2005年10月21日

県庁の星

4093861501県庁の星
桂 望実

by G-Tools

タイトルと、帯にあった「間違いは認めるな!?予算は使い切れ」という言葉に惹かれて購入した本。金沢へ出張する際、行きの車内で一気に読み終えてしまった。内容は、県庁のエリート職員が、民間企業に1年間派遣されることになったのだが、派遣されたスーパーで遭遇した従業員達と、己の持つ(役人)意識との乖離に苦悩しながらも、周囲の人たちと接していくうちに、自ら意識改革されていく...といったもの。
冒頭は、結構公務員をえぐっているな、といった感じで楽しく読めたのだが、読み進めるうちに展開がバレバレ。「全国の公務員に告ぐ」ということだったけど、そんな大げさなものでもないな、という感じがしたし、「間違いは認めるな!?予算は使い切れ」という帯の触れ込みも、本文とはほとんど関連性がなかったな。

半日で読み終えてしまうくらいなので、所詮「読み物」と割り切れば、内容としてはそれなりに楽しめる。ただし、この中から何かを見出そうなんて堅いことを考えると、非常につまらない本に成り下がってしまうだろう。そもそもこの本は小説(エンターテイメントな文芸書?)であって、実態を暴くドキュメントでも何でもないので。

そんな中、いくつか苦言を。
めまぐるしくシーンが変わる中で、登場人物が名字だったり名前だったり、表現がまちまちで非常にわかりづらく、何度も同じページを行き来する羽目となった。
そして、特にガッカリしたのは終盤の展開。主人公が意識改革に目覚め、派遣先のスーパーの人間もやる気を出していく、という展開から、研修を終えて県に復帰するまでの展開が、あまりにも端折り過ぎていて、主人公やスーパーに勤める人間に、どういう理由でどういった心境の変化があったのかが全く読み取ることができない。もっとも読み応えが感じられなければならないと思しき部分だけに、あと50ページは割いてもよかったんじゃないかな。帯にはもっともらしいことが書かれていただけに、敢えてぶった斬るのであれば、「羊頭狗肉」で星一つ半。

かといって全て否定するといった内容でもなく、身につまされるような記述も多く見受けられたのも事実。ハイ。
特に、スーパーを仕切るパートの中年女性・二宮が主人公にぶつける辛辣な言葉の数々は、正直読んでいて胸が痛くなりました。つまり、思うフシあり、ってことなんだろうね。

これが映画になったら...と思ったら、既に映画化が決まっていたのね。
主人公が織田裕二っていうのが、「いかにも」ですな。で、ヒロインが柴咲コウってことなんだけど、本を読み進めていく限りでは、ヒロインなんてどこにもいなかったような気がするんだが...。え?「スーパーを仕切るパートの中年女性・二宮」が柴咲コウですか!?イメージとしては渡辺えり子あたりがちょうどいいと思っていたんですが...。なんか、原作がどんどん脚色されているような...。
というか、この二人のキャスティングという時点で、何だかなぁ(苦笑)...って感じ。

惣菜売場で働く外国人は、ボビー・オロゴンで間違いないだろう。店長役は、ホンジャマカの石塚がハマリ役でしょうか。
...こうやって想像していくと、何か、あんまり面白くなさそうな映画だな(苦笑)。

一つだけ誤解して欲しくないのは、地方公務員というのはみんながみんな、こういった主人公と同じ意識を持っているというわけではないという点。これだけは、最後に強調しておきたいです。ハイ。

こういうのを読んでいると強く思うことが一つ。公務員バッシングが続く中、都道府県の公務員ばかりが槍玉に挙げられる日は、遠くないのでしょうなぁ...。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://nonvey.oops.jp/cgi/mt/mt-tb.cgi/5390

コメントする