2010年12月10日

開業から1週間

東北新幹線全線開業から1週間を迎えた。青森県民にとって40年来の悲願がようやく実現したということで、12月4日はいろんなメディアでこの開業の模様が取り上げられたが、その一方で、強風の影響により一部区間で運転見合わせとなり、ダイヤに大幅な乱れが生じるなど、順風満帆とは言えない船出、いや出発進行となった。
とりわけ東京からの始発が到着する時間帯は、地元各局が報道特別番組として、上空にヘリまで飛ばして新青森駅に到着する模様を中継していたが、その一方で、東京に向かう上りの新幹線には空席が目立っていたのも事実だった。実際、八戸-新青森間の乗車率が、開業から6日までの3日間で平均25.7%にとどまっていたという事実が明らかになり、また、新青森駅周辺で未だ進まぬ開発とも相まって、開業日の狂騒は一体何だったんだ?というぐらいにネガティヴな記事も目立つようになった。

ご存じのとおり僕は在来線である奥羽本線の弘前-青森間を通勤に利用している。新幹線の開業に伴い、在来線のダイヤもガラリと変わり、以前述べたように通勤者の身分としては「改正」ではなく「改悪」と言いたくなるようなダイヤ編成となった。

朝は5分早くなり、夜は20分遅くなり、家での滞在時間が減ったというわけだ(笑)。

そんな中、この1週間で気づいたことを僕なりに記してみようと思う。ただし、僕の目線もかなりネガティヴかも知れない。

1 青森駅が閑散としている。
 ダイヤが変わったのは奥羽本線だけではない。東北新幹線に接続する北海道方面への津軽海峡線、そして、東北新幹線開業とともに東北本線としての幕を閉じ、新たに開業した青い森鉄道も然りだ。
 しかし、八戸方面からの特急列車が到着するたびに列車から降りる客でごった返していたホームのあの光景は皆無となった。特に朝の通勤通学の時間帯は、東北本線、奥羽本線、津軽線の三路線から青森駅に到着する電車の時間帯が非常に近接していたために、改札と各ホームを繋ぐ連絡橋の往来も大変なぐらい人でごった返していたのが、その光景も見ることが無くなった。新青森駅からバスなどを利用している人も多いと思われ、乗降客の数はかなり減ったような気がする。

2 一方の新青森駅は...
 東北新幹線の終点でもあり、在来線の乗換駅でもある新青森駅は、一面しかなかった奥羽線のホームが対面式となり、開業と同時にエスカレーター、エレベーターが稼働するようになった。昔のあの駅からは考えられないぐらいの変貌振りだ。近くに青森西高があり、以前はその生徒ばかりが乗降していたこの駅も、今はスーツケースや大きな鞄を抱えたビジネスマンや観光客が乗り込むようになった。とりわけ20時47分新青森駅発の電車は、かなりの乗客が乗り込んでくるが、朝7時51分に新青森駅を出発する青森行きの快速は、ほとんど下車する人がなく、地元民しか乗り込んで来ないような気がする。せっかくなので今度時間があったら、定期券で途中下車してみて新青森駅を探索してみようかと思う。

3 新青森駅周辺は、どうだ?
 商圏が分散する(というよりも、現状の中心市街地が衰退する)ことを恐れ、新青森駅周辺での大規模開発を認めていない青森市。新青森駅の裏は確かに更地が目に付き、とても終着駅周辺とは言えないぐらい閑散としている。いや、逆に考えると、「さすが青森、寂れているねぇ!」と思わせる作戦か?
いずれにせよ規制緩和の暁には、まず間違いなくピンク色の看板のショッピングセンターが立地を表明することだろう。七戸十和田駅で既にこの開発が始まっていることを考慮すれば、当面の間方針転換する必要はないと思う。ただ、強いて言えば、少しぐらい飲食店があってもいいのかな、と。客待ちのタクシー乗務員も近隣に飲食店がなければ、辛いのでは?個人的には煮干しラーメンの店舗が数店舗軒を連ねるようなモールを希望します(笑)。

4 奥羽本線への影響
 弘前-青森間はその大半が単線区間である上に、全ての新幹線に接続列車を走らせている。しかも、貨物列車も頻繁に走る区間であるため、更に過密ダイヤとなった。
 このことも影響してなのか、ほとんどの電車が途中駅で列車交換の待ち合わせを行うこととなった。と同時に、弘前-青森間では2~5分の遅延が当たり前となりつつある。2~5分ぐらいでグダグダ言うつもりはないが、ダイヤの設定そのものに無理があるのではないか、と勝手に懸念しているのだが...。やはり部分的でもいいので複線化を進めるべきと僕は考える。

5 青い森鉄道は、どうなる?
 (あながち並行ではない)並行在来線の経営分離に伴い、同時全線開業した「青い森鉄道」。通学客にとっては便利な時間帯になったと歓迎の声があがる一方、運行料金も値上げとなったため、八戸-青森間は東北新幹線を利用する人が多いと思われる。既に開業前から赤字経営が見込まれており、こちらは前途多難となりそうだ。第三セクターという「民間会社」だということもあってだろうか、県が積極的に利用向上を訴えている気配もなく、静か過ぎるスタートとなってしまった。しかし、これまでの経営分離によって第三セクターが各地で苦戦している「先例」を見ても、先手を打つことが非常に大事だと思うのは、僕だけだろうか。

6 というかホントに開業効果って、あるの?
 青森と弘前の往復の中で、ああ、開業効果だなぁと感じたのは一度だけ。始発の青森駅で空席だった普通列車の座席が、新青森駅に到着した途端満席になったとき。東北新幹線が新青森駅に到着後、二次交通として在来線を利用している人がそれほど多くないということなのだろうか、それとも単に僕が乗車する時間帯の利用者が少ないということなのだろうか、いずれにせよ、乗客の数だけでは判断できないが、開業効果を実感するまでには至っていない。

ということで、喉元過ぎれば熱さを忘れる、というわけではないのだろうが、開業前の騒ぎはどこへやら、見たところいつもと変わらぬ光景、いやむしろいつもより寂しさを覚える光景を目の当たりにしていて、誰かが言っていたように「新幹線開業は一部の人たちの空騒ぎ」というのが、あながちウソではなかったのかとも思えてくる。

結局のところ、自分で新青森駅から東北新幹線を利用して初めて、開業効果を目の当たりにするのだと思う。しかし、当面の間利用する機会は訪れそうにないような感じ。嗚呼。

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