2016年2月29日

東京マラソンに垣間見たマラソン代表選考の考察

みんな生身の人間だし、精密機械じゃないんだから、日々体調が変化するだろうに。天気一つで状況も変われば、その土地との相性だってあるだろうし...。 ...いや、何のことかといいますと、例のリオ五輪の代表選考に係る男女マラソンを巡る日本陸連のゴタゴタ。日本陸連だけじゃないな、なかなか伸びない選手層の頭打ちも問題なのかなあ。 昨日開催された「東京マラソン2016」は、国内外から注目を集める中で行われましたが、日本陸連の思い描いていた青写真はきっと、これまでも「実績」のある選手が、誰もが驚くような好タイムで駆け抜け、リオ五輪に内定...という光景だったのでは。ましてや東京マラソンはこれまでも高速レースとして結果が出ている大会、実力伯仲の日本人選手が奮起することだろうという、相当な期待を寄せていたことでしょう。 ところが蓋を開けてみると、日本人選手は並み居る外国人選手に大きく後れを取っているにもかかわらず、30キロあたりまでずーっと互いを牽制し続けるというレース展開、外国人のトップ集団に食らいついていた学生選手も(予想通り)足のマメが潰れたらしく後半みるみる失速、結局終わってみたら、名前すら挙がっていなかった一般参加の伏兵選手が2時間10分台の記録で日本人1位となる、恐らく陸連が一番危惧していたパターンの結果となってしまった、といってもいいでしょう。 しかもこの選手も「気がついたらトップだった。これから2時間8分台7分台の練習をしないと。」とコメント、偶然が生んだ結果であることと、そもそもが力不足であることを露呈した感は否めませんでした。実際、こんなに平凡な記録になるとは思っていなかった陸連側も歯切れが悪かったようで。 日本陸連の期待を一身に背負った人や事前に高い注目を浴びていた人たちが、レースを引っ張るどころか牽制し過ぎたあまりペースを上げることができず、結局のところ箱根駅伝を走る現役大学生陣、とりわけ原監督率いる青山学院大勢にかき回されてしまった、といったところでしょうか。 恐らく、日本陸連の腹の中には「この選手に代表になって欲しい。」という考えが根強くあるんでしょうね。 逆に、「この選手だけには絶対代表になって欲しくない。」という選手もいるのかも知れませんね。 これまでも世界レベルの大会に向けたマラソン選手の選考基準は何度も疑問が呈されているにもかかわらず、一向にその考えを変えない(いや、少しは変えている?)からこういう事態になるんじゃないかな。 現に、女子代表の選考に関しては、最初の選考レースとなったさいたま国際マラソンで日本人トップだった吉田香織選手の「よ」の字も聞こえてこない状況で(まあ、確かにあのタイムでは仕方ないけれど)、もしも次の最終選考レースとなる名古屋ウィメンズが、今回の東京マラソン、もといさいたま国際マラソンのような平凡なタイムでのレースとなったらどうしよう、という事態を、本気で危惧しているんでしょうか陸連は。...まあ、そうなると大阪国際女子を制した福士加代子選手だけが当確、かな。 ちなみに福士選手が、選考記録をクリアしているにもかかわらず陸連からのリオ五輪内定が出ないということを理由に名古屋にも強行出場することを表明していますが、吉田選手も名古屋に出場する予定です。 つまりですよ、名古屋ウィメンズには、本来内定をもらってもいいはずの福士選手や、内定には手が届かないけれど条件一つはクリアしている吉田選手をはじめ、実力者の皆さんがエントリーしているというわけですよ。 ...だったら、選考レースは名古屋ウィメンズ一つでいいじゃん。 男子はもっと酷い状況で、福岡国際を制したこちらも一般参加の佐々木選手が2時間8分台を出して日本人トップとはいうものの、記録だけ見ると、はて、これはどうなんだろう、といった感じ。 今回の東京マラソンで日本人トップだった高宮選手がすんなりと選ばれるとは考えにくく、選考を巡っては混沌というか、殺伐としてきた感も否めず...。 市民マラソンが既に一つの文化として根付いている中、強さを強烈に印象づけるのは招待選手のうち外国人選手ばかり。 現に今回もそうでしたが、実業団選手とはいえ一般参加の選手が日本人トップになるという事態を、日本陸連はどう見ているのでしょうか。恐らく今後は、力をつけた市民ランナーが台頭し、実業団選手を喰ってしまう、という事態だって充分あり得るわけで。(どっかの公務員ランナーが典型的な例) 日本新を記録した選手には1億円払います、なんていう安易な「エサ」ではなく、その1億円を注いで選手強化に本腰を入れないと、世界を舞台にしたマラソン競技では入賞どころか10位以内も難しいんじゃないかな。 かつては絶対的な強さを持つ選手が男子にも女子にもいましたが、今はどうでしょう?男子も女子も、「この人なら期待を寄せられる!」という選手がいないというのが現実なんじゃないのかなあ。 何か、毎回こんなレース展開を見せられるのも辛いし、こんなことが続くようでは、市民マラソンに出るのは好きだけど競技としてのマラソンは嫌い、という人も増えそうな気がしなくもないわけで。 2016daihyo_02(リオ五輪代表選考基準) いつもいつも日本陸連の選考基準の曖昧さが指摘されますが、そもそも複数の大会で順位だけではなくタイムも比較するということ自体に無理があるのでは?と思ってしまうわけです。気象条件やコースの難易度によってもタイムは全然異なるんだし。 だったら、思い切って選考レースを一本に絞るとか、逆に選考レースを決めることなく、年間を通じた陸連公認コースでの大会出場記録をポイント換算するとか(フィギュアスケートのグランプリシリーズみたいな感じで)、あるいは前走、前々走の記録を参考にするなどしてみればいいと思うんですが、どうでしょう。 私もマラソンランナーの端くれですが、一発勝負で雌雄決したところで、それが本番の結果に結びつくとは到底考えられないんですけれどね。まあ、そうでもしないと選考できない、という事情もあるのでしょうけれど。(日本陸連の選考基準では「初回の選考レースの結果を評価対象とする」とのことですが。) いずれにしても男女ともに選考レースは残すところあと1つのみ。 結果がどうなるにせよ、日本陸連はこれからの選考基準どころか、実績を積んだエリート選手が初めてマラソンに挑戦した学生選手の後塵を拝したことで、選手強化に向けた取組みにも課題を突きつけられた、といったところでしょうか。しばらくは、マラソン代表選考を巡る揉め事が続きそうな予感...。 この混沌に紛れて、オレも2020東京五輪を目指してみようかな...。 さいたま国際M 30K ウソだよ。

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