2010年9月20日

敬老の日

今日は敬老の日でしたが、昨日は久しぶりに祖母の顔を見に北秋田まで行ってきました。

僕は祖父母と同居したことのない、いわば外孫です。しかし、父方の祖父母、母の祖父は既に亡くなっており、北秋田にいる祖母は、僕にとって唯一の祖母ということになります。
病気らしい病気もしていなかった祖母でしたが、2年前に腸閉塞を起こしてしまいました。手術ということも考えましたが、既に90歳を超えていたということもあり、手術に踏み切ることができず、結局そのまま投薬治療をすることに。
我が家にとっては父が亡くなった直後ということもあり、母の憔悴した姿は見るのも耐えられませんでしたし、家族はもちろん親族もそれ相応の覚悟をしました。

しかし、奇跡と言いましょうか自らの生命力と言いましょうか、祖母は退院、その後もデイサービスと自宅の行き来を続けていました。ただ、寄る年波には勝てず、かなり痴呆っぽい症状も垣間見えるようになりました。一番酷かったのが、食に対する飽くなき欲。ついさっきご飯を食べたはずなのに、真顔で「今朝から何も食べていない」と言ってみたり、食卓の上にある物に無造作に手を伸ばしてみたり...。

まぁ、欲があるだけまだいいだろうと思っていましたが、さすがに同居する家族の負担は相当だったようです。我々は多く口を挟むことはせず、同居する家族に祖母の処遇を任せていたところ、特別養護老人ホームに空きができたということで、入居することが決まりました。

母と妹は一度施設を訪問し、祖母と面会してきています。その際祖母は、「よく来てくれた...」と涙を流して喜んでくれたそうです。今回、敬老の日の前日ではありましたが、母の希望もあり、母と妻とともに祖母の顔を見に行くことにしました。

祖母のいる施設がある場所は、秋田県北秋田市阿仁。マタギの地としても知られる山間の地域です。
弘前から車で約2時間超、途中寄り道をしながら施設に到着したのは昼過ぎでした。

施設の受付に聞くと、祖母はちょうどお昼ご飯を済ませたところだとのこと。
施設の中に進むと、ホールには約30名のお年寄りが食事を取っていました。
その中で、車椅子にちょこんと座りながらも、幾分背筋を伸ばした祖母は容易に見つけることができました。
ただ、以前よりもさらに一回り小さくなったような感じでした。

「あれぇ、お前たち、来てくれたのか...。」
涙をこぼしながら喜ぶ祖母。
「祖母ちゃん、俺のことわかる?」
「ええと、お前は××の...」
「祖母ちゃん、違うよ。俺だよ(苦笑)。」

こんな感じのやりとりから始まった祖母との対面。どうやら祖母は、僕と妻の顔を忘れてしまったようです(涙)。

「婆ちゃん、ご飯食ったの?」
「いやぁ...朝から何にも食ってないんだよ。順番に食ってるんだけど、まだ順番来ない...。」
相変わらず食への欲は衰えていないようです。

「婆ちゃん、羊羹持ってきた。食べる?」
「うん。」
スプーンと皿を施設からお借りして、小さく切り分けた羊羹を一口たどたどしくパクリ。
母が「婆ちゃん、スプーン持てるでしょ。」というと、自分でスプーンを持ち、羊羹を食べる祖母。

「いやぁ...これ美味しいな。何か羊羹みたいな味だ...。」

祖母なりの一流のギャグでしょうか?思わず苦笑いするしかありませんでした。

いろいろ話しかけてみると、耳だけはちゃんと聞こえるようで、すぐに反応が返ってきます。
時間にして1時間も滞在していませんでしたが、最後の気遣いだけはまだ忘れていないようです。
「じゃあ婆ちゃん、帰るよ。またね。」
「うん。気をつけて。」
「婆ちゃんも元気でね。また来るから。」
「うん。うん。」

涙の一つでも流しているのかと思ったら、祖母は「のど自慢」が気になり始めていたようです。あはは...。

祖母が奇跡的に回復し、歩けるようになることなど望んでいません。でも、5年でも10年でも長生きして欲しい。また訪問するきっかけをいつまでも。

そう願いながら施設を後にしました。

婆ちゃんと僕と

婆ちゃん、いつまでも元気でな。

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