切なく、哀しい別離
では皆さん、ハンカチとティッシュペーパーのご用意を...。
泣けてきたらごめんなさい。ニャー。
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うちには、犬が3匹と猫が2匹います...というお話は、機会ある毎にここで書き綴っているような気がする。
このうち、猫2匹についてはいずれも既に生まれてから15年を超える長老どもで、とりわけデブちゃんについては推定19年の長寿猫。ただ、最近は足腰がめっきり弱くなったこともあって、出不精といっても過言ではないぐらい外に出なくなり、いつ逝ってもおかしくない...と思いきや、食欲だけはどの犬猫よりも群を抜いており、こりゃまだまだ生き長らえるな...と思っているところである。
一方、もう一匹のタマ。こちらはデブちゃんと性格が対照的で、どちらかといえば排他的な雰囲気。誰彼構わず威嚇するその性悪ぶりは、母譲りである。猫のくせに一匹狼といった感じで、人にすり寄るのはお腹が空いた時ぐらい。
しかし、年を食ったこともあってか、2匹の猫は3匹の犬には全く関心を寄せず、それなりに棲み分けが出来ていた。
それにしてもこの夏は暑かった。
犬猫がバテないのが不思議なくらい、暑かった。
...と思っていたら、どうやら細身のタマには相当堪えていたらしい。
泣けてきたらごめんなさい。ニャー。
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うちには、犬が3匹と猫が2匹います...というお話は、機会ある毎にここで書き綴っているような気がする。
このうち、猫2匹についてはいずれも既に生まれてから15年を超える長老どもで、とりわけデブちゃんについては推定19年の長寿猫。ただ、最近は足腰がめっきり弱くなったこともあって、出不精といっても過言ではないぐらい外に出なくなり、いつ逝ってもおかしくない...と思いきや、食欲だけはどの犬猫よりも群を抜いており、こりゃまだまだ生き長らえるな...と思っているところである。
一方、もう一匹のタマ。こちらはデブちゃんと性格が対照的で、どちらかといえば排他的な雰囲気。誰彼構わず威嚇するその性悪ぶりは、母譲りである。猫のくせに一匹狼といった感じで、人にすり寄るのはお腹が空いた時ぐらい。
しかし、年を食ったこともあってか、2匹の猫は3匹の犬には全く関心を寄せず、それなりに棲み分けが出来ていた。
それにしてもこの夏は暑かった。
犬猫がバテないのが不思議なくらい、暑かった。
...と思っていたら、どうやら細身のタマには相当堪えていたらしい。
涼しくなってきた8月下旬あたりから急に餌を受け付けなくなり、それまでは腹が減ったと頭突き(それも膝を目がけて)して来たくせに、餌を与えるとそっぽを向く、といった有様。
最初は、生意気に餌の選り好みなんぞしやがって...と思っていたのだが、実はタマの身体の内部では異変が発生していたらしい。
ついには水も飲まなくなったタマ。家の外にいる機会が多くなり、やがて一晩中家にいないということも当たり前になった。
もっともタマの場合、従来からこういった行動を繰り返していたので、あまり気にしていなかったのだが、それにしても家を空ける間隔が長くなっていることに、これはひょっとして...というイヤな予感が漂い始めた。
ちょうど皆既月食の日。遂に、タマが行方をくらました。
僕は翌日から県南地方に1泊2日での出張があり、結局タマの姿をいつ見たか思い出せないまま、タマと最後のお別れをしなければならなくなった。
ところが。
出張から戻ってきた31日の晩。
椅子の上に、小さくなったタマの姿があった。
「おお!タマ、元気だったか?」
と、その顔を見て愕然とした。睨み付けるような目つきは影を潜め、すっかりくぼんでいる。弱々しい鳴き声。息苦しいのか、何度も舌なめずりをしている。それでなくても小さい身体なのに、腹から背中はすっかり痩せこけ、あれほど嫌がっていた抱っこにも、無抵抗なのだ。しかも、軽い...。
「餌も水も、全然口にしないんだよ...。」
母がぼやく。
その姿を目の当たりにした僕は、「その時」が確実に、それもすぐそばまで迫っていることを確信せざるを得なかった。
程なく、気分よく酔っ払った父が帰宅。やはりタマの姿の驚く。
父から車の入れ替えを依頼され、再び家に戻ろうとしたその時、「ニャー」という声が隣の家の庭から聞こえた。
え?タマの鳴き声?
まさか、と思い家に入ると、そこにタマの姿はなかった。
這うような足取りで玄関に向かったタマを、父が玄関から出してしまったという。
バカ野郎。何で家から出したんだよ...。
あ、でも家で最期を看取られるよりは、その方が猫らしいのかな...。まだ帰宅していない妻には内緒にしておこう...。
やがて妻が帰宅。
その第一声。「タマ、帰ってきた?」
やはりタマのことが気になるらしい。
無言を貫き通そうとしたが、僕の目からはどんどん涙が溢れ出した。
最期のお別れに来たんだと、思う。そう言うのが、やっとだった。
土曜日。やはりタマは戻ってこなかった。
動揺も収まった日曜日の朝。突然妻が走り込んできた。
「タマがいるっ!」
え?
見ると、草むらの陰にタマがへたり込んでいる。
近寄ると、聞いたこともないような甲高い声でニャー、と一鳴き。
その顔は、蜘蛛の巣やら何やらですっかり汚れている。立つこともままならないらしい。
タマ...どうする?家で最期を迎えるか?
病院に駆け込むという選択肢は、その時点で家族全員の頭から排除されていた。これ以上の延命を望んでも、きっとタマが苦しむだけだろう。
あとは自然の摂理に任せよう...。
更に軽くなった身体を抱っこし、物干し台のところまで連れて行く。相変わらず餌も水も、口にしようとしない。いや、もはや一切の飲食物を受け付けなくなってしまったらしい。
骨と皮だけになった背中を撫でる。痛いのか、弱々しい声でニャー、と鳴く。
居たたまれなくなった妻が、段ボールに毛布を敷いて持ってきた。
この時ばかりはホントに腹立たしさを覚えたのだが、タマを心配するこちらの意志にはお構いなしで、ギャンギャン騒ぎ続ける犬たちを連れて、付近を散歩せざるを得なくなった。
散歩中も、タマの姿が目に焼き付いて離れない。
その間、タマは箱の中にいることさえもイヤであるらしく、すぐに外に出たがった、という。
いつもより短めの距離で散歩を済ませ帰宅すると、タマの姿はなかった。
すると、再び草むらの中から「ニャー」という甲高い声。
山椒の木の下で、タマは横たわっていた。
タマ。いいよ、もう。そのまま眠っちゃいなよ...。
タマはそこから動こうとしない。
このままそっとしておこう...。
10分ほどその場を離れ、再びタマの様子を伺いに行ったら、既にタマの姿はそこにはなかった...。
タマ?タマ?
呼んでみても、声も姿もない。
やがて、空からは雨がぽつりぽつりとこぼれ始めてきた。
タマ、どこに身を隠したかな...。外で濡れてなきゃいいんだけど...。
夜になり、雨脚はどんどん強くなっていった。
きっともう、タマは戻ってこない。
タマは、どこか雨のしのげる場所で、静かに眠りについたことだろう。
あのプライドの高い猫のことだ、家で長い眠りにつくよりは、その方がよかったはずだ。
だから、後悔はない。
...白昼夢でも見ていたのだろうか。
昨日のことなのに、既に遠い昔のような錯覚に陥っている。
タマのことを思っても、不思議と涙は出なくなった。
いや...ギリギリで涙を堰き止めているというのが、正直なところだ。
最初は、生意気に餌の選り好みなんぞしやがって...と思っていたのだが、実はタマの身体の内部では異変が発生していたらしい。
ついには水も飲まなくなったタマ。家の外にいる機会が多くなり、やがて一晩中家にいないということも当たり前になった。
もっともタマの場合、従来からこういった行動を繰り返していたので、あまり気にしていなかったのだが、それにしても家を空ける間隔が長くなっていることに、これはひょっとして...というイヤな予感が漂い始めた。
ちょうど皆既月食の日。遂に、タマが行方をくらました。
僕は翌日から県南地方に1泊2日での出張があり、結局タマの姿をいつ見たか思い出せないまま、タマと最後のお別れをしなければならなくなった。
ところが。
出張から戻ってきた31日の晩。
椅子の上に、小さくなったタマの姿があった。
「おお!タマ、元気だったか?」
と、その顔を見て愕然とした。睨み付けるような目つきは影を潜め、すっかりくぼんでいる。弱々しい鳴き声。息苦しいのか、何度も舌なめずりをしている。それでなくても小さい身体なのに、腹から背中はすっかり痩せこけ、あれほど嫌がっていた抱っこにも、無抵抗なのだ。しかも、軽い...。
「餌も水も、全然口にしないんだよ...。」
母がぼやく。
その姿を目の当たりにした僕は、「その時」が確実に、それもすぐそばまで迫っていることを確信せざるを得なかった。
程なく、気分よく酔っ払った父が帰宅。やはりタマの姿の驚く。
父から車の入れ替えを依頼され、再び家に戻ろうとしたその時、「ニャー」という声が隣の家の庭から聞こえた。
え?タマの鳴き声?
まさか、と思い家に入ると、そこにタマの姿はなかった。
這うような足取りで玄関に向かったタマを、父が玄関から出してしまったという。
バカ野郎。何で家から出したんだよ...。
あ、でも家で最期を看取られるよりは、その方が猫らしいのかな...。まだ帰宅していない妻には内緒にしておこう...。
やがて妻が帰宅。
その第一声。「タマ、帰ってきた?」
やはりタマのことが気になるらしい。
無言を貫き通そうとしたが、僕の目からはどんどん涙が溢れ出した。
最期のお別れに来たんだと、思う。そう言うのが、やっとだった。
土曜日。やはりタマは戻ってこなかった。
動揺も収まった日曜日の朝。突然妻が走り込んできた。
「タマがいるっ!」
え?
見ると、草むらの陰にタマがへたり込んでいる。
近寄ると、聞いたこともないような甲高い声でニャー、と一鳴き。
その顔は、蜘蛛の巣やら何やらですっかり汚れている。立つこともままならないらしい。
タマ...どうする?家で最期を迎えるか?
病院に駆け込むという選択肢は、その時点で家族全員の頭から排除されていた。これ以上の延命を望んでも、きっとタマが苦しむだけだろう。
あとは自然の摂理に任せよう...。
更に軽くなった身体を抱っこし、物干し台のところまで連れて行く。相変わらず餌も水も、口にしようとしない。いや、もはや一切の飲食物を受け付けなくなってしまったらしい。
骨と皮だけになった背中を撫でる。痛いのか、弱々しい声でニャー、と鳴く。
居たたまれなくなった妻が、段ボールに毛布を敷いて持ってきた。
この時ばかりはホントに腹立たしさを覚えたのだが、タマを心配するこちらの意志にはお構いなしで、ギャンギャン騒ぎ続ける犬たちを連れて、付近を散歩せざるを得なくなった。
散歩中も、タマの姿が目に焼き付いて離れない。
その間、タマは箱の中にいることさえもイヤであるらしく、すぐに外に出たがった、という。
いつもより短めの距離で散歩を済ませ帰宅すると、タマの姿はなかった。
すると、再び草むらの中から「ニャー」という甲高い声。
山椒の木の下で、タマは横たわっていた。
タマ。いいよ、もう。そのまま眠っちゃいなよ...。
タマはそこから動こうとしない。
このままそっとしておこう...。
10分ほどその場を離れ、再びタマの様子を伺いに行ったら、既にタマの姿はそこにはなかった...。
タマ?タマ?
呼んでみても、声も姿もない。
やがて、空からは雨がぽつりぽつりとこぼれ始めてきた。
タマ、どこに身を隠したかな...。外で濡れてなきゃいいんだけど...。
夜になり、雨脚はどんどん強くなっていった。
きっともう、タマは戻ってこない。
タマは、どこか雨のしのげる場所で、静かに眠りについたことだろう。
あのプライドの高い猫のことだ、家で長い眠りにつくよりは、その方がよかったはずだ。
だから、後悔はない。
...白昼夢でも見ていたのだろうか。
昨日のことなのに、既に遠い昔のような錯覚に陥っている。
タマのことを思っても、不思議と涙は出なくなった。
いや...ギリギリで涙を堰き止めているというのが、正直なところだ。
覚悟はしてたけど、切ないねぇ。。
どこで逝くか、タマも悩んだのかな・・。
悲しいけど、ご近所さんの庭とかで力尽きてたら、申し訳なくて泣くに泣けない(苦笑)。
Posted by じゃん子 at 2007年9月 3日 16:13 | 返信
久しぶりにものすごい涙がこぼれてきました。
自分でもびっくりするくらい涙が出てきました。
Posted by ちゃき at 2007年9月 4日 00:49 | 返信
>>じゃん子
全くもって切ないよ。デブちゃんは相変わらずギャーギャーですが(笑)。
しかし、子猫の時の猫エイズ疑惑...今になって発症したのかな。
いつか来るとはわかっていたけど、順番が逆になったな...。
>>ちゃきちゃん
夜中の号泣は、朝に響きますぞ(笑)。
ありがとう。どういう形であれ、別れが来ることは寂しいものですな...。
と言いながら、今晩また突然現れたりして。
Posted by nonvey at 2007年9月 4日 09:28 | 返信
訪問させて頂く度に花巻のワンちゃんとは違う躾けの良い3匹の犬とどちらがどれだか見分けは付けられなかったが人懐きの悪い痩せと想像異常な?デブッチョな猫が居る事は認識してましたが、、、別れは辛いね、別世界で楽しんでるものと思い、心より冥福を祈ります。
Posted by 水戸 at 2007年9月 6日 17:41 | 返信
いつかは経験する事なんでしょうけど辛いですね。
出来る限り安らかに眠ってほしいです。
Posted by こう at 2007年9月 6日 21:42 | 返信
これを読んで思い出しました。小さい頃、うちの庭で力尽きる寸前の野良猫の最期を看取ったことがあります。少しずつ死んでいく可哀相な猫。どうにかして助けてあげたかったけど、幼い私は何もできない悔しさと悲しさで胸が張り裂けそうでした。獣医へ運んでくれなかった親を真剣に憎んだものです。
今は自然の摂理が多少分かっているつもりですが、悲しさの度合いは小さい頃と変わらないような気がします。いや、もっと涙もろくなってるかも。。。
Posted by touchy at 2007年9月 6日 22:18 | 返信
>>水戸伯父様
コメントありがとうございます。今回失踪したネコは、人との接触を好まないネコでしたので、印象としては薄いかも知れません。もう一方の太っちょネコも、引退した横綱のように大分スリムになりました。最近では夜中に変な声を出して鳴くようになり、こちらも間近なのかも知れません。
>>こうさん
わかってはいるものの、別れは辛いものです。しかも、少なくともあと4度は同じ思いをしなければならず、うち3度は最期を看取ってやらなければなりません。
嗚呼!!
>>touchyさん
その経験、かなりヘヴィですね。僕ならトラウマになっていたかも知れません。もっとも今回の一件、すっかり衰弱したタマを見て病院に連れて行くべきかどうするか、葛藤がなかったといえばウソになります。しかし、連れて行ったところで今更どうなるものでもない、ということも、タマの表情や動きを見て判りました。
妻は「最後に、私に顔見せに来たんだ」と言っていましたが、最近では一番エサを与える頻度の高かった妻ですから、あながちハズレではないような気もします。
Posted by nonvey at 2007年9月10日 10:17 | 返信