」。これは「パレード」の次に発表されたアルバムですが、プリンスの懐の深さといいましょうか、ホントこの人って凄いんだな、ということを思い知らされたアルバムでした。

しかし、彼が来日する日は来るんでしょうか?海外公演だと、ステージに近いチケットが300ドル以上、なんてこともあるようです。まぁ、それに見合う分だけのパフォーマンスをすることは間違いないでしょうけれど(何せ彼のコンサートの場合、毎回異なるステージ構成となるため、観て飽きるということがないのです)。
まぁ、チケットが幾らになろうとも、来日すれば行っちゃうんですよね、きっと。

どれだけ首が長くなるのかはわかりませんが、いつか日本に来る気になるのを、じっと待ち続けていたいと思います。

2012年6月 8日

プリンスと私(1)

父の月命日に心を奪われ、昨日がプリンスの誕生日であったことをすっかり忘れていました。

プリンス。御年54歳だそうです。
来日したのがちょうど10年前、2002年のこと。その後も来日待望論は渦巻くものの、彼を招聘できるだけのプロモーターがいないからなのか、あるいはレコード会社をはじめとするバックアップ体制が整っていないからなのか、はたまた彼のお目に叶った会場がないのか、一向に来日する気配がなく、ホントに好きで好きでたまらないファンは、海外で行われる公演に足を運んでいます(ちなみに僕はハッキリ言ってそこまで投入できるお金がないのでムリです。)。

僕が洋楽を聴くようになったのは、中学1年になった頃でした。それが早いのか遅いのかはわかりませんが、青森という片田舎の中学生にとっては、洋楽を聴いている、ということ自体で得られる優越感、何かオラって格好いいべ?という大きな勘違いにとらわれたまま、80年代の真っ直中、洋楽全盛の時代にドップリと足を踏み込んで行きました。

当時のアイドルはマイケル・ジャクソンであったりマドンナであったりシンディ・ローパーであったり、はたまたワム!であったりと、めまぐるしく変遷。小林克也氏のベストヒットUSAを夜な夜な血眼になって見ることもあれば、FM雑誌をチェックしてはNHK-FMのクロスオーバー・イレブンを、半分眠り掛けながら聴いたりと、とにかく色んな情報をあちらこちらから収集するのに一生懸命でした。

とはいえ所詮中学生。お小遣いもたくさんもらっているワケじゃないし、まして貧乏家族の我が家に贅沢は禁物。
レコードを買うなんていうのは問題外(事実、僕が初めて自分のお金でレコードを購入したのは高校1年生の時でした)、友達からダビングしてもらったテープを聴いたり、FMの音源を録音するというのが音楽を楽しむ方法でした。

閑話休題。
ちょうど洋楽を聴き始めた頃、プリンスは「パープル・レイン」を発表した頃でした。しかしながら、見た目のグロテスクさと金切り声でも上げているような奇妙な歌声に思い切り拒否反応、全く聴こうという気にはなりませんでした(笑)。

さて、そんな僕に転機が訪れたのが、中学2年の時、偶然FM雑誌の番組表で見たプリンスのアメリカという曲。当時のFM雑誌には楽曲の長さも掲載されていたのですが、前述のクロスオーバー・イレブンの1曲目に掲載されていたアメリカ(21分45秒...だったかな?)という文字に、目が点になりました。1曲で22分近く!?カセットテープが主流の時代、46分テープだと、片面が1曲でほぼ埋まってしまう計算になります。
結局僕はその楽曲をカセットテープに録音し(といってもその曲はプリンスのやりたい放題の挙げ句、延々とループが続くだけの楽曲だったのですが...)、それからプリンスという奇妙な歌手の音楽を、少しずつ聴いていくようになりましたが、積極的に自ら聴く、というよりは、相変わらずFMから時々流れてくる彼の音楽を、他のアーティスト同様、流行の一つとして惰性のように聴いていただけでした。

高校に進学したその年。
同じ中学から進学し、初めて同じクラスになったY君。Y君は同じ学区、それも帰る方向が一緒ということで、学校の帰りに僕の家に立ち寄る機会も増え、その時に勧められたのが、プリンスの「パレード」というアルバムでした。もっとも、このアルバムの発表と前後してシングル化された「Kiss」という楽曲に衝撃を受けた僕は、無性にプリンスというアーティストに対する興味がわき始めていた頃。これは、食わず嫌いなんじゃないか...と思い始めていたところに、まさに渡りに船、とはこのことでしょうか。Y君は有無も言わさずLPレコードを僕に預け、「まぁいいから聴いてみろって。」と帰っていったのでした。

相変わらず気味の悪いジャケットだな、と思いつつレコードに針を落とすと...。

結局僕はその後の約1時間、部屋で正座をしたまま、そのレコードをじっと聴いていたのでした。

(...たぶん続く)

2012年3月25日

Princeよ、お前もか(笑)



ワーナーは過去の名盤、迷盤をコンパイルしたボックスセットを発売することに躍起になっているようで、「Original Album Classics」と銘打ったボックスセットがシリーズ化されているようです。
昨日Madonnaを紹介したばかりなのですが、愛すべき小っちゃいオッサン、Princeもそのシリーズに名を連ねるということで、今日はその作品を紹介。
はい、こちらです。ドーン。

多分ファンの方であれば、ほとんど食指の伸びない作品かも知れません(笑)。え?僕だけですか?
個人的な理由としては、

・収録されている作品の基準がよくわからない。
・リマスターされた作品なのかどうかもわからない。
・それ以外に特筆すべきことがない。

今回収録される5作品は、「1999」「Purple Rain」「Parade」「Lovesexy」「Diamonds and Pearls」。
初期の作品は見事に蔑ろにされているほか、「Purple Rain」の後に発売された名盤「Around The World In A Day」、そして「Sign O'The Times」も収録されていません(「BATMAN」というサントラもありますが、あれは完全に括りが別の模様)。あ、そういえば「Graffiti Bridge」というサントラもありましたね...。
ということで、何でこの5枚だったのかがよくわからないのですが、4月10日に発売されるらしいです。Amazonだと一枚あたり500円弱とこちらもお買い得。でも、個人的には散財しなくてもいいような気が、この作品に関しては。