2010年12月27日

矢野顕子リサイタル 2010 in あおもり[弾き語り]

週末の悪天候は僕の気分を一気に滅入らせた。とりわけ金曜日の大幅なダイヤの乱れ、代替輸送は、日頃の疲れを増幅させ、鬱積した思いばかりが募った。

そんな中行われた、日曜日の矢野顕子公演。興味はあったが自らチケット購入する踏ん切りが付いていなかったところに救いの手が登場。何と、無償でチケットを譲って下さる方が現れたのだ。今回は、そのご厚意に甘えることにした。

日曜日ということもあってか、この日の開演は何と16時。弘前から車で向かう身にしてみれば、非常に嬉しい配慮だ。

降り続いた雪は収まり、ところどころ路面もアスファルトが見えている。
ところが、青森市の手前15キロのあたりに差し掛かると、先で事故があったらしく長蛇の列ができているのを目視。とっさに右折し、旧道に入った。

この判断がどうやら正解だったようで、何とか開演5分前に会場に到着した。

ステージ上には一台のピアノがライトアップされている。他にセットらしいセットはない。
会場をざっと見渡した限りでは、1階席の9割程度が埋まっている感じ。ほとんど最後部だったため、2階席を伺うことはできなかったが、恐らく1階にいる客が本日の全ての観客なのだろうと悟った。

年齢層は非常に幅広く、平均年齢は40代中頃~後半といったところだろうか。女性の方が若干多かった気がする。

やがて開演時刻を過ぎると、主催者である地元テレビ局の女性アナウンサーが登場し、注意を読み上げた。それも、書かれたものをただ読み上げるだけ。開局20周年記念とのことではあったが、果たしてわざわざ自己紹介までして注意を読み上げる必要があったのか、正直少し疑問を感じた。まぁ、このコンサートの宣伝のCMで未だに「春咲小紅」を流していた時点で、かなり終わっているな、とは思っていたのだけれど。

アナウンサーが舞台の袖に下がると、程なく暗転。ステージ上に矢野顕子本人が現れる。パラパラと拍手がわき起こる。

如何せんステージ上にはピアノ1台と彼女のみ。演出といえば光の演出があるぐらいで、それ以外は一切なし。なので観客は、彼女の一挙手一投足を、固唾を飲んで見守り、演奏が終わるたびに拍手を浴びせる。

しかし何故こんな大きなキャパのホールでコンサートなのだろう。もっと小さなホールでもよかったのに。 そんなことを思っていたら、その疑問は程なく彼女の口から明かされた。

会場の青森市文化会館は、彼女が卒業した中学校(青森市立野脇中学校)のあった場所だったのだそうだ。そういう思い入れのある場所だからこそ、敢えてこの場所での公演を選んだのだろう。

彼女のMCは、3歳から中学卒業までというさほど長くはない青森生活ではあったが、津軽弁を織り交ぜた非常にフレンドリーなものだった。今回、新幹線で青森までやって来たこと、八戸から先に新幹線が走り出したときは、感無量だったこと、自称雪女で、前回も酷かったが今回もとんでもない悪天候に見舞われたこと、新青森から乗ったタクシー運転手が同級生だったこと、等々...。

「やっぱり青森は、ふるさとなのよね。」というと、会場から自然と拍手がわき起こる。
弾き語りということで、思いつきのような順番で演奏が始まる。途中家族からのリクエストを交えたり(「私事でごめんね~」と笑っていたが。)、カバー曲を織り交ぜたり、アンコール含め2時間弱ではあったが、十分満足できる内容だった。 どうやら前列にはご家族ご親戚の方が座っていたらしく、その他同級生の姿もあったようで、アットホームな雰囲気に包まれていた。そりゃそうだ。矢野顕子にとって、ふるさと青森、それも卒業中学(跡地)での凱旋リサイタルなのだから!

とりわけアンコールの1曲目、「ふなまち唄」には圧倒された。実は当初、演奏リストには入っていなかったようなのだが、スタッフから「演奏しないんですか?」と聞かれて、慌てて追加したらしい。ねぶたのリズムそのままに鬼気迫る演奏。観客は息を呑むように視線を釘付け。長い演奏が終わると、会場から万雷の拍手がわき起こった。ああ、これだけでも観た甲斐があったというものだ。

それにしても彼女の音楽は、どういうジャンルに分類されるのだろうか。ポップというほど軽々しいものでもないような気がするし、ジャズというほど重厚なものでもない。
ふと、以前同じ会場で観た綾戸智恵のことを思い出したが、彼女ほどジャジーではないし(しかも彼女の場合はバンドを伴ったコンサートだった)、何と表現したらよいのだろう...。上手く説明できないのだが何かこう、温かい気持ちに包まれるような、そんな優しいリサイタル。今まで観た数々のコンサートの中でも非常に良質なコンサートだった。チケットを譲って下さった方に心から感謝。

残念だったのは、開演時間を間違えたのか、本編最後の曲が始まる頃にやってきたお客さんが何人かいたこと。18時前には幕を閉じたので、ひょっとしたら18時30分開演と勘違いをしたお客さんだと、会場にやってきた頃に観客がホールを後にしていた、なんて可能性も。

ちなみに終演後会場内に流れたのは、本編でもカバーした忌野清志郎の「恩赦」でした。

ありがたいのは、佐野元春の時もそうだったけれど、こうやってセットリストを張り出してくれること。

12月26日、矢野顕子リサイタルセットリス ト(その1 )

12月26日、矢野顕子リサイタルセットリス ト(その2 )

生活拠点が海外なのでなかなか青森に来る機会がないようだけれど、是非又観てみたいと感じさせる内容だった(実際今回の公演も12年ぶりだった)。ちなみに、僕らが観た青森での公演をもって今年の弾き納めだそうだ。願わくは、もっと音のいいホール(弘前市民会館というのはあまりにも図々しいかな?)で聴いてみたいものだ。

二次会はやはり、ご実家のあるバー「港屋」だったんだろうか。気になる...。

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コメント(4)

よかったですね!
あっこちゃん、大好きです。でも、もう何年も・・コンサート行ってないんですけど・・。
弾き語りが一番好きです。楽しめた様子で私も嬉しいです。

正直、青森県民として矢野顕子をあまりにも低く評価していました。「元祖癒し系」ですね。青森を強く意識したMCも凄く良かったです。そうそう、プリンスファンで矢野顕子ファンの人って、結構いるような気がするんです。相通ずるものがあるんでしょうか...。

プリンスとあっこちゃんの共通点は、、、
宗教のことは置いておいて、、、(知った時は驚きだったけれど)

誰にも真似できない
強烈な個性の音楽&歌、そしてプロフェッショナルな音楽意識の高さ
ってとこでしょうか?

2人共心から尊敬するミュージシャンです!

宗教話は別として(笑)、確かに誰も真似のできないアーティストですね。

矢野顕子、今回のコンサートでホント見直しました。

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