2010年4月30日

村上春樹 『1Q84 BOOK3』を読了

今年もどうやらベストセラーは既に決まったようなものですが、一部ではハリー・ポッター並に盛り上がった村上春樹の『1Q84 BOOK3』を読み終えました。これから手にしようと考えている方、まだ読み終えていない方もいると思いますが、今日は僕なりの読書感想文を披露したいと思います。

当然ストーリーの核心に迫る部分も明らかになりますので、まだ読んでいない方、現在進行形の方は、この先ご覧にならないことをお勧めします。
あ、そうそう。この書籍に関しては、いきなりBOOK3からではなく、やはりBOOK1とBOOK2を読み終えてからBOOK3を読み始めることを、強くお勧めします。


では、以下短い読書感想文です。

「二つの月とともに隠されてしまった結末」

BOOK2の何とも歯切れの悪い終わり方から、続編となるBOOK3の発売を今か今かと心待ちにしていた『1Q84』。結論から言うと、予想通りの結論というか、大方の期待を裏切らない結末を迎えた、といってもいいだろう。
登場してくる人物の紐付けが徐々に明らかになっていくうちに、天吾と青豆が出会い、そして結ばれるという結末は、この本が発売される前から予想していた通りだった。

ただ、いくつか解消されぬまま二つの月とともに隠されてしまった結末もある。
例えば...
・結局タルマと「さきがけ」の関係者とは、どういう話し合いがついたのか。
・牛河の口から現れたリトルピープルが再び作り始めた「空気さなぎ」は、何を意図するのか。
・戎野先生やふかえりは、その後どうなったのか。
・天吾と青豆は一体どこに向かうのか。天吾と青豆がたどり着いたのは、「現実の世界」だったのか。

この他にも、解消されぬまま幕引きされたいくつかの要素がある。ただ、あくまでこの作品での主役は天吾と青豆であり、おそらく彼らと多少なりの関係を持っていた人や組織がどうなったかなどということについては、敢えて触れずに謎かけにしておこう、という意図なのだろうか。
一つ明らかなのは、一見何の接点もないような出来事が、実は複雑にリンクしていたということだ。例えば、ふかえりの潜む天吾のアパートや青豆、牛河の部屋を訪れたNHKの集金が、天吾の父ではないという説明はつかないし、話の流れからすればそう考えるのが筋であろう。
小松の軟禁された部屋、三軒茶屋の高速道で天吾と青豆を拾ってくれたタクシー、これらも青豆が見た夢とリンクしていく。

長編という点では「海辺のカフカ」以来の村上作品ではあったが、カフカ同様、2つ(若しくは3つ)の全く異なるストーリーが、徐々に螺旋が絡まり一つの太い軸となっていく過程は、書籍をめくるこちらの手が止まらなくなるほどスリリングであった。

ただ、おそらく万人が納得するような結末をこの作品に求めるのは酷なんだろうと思う。仮にそれを求めるならば、おそらく螺旋の数はとんでもなく広がっていくことだろう。編集者の小松や、天吾の父が最期を迎えた診療所の看護婦まで対象を広げなければならない。

そういう意味では、まさかBOOK4、なんてことは考えられないにせよ、これらの疑問を一つ一つ解消していくために、映画で流行りのスピンオフ、なんてことになると、それはそれでまた違った視点から面白い作品が出てきそうな気がする。というか僕としては、内心そうなることに期待を寄せている。

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