2009年8月26日

オオカミと少年

昨日の朝に発生した緊急地震速報の誤報は、一歩間違うと「オオカミと少年」の話にもなりかねない、非常に憂慮すべき問題であることを提起しておこうと思う。
ご存じの通り「オオカミと少年」というのは、何度も村人に対して「オオカミがきた!」と嘘をついた羊飼いの少年が、本当にオオカミがやってきたことを村人に伝えても、誰も信用せず、羊がオオカミに食べられてしまったというイソップ童話である。つまり、嘘つきはたとえ本当のことを言っても、誰も信じてくれないということを説いている。

「誤報でよかったじゃん」というのもごもっとも。でも緊急地震速報は、生命の危機にも関わる問題になりかねないわけであり、少なくともこのような事案が生じたということに対して、気象庁は今後こういったことが起きないよう盤石の体制を築くとともに、信頼回復に努める必要がある。

<緊急地震速報>業者、地震計ソフトを無断改修 誤報の原因
8月25日23時36分配信 毎日新聞

25日朝に千葉県東方沖を震源とする地震が起きた際、同県南房総市の地震計から過大なデータが送信され緊急地震速報が誤って発表された問題で、気象庁は同日午後、この地震計のソフトの改修ミスが原因と発表した。

同庁によると、この地震計は設置した「明星電気」(群馬県伊勢崎市)が24日に改修を実施。その際、委託された震度情報送信に関するソフトだけでなく、 緊急地震速報にかかわるソフトも無断で改修した。その過程でミスをし、過大な観測データが速報システムに送られる設定になった。同社はこの改修を同庁に報 告せず、同庁も気付かなかったという。

同社は大阪市など他の3カ所の地震計も同様の改修をしていたため、いずれも改修前の状態に戻した。同社の役員らが25日に同庁を訪れて謝罪し、作業態勢などを見直すことを約束した。同庁は改修を引き続き委託するという。

同庁の伊藤秀美地震火山部長は「気象庁にも監督責任はある。改修などを外部委託する際は、どんな作業がどのように実施されたのかをしっかり確認できるようチェック態勢を見直したい」と述べた。

こういった業者に引き続き作業を委託するのもどうかと思うが、裏を返せばこういう作業をできる業者がいないということだろうか、あるいは更に裏事情があるのか...。

今回のトラブルは、火災報知器の誤作動でも同じようなことが言える。
しょっちゅう誤作動を起こす火災報知器だと、誤作動に慣れてしまった人たちが、本当の火災が発生した時に作動しても、誰も信用しないということだ。
僕も以前むつ市に出張で宿泊したホテルで、早朝の火災報知器の誤作動により部屋から締め出されるということがあった。少なくともあの時、誰も火災が発生しているなんて信用しておらず、何となく警報が続くので避難してみた、といった感じだ。結局(予想通り)誤報であったわけで、後にホテルからは謝罪の手紙と宿泊の割引券が送られてきたが、ホテル側の対応やら誘導やらいろいろ思い返すと腹立たしいことばかりで、あの事件があって以来、そのホテルには二度と泊まろうという気にならなくなった。

まぁそれはともかく、火災報知器というのが我々の身近にある分、誤作動が続いているようでは、信頼度も落ちてしまう、ということだ。

さて、話を元に戻して、もしこのような誤報が続けば、気象庁への信用はもちろん、緊急地震速報への信頼度も薄れ、前述の「オオカミと少年」の話にもなりかねない(もっとも、テレビやラジオを介してなので、そういったことにはならないと思うけれど)。
オオカミ(地震)が来たときに誰も信じてくれなければ、そもそもこのシステムそのものが何なんだ?ということになってしまう。

緊急地震速報そのものを今回初めて目にしたこともあったので、あれは「訓練」だったということにしておくが、二度三度「訓練」が続くようなことがないように。ただ、少なくとも昨日の朝は、震源から遠く離れた青森にいても、相当の緊張感が走ったことだけは、付記しておこう。

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