2010年6月 3日

津軽の一代様

先日、妻との会話の中で「津軽の一代様」の話が出てきた。妻によるとこの「津軽の一代様」、津軽とは言いながら実は弘前市や中津軽郡、南津軽郡の一部など、ごく限られた地域での、独特な民俗風習だということがわかった。

「一代様」というのは、自分の生まれた年の干支によって、それぞれを氏神として祀る寺院への信仰で、年が明けると、それぞれの干支を祀る寺院に参拝に出向くという風習が今でも根強く残っている。もちろん年始だけではなく、厄払いや結婚、出産といった人生の節目をはじめ、機会がある毎に一代様への参拝に訪れる人もいるようで、自分の干支が何であるかを告げると、「じゃ一代様は○○だな。」という年配の方もいる。それぐらい地域に根ざした風習なのだ。

恐らく他の地域で言うところの「守り本尊」の考え方に極めて近い風習だと思うのだが、僕の住む弘前では、「守り本尊」という言い方をせず、あくまで「一代様」と言うのが実態だ。そして決定的な違いは、決められた(祀られた)寺院のみを「一代様」だということだ(そしてそれはほとんどの場合、いわゆる菩提寺とは異なる)。

歴史を遡ると藩政時代からこの風習が始まったらしいが、今でも一代様のお守りや干支にまつわる何かを身につけるということが、ごく当たり前のように行われている。また、干支によっては同じ寺院だったり、複数の寺院がある一代様もある。

ちなみにそれぞれの一代様は次のとおり。

:千手観音菩薩(目屋の清水観音)
弘前市桜庭清水流104「多賀神社」

丑寅:虚空蔵菩薩(百沢の虚空蔵様)
弘前市百沢寺沢29「求聞寺」

:文珠菩薩(最勝院の文殊様)
弘前市銅屋町63「金剛山最勝院」
文珠菩薩(茂森の天満宮)
弘前市西茂森1-1-25「天満宮」

辰巳:普賢菩薩(愛宕様(将軍地蔵))
弘前市植田山下63「橋雲寺」

:勢至菩薩(袋の観音堂)
黒石市袋字富岡「白山姫神社」

未申:大日如来(大鰐の大日様)
大鰐町蔵館村岡12「大円寺」

:不動明王(古懸の御不動様)
平川市碇ヶ関古懸門前1-1「国上寺」

戌亥:八幡大菩薩(弘前の八幡様)
弘前市八幡町1-1-1「弘前八幡宮」

僕の干支は亥なので、一代様は「弘前八幡宮」。妻も同じ一代様(ちなみに妻の干支は戌)なので、年始には必ず参拝に向かうことにしている(余談ではあるが亡父も同じ一代様だった)。

中には公共交通の利便が悪い場所にある一代様もあるため、こちらを訪れた際には是非どうぞ、といえないのが辛いところではあるが、こういった民俗風習に興味のある方は、ご参考までに。

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