2014年6月23日

僕のたけのこ、折れませんでした。 -第19回平川市たけのこマラソン

1158人が快走/たけのこマラソン 第19回平川市たけのこマラソン大会(大会実行委主催)が22日、同市の碇ケ関中学校グラウンドを発着点に行われた。県内外から参加した2~80歳の1158人のランナーが好天の下、森の香りを感じながら緑あふれる山間コースで健脚を競った。(2014年06月23日Web東奥)
昨年に引き続き、今年も行って参りました「たけのこマラソン」。 ハーフコースは標高差約200メートル、コースの総高低差は400メートルを越えるという「ドMマラソン」。 何のためにこんなところを走るのかねぇ...と思う方もいるかも知れませんが、そこに道があり、マラソンコースがあるから走っちゃうんですね。 ちなみに僕は、昨年初めて走ったこのコースで思い切り辛酸を舐めさせられることとなり、その悪い思い出を払拭するというか、昨年の自分に打ち勝つという意味からも、一つの大きな目標を立てていました。 それは、「絶対に歩かない」ということ。 昨年は、ほとんど平坦なところがない、山を上るか下るというこのコースで、3度足が止まったという苦い思い出があります。暑かった、コースを下見しなかった、GPS時計が壊れた...言い訳すれば次から次へと理由は出てきますが、とにかく僕は昨年このコースで自分の弱い意志に、完膚無きまでに打ち負かされました。結果、当時のベストタイムから10分以上も遅い1時間48分30秒でゴール。 もうですね...タイムじゃないんです。約21.1キロを走り続けたその過程が、どうしても納得できなかったのです。だから昨年の大会が終わった時に決めました。 「来年は、落とし物を拾いに行く。」 そして迎えた今回の大会。朝7時過ぎに会場に到着すると、既に弘前公園ランニングクラブのメンバー数名が会場近くの駐車場で、受付が始まるのを待っていました。 今回初めてこの大会に出場する人たちもいるということで、このコースがどれだけハードなのかを説いたつもりですが、やはり実際に走ってみなければその凄さは伝わらないんだろうな、と思いました。 それぞれが受付を済ませ、ハーフコースのスタート時間である9時30分がやってくるのを待ちます。 今回弘前公園ランニングクラブからは20名近くがドM...いや、果敢なる精鋭としてエントリー。それも、10キロコースよりハーフコースの方の参加者が多いという状況でした。 8時前にはまだ霧が残っていて、雲が空を覆っていたのですが、9時過ぎになると、霧も雲も晴れ、ジリジリと日差しが強くなってきました。 260622集合写真 (出発前。キャプテンは開会式の模様を見ていたため、写真のずっと奥にいました。) 何となくスタート地点に集まり、他のメンバーと談笑。緊張感はそれほどでもなく、特に気負いもありませんでした。 突然、何の前触れもなく前方の方から号砲が聞こえました。どうやらスタートしたらしいです。この大会、この緩さがたまりません。 さあ、いよいよプチハイキング、プチトレイルランがスタートしました。 前回は、時計を持っていなかったためにペース配分を完全に見誤り、前半で飛ばしすぎて後半完全に失速、そして程なくやってきたスタミナ切れで、歩く羽目になったということをハッキリと記憶しています。 ...初めて走った13年前のアップルマラソン(10キロ)、そして昨年のたけのこマラソン。 記憶を辿っても大会で歩いたのは、この2度だけ。 つまり、確かにハードなコースとはいえども完全なる「失敗レース」だったということが、僕の脳裏に深く刻まれていました。どのポイントで歩いたか、そのこともハッキリ覚えていました。 なので、その時の経験を大いに生かしながら、「今年は絶対に歩かない」と決めて大会に臨みました。 そして今回、大会の時に履いている底の薄いシューズではなく、少し厚めのシューズで臨むことにしました。 さて、スタートしてすぐに、緩やかな上り坂が始まります。1キロほど坂を上り続け、東北道の下をくぐって横断すると、一気に山の色が濃くなります。ダラダラと続く上り坂は、約3キロ過ぎまで続きます。 聞こえてくるのは、風に揺れて枝葉や木々がこすれ合う音、鳥のさえずり、そしてランナーの荒い呼吸。 最初は抑え気味に6分近いペースで走っていたつもりでしたが、実際は5分台前半で走っていたようです。後方からスタートしたため、多くのランナーを追い抜き、何人かのランナーに追い抜かれ。 やがて上りの頂点である3キロ過ぎから一気に1キロを下りますが、ここでもあまり無理はしません。同じピンク色のTシャツを着た他のメンバーを抜いたり抜かれたり。まだ余力があったので、お互いに色々声掛けしながらランを続けます。 この坂を下りきったところに、最初の給水ポイントが現れます。 プラスチックのコップに注がれた水を、一口二口。ここから更に折り返し地点の7キロ付近まで、ずーっと上り坂が続きます。 後半に脚を温存するため、ここでも無理はしません。やがて、5キロ付近で先を走っていた冨田キャプテンに追いつき、そこから12キロ過ぎまで、並走していました。もう一人、栃木県出身で転勤のため2年前から青森市にいるという方と3人で会話をしながら走り続けます。この大会のこと、弘前公園ランニングクラブのこと、走れメロスマラソンのこと、などなど...。 応援なのか熊除けなのかよくわからない大音量のスピーカーを過ぎた直後、トップランナーを先導するバイクの姿が見えました。数名のランナーが下り坂を飛ぶように駆け抜けて程なく、時々クラブの練習に参加しているSさん、次いでOさんの姿が。キャプテンと二人で、大声で声援を送ります。 ...ふと思いました。 大声を出したら、何か楽になったぞ。 いい意味で肩の力が抜けたといいますか、何といいますか。 やがて折り返し地点を過ぎると、7キロから12キロまでは、ひたすら下り坂となります。この間も、すれ違う他のメンバーとエールを交わしつつ、3人でずっと話をしながら走っていました。何かそれが凄く楽しくて、気持ちよくて。突然沿道に現れるお年寄り軍団の声援にも、気持ちよく応えることができました。 で、もう一つ確信。僕、声援にしっかり応えられているときは調子がいいです。 ...というか、それだけ周りを見る余裕がまだあったということなんです。後で確認したら、この下り坂はキロ4分10秒台で飛ばしていましたので、かなりペースは上がっていたはずだったんですが、そのことをあんまり感じなかったんです。しかも、この日のコースは昨年一度しか走ったことがありませんでしたが、何キロ付近で上り坂が現れるか、そしてその坂がどの程度のものなのかが、しっかり頭の中にインプットされていました。(それだけ昨年のレース内容が悔しかったんだと思います。) そして、まもなくやってくる最初の難関、12キロ過ぎの二つ目の上り坂に備えて、気合を入れました。 「もうすぐ右折すると、また上り坂がやってきますよ。それも結構エグい坂です。」 一緒に走っていた栃木県のランナーに伝えます。 前回はこの坂で、まるで根元から折られたたけのこのように完全に心が折れ、何度も歩く羽目になってしまったのですが、今回は「絶対に歩かない」と決めていたので、この坂のために脚を温存していた、といっても過言ではありませんでした。 程なく、並走していた3人がバラけ始め、いよいよ上り坂へ。ここで僕は、2人より少し前に出ました。さあ、自問自答を始めようか。 心の中で呟きながら、先というよりも、足下をしっかり見つめます。延々と続く上り坂を見て気持ちが萎えないようにするためです。やがて坂が緩やかになります。しかし、一見平地のように見えますが、緩く上り続けています。きつかった上り坂が終わったというだけでも、一瞬気が緩みそうになります。しかし、ここで気を緩めてはならない、と再度気を引き締めます。 ...そう、今日は絶対に歩かない。(結局今年は、最後までたけのこ...いや、気持ちが折れませんでした。) 再び下り坂。 行けそうだから、いってみるか…。 どうやらこの時は、キロ4分を切るか切らないかのスピードで走っていたようです。ただ、突っ込んでいるという感覚や、先を急ぐあまりに気負っているという意識はまるでなく、むしろ気持ちよい感覚になっていました。もしかしたら、ランナーズハイになっていたのかも知れません。 先方に赤いユニフォーム、背中には「絶倫魂」の文字を背負ったSさんの姿が見えてきました。 さっきまで快調に飛ばしていたのに、明らかにペースが落ちているようなので、声を掛けました。 苦悶の表情を浮かべながら、「脚、攣った...。」と。 一瞬スピードを緩め、持っていた塩飴を手渡します。ついでに、飲みかけだったけどOS-1のゼリーも手渡しました。ここまで来ると、僕にはどうやら必要ないみたいです。 そこから再びペースを上げ、緩い上りを越えると、このコースでは数少ない平坦な場所、川原沿いの道路に出てきました。 昨年は向かい風で泣きそうになったところ。今年は追い風が吹いていたようです。 後ろを誰が走っているのか、誰に追いかけられているのか、もはやその時の僕にとってはどうでもいいことで、振り返る気はありませんでした。とにかく、絶対に歩かない。そのことをずっとずっと意識していました。 日差しがジリジリと肩を焼いているのがわかりましたが、それすらも気持ちいいと感じるようになっていました。 とはいえこの先には、昨年歩く羽目になったもう一つの上り坂と集落が待ち受けているので、ここでもペースは抑え気味にして走ります(4分30秒から4分40秒で走っていたようです)。 17キロを過ぎ、18キロ手前で左折。左折を示す看板には「ゴール」という文字が書かれていますが、実際ゴールはもう一山越えないと現れないんですよね。 腕時計は巻いていましたが、実際目にしたのは5度ほどでしょうか。上り坂に入っているときのペースと、下り坂を飛ばしているときのペース。 とにかく「絶対に歩かない」ことしか考えていなかったので、経過時間は全く意識していませんでした。 でも、昨年は息が上がって顔をあげることすらできなかったその場所で、声援にしっかり応えていました。 昨年は長くて長くて仕方がなかったこのコースが、とても短く感じられました。とりわけ二つ目の上りを越えてからが、あっという間のような感覚でした。 集落の中間で、ちょうど10キロを走る 方々とも合流しましたが、何も考えずただひたすら脚を運んでいました。ちょっときついな、と感じた最後の坂道を上り終えると、後は下りしかありません。 残り約2キロ。眼下に視界が広がり、ゴールの中学校のグラウンドが見えます。ここまで来ればもう大丈夫。これで歩くことなくゴールすることを確信しました。下り坂なので、当然ペースが上がっていきます。 この辺りで、先日の100キロマラソンを驚異的なタイムで完走したMさんに声を掛けられます。気持ちよくゴールしたいと思い、更にペースを上げます。坂を下りきった先には、ゴールしかありません。右折すると、Nさんに続き、先着していたOさんが声援を送ってくれます。更にその先、中学校の敷地内に入ると、更に大勢の人が声援を送っています。その中には、Bさんとわざわざ自転車で弘前からやってきたSさんの姿が。声援に応えながら、中学校のグラウンドへ入ると、今度は100キロマラソン完走者のNさんの姿が。 特にこの間の「走れメロスマラソン」では、体調が思わしくなかったこともあって声援に満足に応えることもできなかったのですが、今日は声援が嬉しくて仕方がありませんでした。 「前の人抜ける!もっと行ける!」 ...うん、今日は確かに行けそうです。 260622ゴール手前 (ゴール手前。なぜか笑ってるんですよね...ヘラヘラと。やっぱりランナーズハイだったのかも。) そこから更に加速して、最後は青森市の「焼き鳥えん」チームの方々の声援にも応えながら、手を挙げてゴール! ゴールしてすぐに止めた腕時計を見ると、1時間40分40秒で止まっていました。 一度も歩かなかったとはいえ、前回より8分近くタイムを縮めたことに、正直自分でも驚きました。タイムは気にしない、とは言いながら、公式タイムは1時間40分38秒。1年越しでこの山に認めてもらえたような気がして、凄く嬉しかったです。 しかし今回に限っていえば、心身の調子、気象条件、そして急遽着替えたタンクトップスタイルのウェアに底が厚めのシューズと、全てがうまくはまったようです。 こんなタイムで会心のレース運び、というのはおこがましいのかも知れませんが、走り終わった後で、久しぶりに気持ちいいと思いました。 どうやら普段一緒に練習をしているメンバー(途中でこちらが声援を送り、入賞した二人は除きます)の中では、最初にゴールしたらしく、晴れてドMの称号を頂きました。 昨年の「落とし物」、つまりコテンパンにへし折られた心は、二つ目の上り坂で見つかり、無事に取り返しました。 「絶対に歩かない」という当初の目的も果たしました。 正直、ラスト4キロで心折れそうになったのも事実ですが、今回は最後まで自分に負けませんでした。 欲を言えばキリがないのかも知れませんが、来年は100分切りを目指してみようかな。 ...なーんて、既に来年のことを考えている時点で、すっかりあのコースに魅了されたようです。 走り終えた後に食した今年のたけのこ汁は、ホントにうまかったです! ありがとうございました! 260622takenoko

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